会社経営
2014.11.16 (Sun)

(渡欧中の飛行機の中で考えて書いた事をつらつらと…)

 

設立から8年強。人を採用するようになってから約6年。ずっと考えてきたのは、従業員(またはエンジニア)にとっての理想的な就労環境の実現でした。その為に僕がやってきたのは、役割分担の徹底と執拗なまでのムダの排除です。それが結果的に生産するもの(アプリやサービス)のクオリティを支え、御客様のメリット最大化を図りつつ、従業員の幸せも担保できると考えてきたからです。

危機感

これらに全力で(それこそ身を粉にして)取り組む事で、今でも離職率ゼロを維持し、待遇面含めエンジニアからは大きな不平不満も無く、フィードテイラーで将来は働いてみたいと思う人も現れ、開発したアプリ実績数は優に100を越え、Appleさんやキャリアさんとも直接お付き合いをさせて貰うようになり、大手企業がひしめくB2B市場でしっかり存在感を持つSYNCNEL(MCM業界で6位。上位でベンチャーはウチのみ)という自社サービスを収益源とするまでになりました。有給消化率は高く、残業時間ほぼゼロで、同じ業界で単純な対労働時間生産高を比較をするならスコアは相当高いだろうという自負も持っています。

今の状況を成功と仰って頂ける方もいます。まがりなりにもエンジニアの理想的な就労環境を作ることは出来た(と思っている)ので、自分が目指したものを達成した事を成功とするなら確かにそうなのかも知れません。

でも次のステージ(その理想環境の持続性確保)に目を向けてみると、ウチ独自の構造に潜む構造的欠陥がウィークポイントとして表出するようになってきていて、それに危機感を感じてしまうのです。今は良くても時間軸を先に伸ばすとそうも言っていられないと。経営者が自分のブログで危機感感じる〜と書くのもどうかと思いますが、持続性(サステナビリティ)が高くない事業や会社は長続きしないのは自明の事です。

昔に発表させて貰ったDevLOVE関西の時の資料から1枚引っ張ってきました。

DevLove関西Decision_today_key

DevLOVE関西発表資料から。僕はグリーン。全ての案件の窓口・調整役を担っている

御客様とのコミュニケーションはゲートウェイたる僕(上図グリーンの人)が担い、実経験に基づくエンジニアリング知見と御客様とのコミュニケーションという渉外力とでもって内外の「壁」を作り、少数精鋭のエンジニアが開発業務に専念する時間を限りなく100%に近づける、これがフィードテイラー流の開発体制です。

このゲートウェイの役割は僕にしか出来ないと昔から思っていて、だからこそウチらしさが現れるポイントともなっていました。しかし、この構造は、僕の負荷がプロジェクトの増加に伴い比例的に増えていくという欠点を持っています。まぁ当然と言えば当然で、何とか耐えてたつもりなんですがそろそろ限界が見えてきました。

経営とは何か

限界は最近特に顕著に見えてきて、僕が経営者として「経営」を行える時間が年々逓減しつつある事に現れてます。正直、経営者ではなく、プロジェクトマネージャーとしての大石という顔でいる事が多くなりました。つまり、経営をちゃんと出来てないに等しい。

経営とは、リソースから生み出せる価値の最大化です。

ウチのようなソフトウェア開発業の場合、エンジニアの1時間が御客様の満足にどの程度繋がったのか、エンジニアの1時間がどれだけの利益に繋がったのか、エンジニアの1時間がエンジニア自身のモチベーションやその身内の笑顔にどの程度繋がったのか、それらの指標を何倍にも何十倍にも膨らませる事により、社内外の関係者全てをより幸せにするということが経営だと僕は考えています。

そこに時間をかけれていないなら、いずれ時代の趨勢に左右されジリ貧状態になっていく事になるでしょう。内外に提供しうる価値を増幅出来てないんだから。それこそ歯車が一つ狂えば一気に崩壊します。だから経営者は、中長期的な複数の視点や戦略を持って次の手を次々と考察し模索し実行に移していく必要がある訳です。

