2011.09.13 (Tue)

先のエントリで御紹介しましたが昨日は大阪国際会議場でタイトルの通りのセミナーが開催されまして、その中で20分程のお話をさせて頂きました。会場はこんな感じでした。

以前にもこの国際会議場で別件でお話をさせて頂いた事があったり、聴講者として参加すべく足を運んだ事も度々あったりするのですが、いつ来ても雰囲気は良いですね。何より天井が高いってのがポイント大きいのかも。んで、電光掲示板には案内も。

さて、僕は「ビジネスにおけるiOSとの付き合い方」と題しまして、iOSデバイスを業務利用する際にアプリをどう捉えるのか?そもそも作るべきなのか?作るならどういう選択肢があるのか?という切り口でお話させて頂きました。

  1. 作らない。既製品を使う
  2. Webアプリとして開発
  3. Nativeアプリを開発
  4. Titanium等のMultiPlatformなFrameworkを使った開発

ってのが最近の僕のオススメなので1つ1つ御紹介。特に安易に(3)を選ばないで下さいと強調しました。まぁアプリ開発で飯を食わせて頂いている会社が言う事ではありませんけどね(苦笑) でも真実なので伝えました。

業務システムをNativeアプリで展開するとなると、ほぼ1年毎に更新されるiOS、古いデバイスの調達のし難さ、古いOSへのダウングレードが実質不可…等々、デバイスとOSの進化に追随する覚悟が無いと結構大変です。

従来の業務システムのように「ウチのシステムはXPでしか動かないのでダウングレードしなくちゃ」って発想がそもそも有り得ません。

iPhone4 + iOS4 前提にシステムを作っても、iPhone5 が出た後は、iPhone4 は中古市場からじゃないとほぼ調達出来ませんし、iOS4 を iPhone5 で使う事も出来ない訳です。何年も使い続ける必要がある業務システムでは、ここが超重要。案外見落とされがちなんですよね。

従来は進化に追随しない事が「安定」をもたらしていましたが、iOSでは追随しない事は逆にリスクとコスト高でしかないということ。これを踏まえてNativeアプリを本当に作るべきか判断し、MUSTで無いなら他の選択肢を取る…のが、ビジネスにおけるiOSとの巧い付き合い方だという事です。

なので、基本、運用/維持費が実質ゼロになる既存アプリ(UPDATEは無償)を購入して使うか、デバイスやバージョンに追随するリスクに対応してくれている業務用のパッケージやクラウドサービス等を使う方が絶対に「楽」だし中長期的には「得」だったりします。

という文脈で、SYNCNELBook+の紹介もさせて頂きました :-)社内でドキュメント共有が必要ならSYNCNEL、PDFを大量に閲覧する必要があるならBook+をどうぞ的な感じで。

 

今回のセミナーで特に印象深かったのは、シーリスの有山さんの「ビジネスにおけるAndroidとの付き合い方」という講演で、事前の打合せがほぼ無かったにも関わらず、全く同じ内容であったという事です。

AndroidでもOSやデバイスを固定するって不可能なんですよね。覚悟がいりますよっていう意味ではiOSと一緒。これはOSどうこうではなく、スマートデバイスのビジネス利活用を考えるなら共通して言える事なのかも知れません。

その他、最初の基調講演、ソフトバンクモバイルの中山氏による事例紹介も興味深かったですし、色々と僕自身も勉強になったセミナーでした。9月はもう登壇する機会は無かった筈ですが10月以降もまたお話させて頂く事もあるかと思います。今後共よろしくお願いします。


2011.09.12 (Mon)

沢山の方にご利用頂いている天気予報アプリ「そら案内 for iOS」が久しぶりにアップデートしました。共同企画・開発という事でご一緒させて頂いている日本気象協会様からはプレスリリースも出ていますので宜しければこちらもご覧下さい。

今回の新バージョン v1.2 では以下の2点が改善/機能追加されました。

  • 起動速度の改善
  • 生物季節情報の追加

以下に、それぞれご説明させて頂きます。

 

■ 起動速度の改善

待望の…という感じですね。かねてより「起動速度をもっと早くして下さい」というお声が多く頂いていましたので起動処理の見直しを図りました。地域の登録数が多ければ多い程に体感頂けると思いますが、結構早く起動するようになったのではないかと思います。是非お試し下さい。