それが今、余り出来なくなっていて、考える時間が本当にありません。毎週ハーフマラソンの距離を走っているのは考える時間を無理矢理にでも確保する為と言って良いほど。経営者が経営に専念できないのは長い目で見れば御客様にご迷惑をかけるばかりか、社内外の幸せ度が落ちていくに違いない。この状況を抜本的に解決すべき状態にあります。

そんな中でも頑張って経営っぽい事をしたなぁ〜と思った例を一つ。

昨年子会社化したSYNCNELは、とあるオペレーションで何も追加の開発を行うこと無くある時から利益が10%増になりました。勿論、御客様には全く不利益になる事が無く…です。開発者の1時間が生み出す利益が「調整」だけで1.0から1.1になった。併せて御客様の満足度も販売パートナーの満足度も体感で1.1倍にはなってます。

経営っぽいですね。

その他にも、今は他ソリューションとの連携を深めて、販売チャネル増と解約率減を図る動きもとり始めていますが、これも社内リソースが生み出す価値の現状1.0を2.0にし易くし、0.8にならないようにする取り組みであり、今その調整を進めています。またこの11月に渡欧してロンドンで会議をしてきたのも同じ目的です。

経営とはこういう事であり、資料作りも会食もプレゼンも出張も全部この為にやっています。ホントはここにもっと時間をかけなくちゃいけないのに、上述の構造的欠陥が負荷になっている為にかけられる時間が余りない。これは言い換えると、御客様や販売パートナー様にもっと便益を提供出来る機会を逸失していると言えなくもない状態です。あわせて、担当しているプロジェクトのスピード感にも影響します。

経営の専念率も最大化

エンジニアの役割分担の徹底と開発専念率最大化を推し進めながら、自らの経営という役割専念率を低下させていっている状況とも言えます。そろそろ自分の役割を再定義して自分の時間というリソースの配分を最適化しないといけません。

もちろん、マネージャー的な自分の役割をいきなりゼロにする事はできませんけど。現状を100だとしたら少しずつ減らしながら1年後には50%減って残り50%は経営に専念してるイメージです。3年後には10%で、9割はホントに経営してる感じ。

繰り返しになりますが経営とは社内リソースから生み出す価値をブーストさせること。

果たしてそんなに簡単にいくのか分かりませんが、今回見えている課題(限界)は打破する為に何かを捨てなければならないタイプの限界。そこで創業から、特にスタッフが増えてからずっと持っていたエンジニアのゲートウェイ的な役割は自分でなきゃダメというこだわりを捨てる事にしました。気持ちだけで越えられる限界もありますけど、この限界はそうじゃない。だから、自分の役割を一部担って貰い得る人にジョインして貰う時がきたと判断したのが先日のことです。

多岐にわたるプラットフォーム・言語での開発経験があり、自社商品・サービスのマネジメント経験があり、メールや各種ドキュメントの作成能力も備え、電話対応や接客も全うに行う事ができ、最新のテクノロジに対する向上心と学習意欲を持ち、営業・技術営業として打ち合わせもこなし、各種セミナーや講演も行うような人にジョインして貰えると僕の負荷は目下50%になるなと。

さすがにここまでは高望みし過ぎですがエイヤーと踏み込む時だと思う昨今です。

 

30代最後の誕生日を迎えてすぐ渡欧の為に乗った機中で、とある原稿執筆に追われながら未来の事を色々と考えていました。変わるべき時が来たのだと思います…っていうかちょっと遅すぎた感は否めません。それを取り戻すように年末年始は激務が続きそうですが、思い描く次のステージ(理想環境の持続性確保)も見えてきたのでそこに到達すべく頑張ってまいります。


2014.09.16 (Tue)