 

■ 生物季節情報の追加

日本気象協会さんが運営されるている天気予報サイト tenki.jp に以下のようなヘッドラインが流れているのをご存知でしょうか。数十種類の生物/植物について地域ごとに初観測した日を前年度比と共にアナウンスしているものです。

さくらの開花がどこそこで昨年より何日早く観測された…ってな事はよく見聞きすると思うのですが、それが数十種類に広がったモノと考えて頂ければ良いかと。生物季節情報というのですが、この表示に対応しました。

自分の登録している地域で何か新しい生物/植物の初観測が報告された時は以下の画像のようにアイコンが付きます。

このアイコンが「今日は新しい生物/植物が観測されましたよ」って意味ですね。新着植物!みたいな。これをタップすると以下の画像のように詳細画面に遷移します。過去分も一緒に出てきますよ。

青色太文字で表示されている生物/植物名(上図ではすすきとかさるすべりとか)をタップすると

ウィキペディアで詳細な情報を知る事が出来ます。アイコンは初観測された「その日」にしか出てきませんが、万が一見逃した場合でもメニュー画面から過去の生物季節情報を閲覧できるようにもしていますのでご安心下さい。

ちなみにここまで御紹介した画面は全てiPhoneの画像ですが、もちろんiPadでも表示されます。ウィキペディアの表示はやはりiPadの方が閲覧し易いですね。

という訳で、そら案内 for iOS のアップデートのお知らせでした。

季語の多くは生物や植物である事が示すように、それらの初見は去りゆく季節や新たな季節の訪れを意味する事が多いです。普段のお天気情報と共に、そんな季節の変わり目をウィキペディア連携も活用して頂きながら楽しんで頂ければと思います。


2011.09.11 (Sun)

昨日のエントリに絡ませている訳ではありませんが、久しぶりに映画の感想。土曜日の午後(唯一のオフタイム)に奥さんと自宅で見ましたのでその記録。AppleTVでのレンタルで500円。便利な時代になりましたね。

ナタリー・ポートマン演ずるバレリーナの物語。演じる事に執着する余り幻想に囚われる役を演ずるという迫真の演技に見入ってしまうこと約100分、「怖い」と思わされたシーンは多々有りましたがかなり楽しめる作品だったと思います。

巷のレビューでは賛否ありますが、個人的にはホラーとまではいかないレベル。良し悪しは別として妄想って普通にする事ですよね(普通やらない?)。それが現実での行動に悪い方向で現れてしまうとまずいですが、何はともあれ人生をかけて一つの事に取り組む姿は「美しい」と思いました。

人生かけてると良い所ばかりじゃなくて、見えない所で多数の苦悩や痛みがあるモノです。それを極端なまでにえげつなく表現した作品だったかなと。また、例え自分の身を傷つけるのだとしても自分を越える為に吹っ切れる事も必要というメッセージも織り込まれていた気がします。

深かった。

家族で見る映画では少なくとも無いと思いますが個人的には良かったです。★4つ。


2011.09.11 (Sun)

久しぶりに書籍のレビューを書いてみようと思います。言わずと知れた橘玲氏の新刊です。

こんなに従来の価値観をバッサバッサと全否定で切り捨てていく本を僕は知りません。

ある人にとっては目を背けたくなる真実の羅列に過ぎない書籍と言えますが、不可逆な歴史的変化を立て続けに経験している日本社会での人生設計再考を説いた貴重な本であり、ロジカルで且つ納得のいく分かり易い設計再考の指標本と言えるでしょう。

数十年前に日本を覆っていた定説、そして今もまだそれが当たり前だと思われている4つの神話が、もはや崩れ去りつつある事を否定しようの無い論理で教えてくれます。4つとは以下。

  • 不動産神話
  • 会社神話
  • 円神話
  • 国家神話

これらが1997年のある出来事から日本社会の潜在的なリスクと化したことを述べ、2011年の大震災を機会に今改めて問うべき事としています。著者は著名なタレブによる著書を引き合いにだし、1997年と2011年が二羽の「ブラック・スワン」(起こる筈の無い事が起きる事)であり、「ブラック・スワン」を目にしながらまだ人生の設計図を高度成長期の幻想で描き続けるのですか?と読者に警鐘を鳴らしています。