先日発表された iPhone6, iPhone6Plus, Apple Watch などに目が向いてしまう昨今ですが、そうこう言っているうちに毎年恒例のiOSメジャーバージョンアップのiOS8が登場します。弊社ではこのiOS8リリースのタイミングに合わせて、以下の通り幾つかのアプリの提供を停止またはサービスそのものの停止をさせて頂く事にしましたのでお知らせ致します。

 

そら案内 Classic

現在、そら案内は旧式の そら案内 Classic とは別アプリとして公開済みのそら案内 for iOSをメンテナンス対象としています。今回、そら案内 Classic について、非常に古いOSのしがらみがあり既にメンテナンスが事実上不可能な状態になっていること、またiOS8上では そら案内 Classic が期待通りに動作しないこと、データ配信元の日本気象協会様との取り決めがあること、の3つの理由でAppStoreからの配信を停止させて頂きます。

但し、そら案内 Classic 向けに気象情報を配信しているサーバは運用を継続致しますので、現在そら案内 Classicを御利用頂いているユーザ様には特段影響は御座いません。そのまま御利用頂けます。ただ、iOSを8にアップデートされますと御利用が継続できません。予めご了承下さい。iOS8にアップデートされる場合は是非そら案内 for iOSの御利用を御検討下さいませ。

 

SocialMessage

古いOSのしがらみがありメンテナンスを継続する事が難しいこと、またサーバのランニングコストの関係で赤字事業と化しており利益回復も見込めない時期が2年近く続いていること、の2つの理由でAppStoreからの提供、並びにサービスそのものを停止させて頂きます。

iOS8公開日である9月17日以降はAppStore上からSocialMessageが見えなくなるのと同時に、お手元のSocialMessageを御利用頂けなくなります(厳密にはTwitterやfacebookに大きな修正が入らない限りはメッセージ受信/送信は御利用頂けますが、PUSHは同日より届かなくなります)。御利用頂いているユーザ様、開発に御協力頂いた皆様には申し訳御座いませんがご理解賜れますようお願い致します。

 

GBScanner

古いOSのしがらみがありメンテナンスを継続する事が難しいことを理由にAppStoreでの公開を停止させて頂きます。

 

FastBoard

古いOSのしがらみがありメンテナンスを継続する事が難しいこと、また現在はほとんどユーザ様がいらっしゃらないと思われること、の2つを理由にAppStoreでの公開を停止させて頂きます。

FastBoardは、デスクトップ環境からiPadにファイルをWiFiやBluetoothで転送するアプリなのですが、実はこのFastBoard、弊社子会社で展開するファイル配信インフラサービス「SYNCNEL」の原点にもなったアプリです。

デスクトップから数十台のiPadに同じファイルを配信できないか?

FastBoardを使われた大学様や企業様から、そんな相談を何度か頂きました。そこで「これはビジネスになる」と考えFastBoardのコンセプトをクラウド化したのがSYNCNELなんですね。FastBoardが無ければSYNCNELは生まれなかったし、SYNCNELが弊社の大きな収益源にもなっている事を鑑みれば弊社の存在すら危うかったかも知れません。

そんな訳で愛着たっぷりですが、役割は終えたと判断し公開を停止致します。

 

という事で、上記4アプリをiOS8公開の2014年9月17日をもって公開停止/サービス停止とさせて頂きます。尚、SocialMessageをのぞき現状御利用頂いているユーザ様は現環境のままであれば継続的に御利用頂けますのでご安心下さい。

尚、これら以外の以下のB2C向け弊社公開アプリについてはiOS8でも動作する事を確認(一部微調整が必要なものもありますがアップデートで対応します)しており、今後も公開・サービス提供を継続させて頂きます。ただ、今後もiOSの進化等で停止に至るものもでてくる可能性はありますのでご了承下さい。

…という訳でiOS8に伴って停止となるアプリの御案内でした。一方で、iOS8公開後に提供を開始するアプリも御座いますので順次御紹介させて頂こうと思っております。


2014.06.21 (Sat)

以前にも紹介した事がありますがウチはアイディアをOUTPUTする事を推奨する制度があります。アイディア1つで500円のamzonギフト券が貰えるという制度。

別にそのアイディアが「良い」と判断されなくちゃいけないとか、プロジェクトとして「採用」されなくちゃいけないという条件は特に無く、

  • アプリやサービス等の新企画
  • 社内で気がついた問題点とその改提案

といった、何かを生み出したり、何かを良くする見込みのあるアイディアであれば、OUTPUTするだけで500円のamazonギフト券が貰えます。宇宙エレベータを作るとか、今の自分たちではどうしようも無い感が超高いと判断できそうなもの以外は何でもok。

「だから、沢山アプリが出てくるんですねぇ」

という声を頂く事もあるんですが、ご褒美的な報酬があるだけでは新しいアイディアが生まれ続ける事は無いと思います。生まれたアイディアを受ける「器」が無いと、アイディア出そうぜ!と発破をかけた瞬間には何かが出てきたとしても、それを継続させるのは難しいと思うんですよね。

  • アイディアを発表する場が定期的にある
  • アイディアを形にする事を後押しする

という仕掛けが「器」として、会社の制度として、機能しているから継続的にアイディアが出てくるのではないかなと何年かやってみて思う訳です。さすがにまぁ毎日何か出てくるって訳じゃないんですけど。

lamp © 2014 freemanphoto, Flickr

アイディアを出したらそれを形にさせて貰えるんだ、放置にはならないんだ、という状態を作り出す事が特に重要で、よくあるのは(自分が前いた会社にもありましたが)、全社的にアイディアを出しましょう〜〜ってな呼びかけがあって集まるは良いけど課長/部長/役員クラスまで議題になっていく過程であーでもないこーでもないと時間がかかる割にnegative意見がぶつけられるだけで結局何も始まらず呼びかけた歴史が残るだけで終わるパターン。

合議制がアイディアを潰すとはよく目にする意見ですが、それよりも、僕はこういう優柔不断さが組織に露呈する事でアイディアを出すモチベーションが下がってしまうことの方が問題だと思ってます。

アイディアが出たら、ポジティブなリアクションを会社としてすぐに返す。例えばアプリのアイディアがあるなら、すぐにプロトを作り始めるようGOサインを出せば良い。是認する事が大事でしょう。

ウチの場合、水曜日の13:00〜14:00が定期的なアイディア会になってます。皆、アイディアを事前に社内システム(Redmine)に登録しておいて、それを水曜日の午後に発表します。皆でそれを聞く。アイディアが何も無く終わる時も結構ありますが、それでも続けます。アイディアが受け入れられる器が存在する事が大事なんですよね。

アイディアを発表して貰い、何かしらリアクションします。否定するのは基本無しで、どっちかっていうと場にいる皆で香辛料を振りつける感じですか。こんな事もできそう?とか、こんなのどう?的な。その時間の僕の役割はいわゆるファシリテーションとGOサインを出すこと。基本否定はせず肯定しかしません。「ふんふん、なるほど、良いんじゃない?」って言って、発案者本人だけで完結するなら「じゃ、やってね、このあとすぐ」って言うだけです。

だから、水曜日の午後はその会のあと終業まで「聖域タイム」として基本的に通常業務をしない時間枠にしていて、その時間を使って作って貰います。以下はエンジニアのタイムテーブル。

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そして、ウチではメールも電話もエンジニアとは直接繋がないし、開発室には突然の来客も含め一切ノイズが無い状態にしていますから、早ければその時間でプロトが出来ちゃう訳ですね。で、プロトを見て、担当案件の進捗度合いを勘案し、「じゃぁ、明日からちょっとリソース割いてみて」って案件化させます。で、気がつけば、受託もやりながら残業無しで、自社アプリ達は5年たってこんな事になってます。人数の割に結構多い。