(p.133)

リスクを回避し、安定した人生を送るために、私たちは偏差値の高い大学に入って大きな会社に就職することを目指し(会社神話)、住宅ローンを組んでマイホームを買い(不動産神話)、株や外貨には手を出さずひたすら円を貯め込み(円神話)、老後の生活は国に頼る(国家神話)ことを選んできたのです。

しかし皮肉なことに、こうしたリスクを避ける選択がすべて、いまではリスクを極大化することになってしまいました。

括弧内は本ブログで補記

ある程度のファイナンスの知識が無いと読み切れないのですが、従来型の人生設計がBS(貸借対照表)で図示された途端に、如何にもろい設計かが分かって恐ろしくもあります。

あ、これ破綻する、みたいな。

その危機を逃れる術は、神話を疑い不可逆性の高い決断をしない事、そして「個」として自立する事しか無いと説きます。「自分」以外の拠り所とするモノがある時点で Game Over と言われている気もする程に強烈な論調で、心当たりのある僕は相当にグサリと来ました。

賃貸住まいでベンチャー経営なので2つの神話からは逃れられていますが、円神話・国家神話にはまだ囚われている事を改めて自覚し、自分や身内を日本円や日本国から如何にして切り離していこうか…と、意識して考えなくちゃいけないなと感じた次第です。

Black Swan © 2011 antinee, Flickr

3.11の二羽目のブラック・スワンをきっかけに日本が変われなければ崩壊するしかないと、著者は微かな光明を匂わせつつ本書を終えていますが、読んだ感想では崩壊以外に考えられないとしか考えてないでしょ?とツッコミを入れたくなります。崩壊しか無いという意味では僕自身激しく同意ではありつつも、目下は次の1ヶ月,1年,3年をどう生き抜くかに必死にならざるを得ない自分のラットレースぶりに凹みもしました。

これが悲しい現実。

でも、世界は180度変わったのだという体系だった論拠を手に出来た事は大きな収穫です。そして成すべき事に向けた計画も早速作り始めました。漫然とした不安が拭えない方や、厳しい現実を知りたい方に超オススメです。無論、★5つ。


2011.09.09 (Fri)

少し前のニュース、出版社からスキャン代行業者への質問状を全文公開、潮目は変わるか を受けて、

のように言及されているサイトもあったりで、ネット界隈がにわかに盛り上がっています。僕も概ね賛成。結局、ユーザ本位な発想は出版社さんや著者さんには余り無くて、とりあえず抑圧しようという意図しか感じられないのが残念な所です。eBook User では、

「こうした争いばかりで出版社からはユーザーが望む形の電子書籍が出ないではないか」と考えるユーザーの不満が何らかの形で爆発する可能性もある。

と書かれていますが、ホントにそうなりかねず、皆が不幸せになる結末しかないんじゃないかなと思えてきました。という訳で(?)、こんな未来が来たらどうするんだろう…というちょっとしたフィクションな文章を書いてみました。2回に分けてエントリしてみたいと思います。

 

時は2015年4月1日。

出版社の態度に嫌気がさしたある人物が収益性を無視して新サービスを立ち上げた未来。そのサービスが目指す将来像を、ある記者が取材して記事にした…的な感じです。

 

読書好きの為の裁断済み書籍交換サイト『裁断本の森』が正式オープン

読書の未来を追求する事業を営む株式会社読書未来(大阪府大阪市)は、新たなソーシャルサイト「裁断本の森」を本日2015年4月1日より正式オープンした。キャッチコピーとして「あなたの読みたい本は他の誰かが裁断してる」を掲げる同サイトは、βオープンしていた2014年4月1日から約1年でユーザは10万人を越えたという。

「裁断本の森」は「自炊」の為に裁断した書籍/雑誌の情報を各ユーザがサイト内で共有し、自分の欲しい書籍/雑誌が見付かれば「ゆうメール」の着払い料金だけで入手できるのが特徴のサイトだ。運営会社の読書未来は在庫を一切持たない。ゆえに「裁断本の森」は、誰がどの裁断済み書籍を所有しているかの情報をマッチングする場として機能する。

 

「裁断した本って扱いに困るんですよね、オークションで売るのって大変じゃないですか。じゃぁ捨てるか譲るかしかなくて。それなら、同じように思ってる人をマッチングさせたら良いんじゃないかって思ったんです。別にお金いらないから有効に使って下さい的な。」

同社代表の大阪太郎氏(仮)が描くビジョンは、本当にそれで良いのか?と感じる世界だった。

「やっぱり紙の本じゃない方が嬉しいんです。PDFやjpegで読みたいって思ってる人は沢山いて、ほら、僕なんて買った本の最初の1ページ目をめくるのは、PDF化されてiPadに入ってからだったりするぐらいなんですよ(笑)

そもそも紙のページはめくりません。即スキャン。んで、どうせスキャンするなら手にした時から書籍も雑誌も裁断されていた方が便利だし、多分、同じように思ってる人は沢山いる筈なんです。じゃぁそういう人に譲っちゃえば良いかなと。」

至って合理的なその発想は、「裁断本の森」における裁断済み書籍のやりとりにも表れている。

jis05 © 2010 Ryuichi IKEDA, Flickr

まず、ユーザは自分の裁断済み書籍を「裁断本の森」に登録する。ISBNを入力しても良いし、専用のiPhoneアプリでバーコードをスキャンしても良い。冊数がカウントされ、そのままポイントになる。

次に、自分が欲しい本を、キーワードやISBNを使って検索して登録する。Amazonの欲しいものリストから引っ張ってくる事も可能だ。あるいは、本屋で欲しい本を見つけたらiPhoneアプリでバーコードスキャンして登録する事も出来る。

ここで重要なのが、1冊登録する度に1ポイントを消費するということ(よって最初は自分が登録した書籍の冊数しか欲しい書籍を登録できない)。そして、自分が欲している書籍の裁断本を誰かが登録すると、サーバからPush通知が届く(メールにする事も可能とのこと)。

「あなたの欲しい裁断本がエントリされました。譲り受けますか?」

ここで「ハイ」を押せば手続き完了だ。後は、裁断本の保有者に自分の住所が通知され、保有者が後日「ゆうメール」の着払いで投函してくれる。郵送費は概ね300円〜400円ぐらいで収まるという。薄手の雑誌であれば300円を下回ることもあるとか。

届いた書籍はスキャンしてPDF化。「裁断本の森」のユーザはPDF化して読む事を前提としているので、線を引いたり角を折ったりしていない。ほぼ新品のスキャンPDFが300円程度(と少しの手間)で手に入ってしまうのだから驚くほかない。

そして、またすぐに「裁断本の森」に裁断済みの本として登録される。そしてポイントが増える。欲しい本がまた1冊登録できる。そして、通知が来るのだ。また「ハイ」を押して、着払い便に300円払うだけで新しい本が手に入る。そしてまた…。

jis12 © 2010 Ryuichi IKEDA, Flickr

裁断本の保有者が「ゆうメール」で投函する手間を惜しまないのか聞いてみたが否定された。

「受け取り手が新たに裁断済みの本を登録した時に、それを送った人にもポイントが付くんですよ。その結果、自分もまた新たに1冊の欲しい裁断本を300円でゲット出来るんようになるんです。だから、惜しみませんよ」

追加で本を欲しいから、送る手間も登録する手間も惜しまない。読書好きのネットワークだからこそ成り立つ構図が「裁断本の森」には出来あがっていた。

こうして、裁断された本は「裁断本の森」のユーザからユーザの手へと渡り、スキャンされるだけスキャンされて、無数のPDF複製が大量生産されていく。「裁断本の森」は、不要になった裁断本を登録するだけで新しい裁断本を手に入れられるという新しい書籍流通網だ。

これを取り締まる法が無い事に、筆者は複雑な心境を覚えた。

著作権法は第三十条で私的使用の複製を認めている。複製したPDFを配信すれば明らかにクロだが、「裁断本の森」の仕組みは裁断された書籍を譲っているに過ぎない。物理的なものだから不特定多数にはならず著作権法が言う「公衆送信」にはならないし、複製物を譲渡する訳ではないから「頒布」にもならない上に、実際読む為に譲ってもらったモノを私的に複製するだけだから違法ではない。知人に譲ってもらった書籍を裁断しPDF化する事を咎める事が出来ないのと同じだ。