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アイディア会から出たものは結構あります。まぁこれはアプリという形があるので分かり易いかも知れませんが、別にアプリ開発事業じゃなくても一緒ですね。スタッフからのアイディアにはとにかくポジティブなリアクションをすぐに返す

そして、仮に「じゃ、やってね、すぐ」ってGOサインを出してもその時間が取れなければ形になりませんから、それを会社としてサポートしてあげることも重要です。人間、アイディアを出すって事は、少なくとも課された日々の業務よりも絶対に「やりたい」というモチベーションがあります。これ、普遍の事実。それを組織として後押しする、後押しする以上はそれを遂行できるよう環境を整備するのが重要です。何か言いたいとしてもウダウダ言わない。

  • アイディアを発表する場が定期的にある
  • アイディアを形にする事を支え後押しする(すぐに)

これだけで結構アイディアって出てきます。回り出したらしめたもので、ひたすら続けるのみですね。

 

アイディアを受け付ける仕組み、アイディアを発表/議論する会、アイディアを形にする時間、それを後押しする環境、が全部揃って新しいアイディアって生まれ続けるんじゃないかなという話。

時々、アイディアってどうやって出てくるんですかねーと聞かれる事があるのですが、新しいアイディアがなかなか出てこないという企業さんは、まず四の五の言わずどんなアイディアにもお金でもってリアクションするという仕組みだけでも取り入れたら良いんじゃないかなーと思うんですが、どうでしょうかね。

ウチと同じく1アイディアで500円のamazonギフト券だとしたら、仮に毎月1000個のアイディアが上がってくるとしても高々50万円。下手なコンサル入れるよりよっぽど安いですよ。

んで、まずは、本人だけで完結あるいは試行が出来そうなアイディアについて、週1時間の自由時間を与える。場合によっては予算もつける。支えて後押しする。それだけでアイディアって出続けると思うのです。


2014.06.07 (Sat)

先月の5月18日(日)に弊社エンジニア @kumatch の結婚披露宴が行われました。

20140607

ウチのエンジニアの中では唯一の独身であったのでここ数年気にはなりつつも、遂にキターと報告を受けた時には感慨深く思った次第ですが、同時に披露宴への招待状を受け取った訳ですね。いぁー実に目出度い!。と貰った招待状を開封したところ、見慣れない一つの紙片が。

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「…当日お言葉を賜りますように…」と書いてある。こ、これはまさかスピーチってやつかー。祝辞の経験なんて今までに無いですから!!

新郎側の勤務先社長という立場なので、いわゆる友達代表とか同僚代表とかよりは厳かな感じの位置付けなんだろうなぁと想像しながら詳細を聞いたところ、宴の開始直後、最初の最初だと。いわゆる主賓の挨拶の位置付けではありませんかと。

新郎新婦の人生の節目、御両家の皆さんにとっても家の歴史に残る場での挨拶という責任重大な大役を仰せつかった訳であります。経営者になって人を雇用するとは、こういう事もありうるという事ですね。無論、立場上、人前のプレゼンには慣れてるのですが、意味合いが全然違います。緊張しない訳がないですし、それに、

プレゼンじゃないからスライドも配布資料もない!!

のですよね。スライドまたはテキスト等の有る無しって、話し易さに凄く影響してきます。場も場だから失敗は許されない。結果的には、何とか全う出来たのですが、こういう経験を30代のうちにさせて貰うのは大変貴重な機会なのでせっかくなので記録に残しておこうって事で、僕が話した挨拶の内容や、準備の仕方とかを書いてみます。

自分が経営する会社の従業員が結婚する、しかも参加者の年齢を考えれば自分はまだ若輩者、ってな同じシチュエーションに身を置く事になる若き経営者の一助になれば嬉しいです。

 