また、Winny裁判で問題になった「著作権法違反幇助」にもならないだろう。確かに「複製」という行為を促進する仕組みではあるが、動いているものは(裁断されてはいるが)書籍そのものであり、その複製は私的使用の為で、ましてや不正に入手したものでもないので、著作権違反を促している訳ではない。

加えて、個人間の「譲り合い」に過ぎないので運営側は古物商の免許も必要ない。読書未来が個人から買い受ける場合は免許が必要になるが、「裁断本の森」はそもそも在庫を持っておらず、情報交換の場を提供しているに過ぎない。

 

(つづく : 未来ニュース「読書好きの為の裁断済み書籍交換サイト『裁断本の森』が正式オープン」(フィクションです)(2))


2011.09.09 (Fri)

このエントリはフィクションです。こちらのエントリから先にお読み下さい。

 

(あらすじ)

2015年4月1日、裁断済み書籍の情報を共有し、自分の欲しい書籍の裁断本を「ゆうメール」の着払い料金だけで手に入れられるサービス「裁断本の森」が正式ローンチした。β版の頃から1年に渡って築き上げられたその仕組は、合法的にPDF複製を大量生産する読書家ネットワークであった。出版社の電子化対応の遅さに苛立ちを感じて始まったという本サービスの開発元にビジョンを尋ねた。

 

では、読書未来はどこで収益を上げるのか?代表の大阪太郎氏に聞いてみた。

「収益なんて考えてないですよ、別に。単に読書が好きなだけですから。でも一つ言えるのは、本も本棚もリアルには必要ない事が多くなってきたって事です。iPadに入ってればそれで十分です。一度に数百・数千冊持ち運べますし、OCRかけてれば検索も出来ますしね。あと、僕はPDFに目次情報も付けてるんですよ。紙の本より格段に読み易くなります。電子化ってこういう事ですよね。」

大阪氏は続ける。

「最近考えるんですよ。本って何だろうなって。紙って何だろうなって。

僕らは、活字による視覚的刺激を文脈として捉えて楽しみたいだけなんですよね。音声や動画を付けてリッチにとか、インタラクティブにとかって言いますけど、それは本質じゃありません。

単純に、紙じゃない別の媒体でコンテキストを表現できる時代になったのだから、読むのも買うのも保管するのも、もっと便利な方法、つまり電子的媒体にスイッチしたいだけなんです。紙の書籍と同じ値段でPDFを売ってくれても良いのになって思うんですけどね。

でも、日本の出版社の方はほとんど動いてくれなかった。むしろ逆に、もう4年前だったか、当時も流行っていた自炊代行業者に矛先を向けて抑圧しようとしましたよね。でも結局変わらなかった訳です。

便利な形で書籍を電子化して欲しいだけ。やって貰えないなら自分でやりますよ….、ただそれだけなんですよね。僕はそれを合法的に『みんな、もっと大規模に自分たちで電子化しようよ』って、やってみたんです。システムは大した事ありません。元となる雛形は気分転換に1日で作った程度ですから。儲けなんて考えてませんよ。本が便利にゲット出来たらそれで良いんです。

自宅にみんなスキャナがあって、欲しい本は全部『裁断本の森』を介して入手する。新刊は誰かが買って登録する。そして、回りまわって自分の所にも届いてくる。そんな時代になったら便利だなと今は思いますね。もう待ってるのは限界じゃないですか。

それにこの規模の会員さんに使って頂けるようになった今、単行本30冊買うならスキャナ買って『裁断本の森』を使った方が得ですよ。新しい時代の本の買い方じゃないですかね。電子化は自分でやる。その為に裁断された書籍が流通している。そんな世界。」

jis11 © 2010 Ryuichi IKEDA, Flickr

もはや質問する事はないと思ったが最後に1つだけ、極論を言えばもう紙の本なんていらないのか、と大阪氏に訪ねてみたら否定された。

「違います。紙はプレミアムになるんですよ、きっと。手に触れて形として視認できて存在を感じれるモノは凄く貴重なものじゃないですか。それだけはデジタルには真似できません。印象に残った雑誌、人生を変えた書籍、そういったモノはお金をかけてでも紙にしたいですよ。