原稿を準備

社長であればプレゼンの機会なんて日々の仕事で何度も何度もあると思いますが、主賓の挨拶は基本的に宴の最初に来るものですから、その挨拶の成否によって宴全体の空気が変わってしまいます。その意識で準備が必要であろうと、普段のプレゼンで発表者ノート機能なんて一切使った事ありませんが、さすがに今回は原稿を用意しました。原稿必須。後述しますが、読み上げる為ではなく、練習する為に。

1ヶ月前ぐらいには何を喋るかアウトラインを考えて、2週間前ぐらいから詳細をノートやEvernoteとかにOUTPUTしていきます。社長たるもの忙しいので、万が一直前に時間がとれなくなる可能性を考えて早めの準備。練習の為にも早いにこした事はありません。

 

練習と推敲

時間はどれだけ長くても5分。絶対5分には収まるように、そして気持ちのこもった挨拶になるよう、実際のシーンをイメージしながら、それこそ服装もジャケット羽織ってポケットチーフをさして本番さながらの状態を作って声を出して練習です。これは恥ずかしがらずに絶対やった方が良いかと。僕は10回、20回どころじゃない回数練習しました。経験上、話の時間と練習すべき量は反比例しますね。

言葉が詰まってしまう所、流れるように喋れない所などは、言い回しや言葉の順番を調整し推敲を重ねました。実際に喋ってみないと分からないので敢えて声に出すんですが、重要なのは一言一句正確に言おうとしない事じゃないかなと。「読み上げ」に感情や気持ちを伴わせる事が難しいからです。祝辞は本の朗読って訳でもありませんしね。

自分の言葉って感じを出そうと思ったら、原稿とは筋書きに過ぎず、構成を記憶して喋りを繋げていく糊ぐらいの捉え方の方が良いのだと思います。

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本番、原稿は手に持つが実際には見ない

小さく折りたたんで手に持つ程度(途中1回だけ見た)。主賓の役割は、宴の雰囲気を良いものにする、御両家が当事者の婚姻を誇りに思い、参加者の祝う気持ちをブーストさせることにある筈なので、作られた喋りにならないように気をつけました。読むじゃなくて話す。だからこそ練習の数が重要なんじゃないかと。

 

そんな感じで臨んだ祝辞の原稿は、以下のような感じです。ほぼそのまま転記してみます。名前の部分は伏せてます。ちなみに @kumatch の業務はSYNCNELのサーバサイドの開発・運用です。

〇〇さん(新郎)、〇〇さん(新婦)、そしてご両家の皆様、本日は御結婚お目出度うございます。

心よりお喜び申し上げます。

どうぞお座りになって下さい。

只今御紹介をあずかりました大石と申します。この度はこのような素晴らしい宴にご招待賜りましたこと御礼申し上げます。人生の大先輩が多くいらっしゃる前で大変恐縮では御座いますが、5分ほどお時間頂戴致しまして御祝いのお言葉を申し上げます。

会社では普段「〇〇さん」と呼んでいますので、そのままの呼び方で話させて頂きます。

入社して貰ってもう4年が経とうとしていますが、彼がいなければ弊社の事業は成り立たないと言っても過言ではありません。弊社はいわゆるIT企業で、詳しくは余り申し上げられないのですが、御客様の業務に無くてはならない、これが無かったら困るというものを開発し提供させて貰っています。おかげさまで何年もその事業をやっていますが、ほとんど何のトラブルもなく提供が出来ています。御客様の満足度も非常に高い。それを支えてくれている主要なメンバーのうちの1人が〇〇さんなんですね。

〇〇さんの仕事ぶりはとにかく堅実、適度に石橋を叩きながら1歩1歩確実に歩みを進めてくれるタイプです。時には、自分から「大石さん、これついでにやっときます?」と半歩先の提案をしてくれる事もあります。1言うと普通1返します。時には0.5しか返さない人もいる。でも〇〇さんは違う。1言うと10返ってくる、時に12が返ってくる事もあるんですね。これが出来る人はなかなかいないんですよね。IT業界全ての社長さんが欲しがる逸材、それが僕の〇〇さんに対するイメージです。