だから僕は大切な本はやっぱり裁断してないし、『裁断本の森』で手に入れた作品で感動したものは、書籍を改めて買いましたよ。中には『裁断本の森』を廻ってた絶版本にもの凄く感動した事があって、それは何とかしてPDFから製本出来ないかなって思ってるぐらいです。これはダメかもだけど。まぁ、それは置いといて、とにかく紙は絶対に残ってて欲しい。でも全てが紙である必要はない。そういう時代だと思うんです。」

こんもり © 2010 H Aoki, Flickr

1時間の取材で分かったのは、純然たる読書を楽しみたいという読書家の想いが、タブレット型端末の登場とホームスキャナの低価格化とITの進化とによって、行き着く所まで行ってしまったという事だ。

『裁断本の森』のユーザはもう元には戻れないだろう。

大阪氏は紙の書籍は重要で購入する事もあると言っていたが、実際に購入する機会はやはり減ってしまったそうだ。しかし、出版社がPDFやjpeg化した電子化書籍をもっと早く販売してくれていれば、多分購入していたし、『裁断本の森』なんて作ってなかったとも言っていた。それはつまり、電子化を真剣に進められなかった出版社が、自らその収益機会を不可逆な形で損失させてしまったという事を意味しているのではないだろうか。

『裁断本の森』の存在を知ってからというもの、裁断された書籍が日本中を駆け巡っている様子が度々脳裏をよぎる。このままでは益々コンテンツの作り手が減っていき、全体の質は落ちていき、読書好きにとっても望まぬ未来になるのではあるまいか。大阪氏率いる(株)読書未来が見せる読書の未来は、結果として誰も幸せになれない未来のように思えた。

(終)

 

という訳で、実際に起こりかねないなと想像しながら未来を書いてみました。実際に起こりかねないなと思ったのは、法的に明らかに問題であると言えるシーンが無かったからです。

一度、こういう世界が出来るとますます電子化は難しくなるんじゃないかなと思います。確かに電子書籍にも色々事情があると思いますが、圧力をかける時間を、既存書籍の電子化からでも良いので可能な所からやっていく時間として使って頂きたいなーと一読者としては思います。まず有償PDF単体で販売する所からでも良いでしょうし。ホントお願いします。


2011.09.08 (Thu)

OSXを10.3のPantherの頃から使っている僕ですが、バージョンが上がる度にAppleの細かなプラスαな心遣いに感心しています。大々的にデデーンと喧伝する機能がある一方で、小さな小さな、でも超便利な機能を追加していたりするのです。

昨日発見した機能が余りに便利過ぎて書きたくてしょうがなくなっての御紹介エントリです。

OSXを見たことある方はおなじみのFinder。画面はカラム表示で僕は通常この形式で普段使っています。そんなFinderに見慣れぬアイコンが並んでいる事に気がついたのが昨日のこと。こちら。

クリックすると

こんな感じになって何やらソートが出来るようではありませんか。以前はこんなボタン無かったんですけどね。じゃぁ何か意味があるんだろうと、例えば「最後に開いた日」を選んでみて衝撃を受けた訳です。こりゃすげぇ。

上から順に「今日」「昨日」「過去7日間」「過去30日間」「1ヶ月以上前」とiOSのセクションヘッダらしきモノが現れて見事に分類されるんです。

何とまぁ見易いこと、見易いこと。

これで、混雑しがちなダウンロードフォルダや書類フォルダの見通しが良くなります。特にダウンロードフォルダは確実に直近のダウンロードファイルが上に来ます。また、普通のフォルダであっても、一般的に直近に使ったファイルは再度使う傾向がありますから、目的のファイルに辿り着き易くなります。

元々 SnowLeopard の時から並び替えの機能は有りましたが、セクション単位で分ける機能は無かったですし、「最後に開いた日」のような気の利いたソート条件が無かったので余り使っていませんでした。…が!

左がSnowLeopard、右がLion

この充実ぶりですよ。使わない訳にはいきません。「最後に開いた日」以外にも以下のようなものがありまして。ちょっとまとめてみました。

名前 いつもの見慣れた表示
種類 「アプリケーション」「フォルダ」「イメージ」「PDF書類」「ミュージック」「ムービー」「プレゼンテーション」「スプレッドシート」「デベロッパ」…など、Spotlightでの分類に似ている
アプリケーション 「iTunes」「Microsoft PowerPoint」「Safari」「プレビュー」…
関連づいたアプリ毎に分類
最後に開いた日 「今日」「昨日」「過去7日間」「過去30日間」「1ヶ月以上前」…
最近開いた順に分類
追加日 「今日」「昨日」「過去7日間」「過去30日間」「1ヶ月以上前」…
ファイルが置かれた順に分類
変更日 「今日」「昨日」「過去7日間」「過去30日間」「1ヶ月以上前」…
変更された順に分類
作成日 「今日」「昨日」「過去7日間」「過去30日間」「1ヶ月以上前」…
作成された順に分類
サイズ 「1MBから100MB」「10KB〜1MB」「100バイトから10KB」…
容量毎に分類
ラベル 「レッド」「ブルー」…
ラベル毎に分類

こんな感じでそれぞれ分かりやすく分類してくれる模様。更にそれぞれショートカットが割り当てられていて、例えば「最後に開いた日」は [cmd]+[control]+3。僕は昨日からずっと頻繁に切り替えるようになりました。あー、あともちろん

ファイルを開くダイアログでも使えるという…。便利過ぎ。

 

という訳で「並び替え」機能の御紹介でした。これを知ってる・知らないで随分作業効率が変わる気がします。…ってか、ひょっとしたら普通に皆さん使ってますかね(僕が知らなかっただけ?)。Lionユーザでご存じなかった方は是非お試しあれ!

OSXが良いのはこういう所なんですよね。ユーザの事をほんとに考えてくれてる感が随所に見られるというか。

「こうなってくれたら良いよなー」と期待して行う操作には期待通りの挙動で応えてくれる事が多いし、今回のように密やかに(?)凄く便利な機能を搭載してきて効率UPをアシストしてくれたりもします。だからOSXは使えば使うほどWinには戻れなくなるんです :)


2011.09.07 (Wed)

PDFビュワーの Book+ と併せて、開発を続けているのが法人向けの「SYNCNEL for Enterprise」というプロダクトです。簡単に言えば Dropbox の企業版のようなもので、きめ細かなセキュリティという基本はおさえつつ、iPad/iPhone を使ったドキュメント共有を実現する事でペーパーレスとコスト削減を図るシステムです。

その SYNCNEL for Enterprise が日経コンピュータ 2011.9.1 号に掲載されました。有難う御座います!

日経コンピュータ 2011.9.1号 p.48

SYNCNEL for Enterprise では、Dropbox でいう所の管理画面から、紛失/盗難時はiOSクライアント側にダウンロードされたファイル群をリモートで強制削除、アカウント情報も削除できるという紛失/盗難対策をアプリ&サーバで実現してまして、セキュリティの文脈で紹介されたものです。

言及されたのは本当に少しだけではあるのですが、日経コンピュータに社名とプロダクト名が載ったという事が実は結構凄いかもと思ってます。情シスの方やSIerさんの多くが目にする現場に近い定番情報誌ですし、法人向けソリューションを提供する企業にとっては登竜門の一つと言っても良いかも知れません。

まだまだ競合の Handbook には認知度が俄然負けているのですが、この秋から営業体制も強化して頂いて取り組んでいく予定です。ウチの社内でも、協力頂いている販売店様も、使い始めると手放せないシステムとして定着しつつある上に、結構なコスト削減効果が具体的な数字で出始めていますので、法人にiOSデバイスいれるならSYNCNELと言われるぐらいのデファクトを目指したいと思ってます。

…と書きながら SYNCNEL for Enterprise がいかなるものか、このブログでちゃんと書いた事が無いんですよね。何ができるかぐらいは改めてもう少し書いてみようと思います :-)


2011.09.06 (Tue)

昨日のエントリで、ネット徘徊中に「このアプリ入れたい!」と思った時に、ブックマークレットをクリックするだけで、当該アプリのAppStoreページにJUMPするURLをQRコードで生成するプログラムを御紹介しました。

その話題が今日の社内ミーティングで出ましてですね、

ソース公開したら面白かったと思いますよ

あの手のエントリでいまどき珍しいソース公開無しですか

的なコメントがありまして。

確かに言われてみたらその通り。今振り返って昨日のエントリ読んでみてもソース公開されてるもんと思うやん!みたいな。何で公開という発想にならなかったのか不思議ですね。そう言えば更に前の flickr API で遊んだ時もそうでした。

…なので、単なる報告ブログやん!みたいな自分ツッコミをする勢いでひとまずQRコードネタをgithubにソース公開してみました。

アカウントは随分前に取っていて放置気味だったので、READMEを作って気になるところを修正してサクっとpush。

oishi/AppQR

ソースはやっつけですのであしからず。完全に自分用だったので綺麗じゃないです。レンタルサーバを借りてる方は、index.phpを設置して頂くと当該URLにあるブックマークレットを登録するとすぐ使える筈なので宜しければどうぞ〜 :)

ご希望御座いましたらご遠慮なくコメント下さいませ。気が向いたらまた気分転換します。


2011.09.05 (Mon)

ウェブブラウザでアプリ紹介サイトを見ている時に

このアプリ入れたい!

と思った時、滅茶苦茶不便だったりしませんか?iPadならFastBoardを使ってURLをWiFi転送してインストールさせるのですけど、iPhoneはコレといった決め手が無くて面倒だなぁと思い続けて早くも3年。普通の(?)方法はザッと列挙してみると

  • ブラウザでアプリ名を確認してiPhoneのAppStoreアプリで検索
  • ブラウザのリンクからiTunesを開きダウンロードしてUSB経由の同期
  • 後で読む系のサービスやSafariのブックマークに登録してiPhoneで開く

等が通常考えられる手順ですが、やっぱり手間なんですよねぇ。

って事で、ちょっと変わった方法を模索してみたのが先日の日曜日。気分転換がてらにこんなモノを作ってみましたよ。QRコードを使ってアプリゲットです、ってQRでアプリ?…なんですかそれは。

 

画面キャプチャを並べながら紹介してみます。例えば、AppBankさんのサイトで気になる記事を見つけたとします。このアプリを入れたい!…と思ったとしましょう。

そこでおもむろに用意したブックマークレットをクリック

すると

こうなる…ってな感じのプログラムを書いてみた次第です。表示されているのはアプリ名とアプリアイコンと、QRコードですね。後はこのQRコードをQRコードリーダアプリで読み取って開かせると

こうなる訳です。ちなみに、複数のアプリが紹介されている記事だと、

こんなふうに全部並びます。セール情報のエントリとかが該当するでしょうか。んで、インストールしたいアプリを選んでご自由にどうぞー的な。

 

これにより、ネット徘徊中にこのアプリ入れたい!ってな時に

  1. ブックマークレットをクリック!
  2. QRコードリーダでスキャン!そしてSafariでOPEN!
  3. AppStoreアプリのインストールボタンをタップ!

って手順でインストール出来るようになりました…というのが日曜日の午後。

 

こんな方法どうでしょうかね?個人的に結構便利だなーと思ったのですが。

ちなみに仕組みは至って簡単で、対象となるページを解析してアプリのリンクを抽出、そのURLからアプリを特定して、AppStoreのサーバから画像やらアプリ名を取得、更にURLを Goolge Chart API を使ってQRコード化して表示する。それだけです。もちろんアプリのリンクがアフィリエイトリンクになっている場合は、もちろんそのままで。取っちゃうのはちょっと違いますしね。(Refererとか見てて無効になったりしないよね?)

 

開発に要した時間は2,3時間程度でしょうか。前回のFlickr API での気分転換に続いての気分転換になります。不便だと思った事に対して自分なりのアイディアで新しいモノを作る。これが開発の醍醐味ですね。また気が向いたら気分転換しようと思います(何かチガウw)

iTunes

あ、最後に。弊社のバーコード/QRコードリーダアプリCodeScannerが先日バージョンアップしました。アプリ連携の実装を修正したプチアップデートです。宜しければどうぞ m(__)m