さて時に〇〇さん(新郎)、事業をこれまで支えて来てくれた事に本当に感謝しています。有り難う御座います。是非今後もお願いしたいと思いますが、これからは、まず支えるべき最優先は奥さん、そして家庭です。物理的にも精神的にも経済的にも、その持ち前の堅実さと半歩先を見る視点でしっかり支えてあげて下さい。

そして〇〇さん(新婦)、彼は本当に毎日9時〜18時全力で開発をして帰ってくると思います。どうか、優しくその労を労ってあげて下さい。心の支えに、〇〇さん(新郎)の帰るべき安息の場に、なってあげて下さい。

結びとして、円満な夫婦になる為のコツを御紹介します。この3つの言葉を毎日、心を込めてお互いに言うようにしてみて下さい。「ありがとう、ごめんなさい、おいしい」…全て相手の存在や行為を認める気持ちありきの「会話」を始めるきっかけとなる言葉です。会話こそが幸せな家庭を醸成していくと思います。

お二人の未来が幸多くなる事を祈念しまして、また、皆様の永きに渡るご健勝を願いまして御祝いの御挨拶とさせて頂きます。改めて、御結婚、お目出度う御座います。

話の構成を細かく分けるとこんな感じでしょうか。

  1. 祝いの言葉
  2. 着席の促し
  3. 自己紹介
  4. 招待の御礼
  5. 御両家の年配の方々への言葉
  6. 新郎の事業への貢献
  7. 新郎とのエピソードと経営者としての見解
  8. 新郎へのメッセージ
  9. 新婦へのメッセージ
  10. 夫婦へのメッセージ
  11. 結び

練習では丁度5分だったんですが、実際には100%言えていなかったのでもう少し短かった筈です。原稿を見ずにしゃべったので、全体的に「てにをは」や言葉がだいぶ異なっていたり、6,7,8あたりは原稿と少し微妙に違ったのですが、原稿再現度70%ぐらいで話が出来たんじゃないかと。ホントは録画や音声も残せたら良かったのですが、当日、予想以上に初っぱな(宴が始まって1分後w)だったので録音も録画して貰う余裕もなかったです。

でもまぁ後から、良い挨拶でしたよとか、印象に残りましたとか、そんな感想をお聞き出来たので悪く無かったのだと思います。原稿再現度100%を敢えて目指さず、作られた文章ではなく自分の言葉で話をしたからかも知れません。ポイントは、

  • 原稿は作るが筋書きと位置付けて本番では見ない
  • 徹底的に実際に声をだして身振り手振りをいれて練習する

の2点だったかなと。

主賓としてスピーチするのは人生で初めての事でしたが、とっても良い経験をさせて貰いました。多分もうこれが最初で最後かなーと思いますが、万が一2回目以降があっても大丈夫そうです :-)同じ境遇の方に何かの参考になれば幸いです。何はともあれ @kumatch、結婚お目出度う御座います!お幸せに〜。


2014.01.26 (Sun)

Mac誕生30周年だそうです。凄いですね。

Appleの本家サイトも30周年ありがとう!テイストになってます。同時に、Your First Mac なるユーザ参加型企画もあるようなので、Macユーザな方は Anniversary Page に行ってみられると宜しいかと。

screenshot_201

僕が初めてMacに触ったのは iMac G3。初代のiMac ですね。

いきなり個人用に買ったとかそういう事ではなくて、新卒入社したソフトウェアの会社(WinだけでなくMacのソフト開発もやってた会社)で2年目後半ぐらいに Mac でのアプリ開発プロジェクトに配属になって、お下がりの初代iMacを使わせて貰った…みたいな感じだったと思います。

まだOSXが無い時代、C++でCodeWarriorってIDE使って開発してました。あの頃はまだ駆け出しのプログラマで、当時まだMacの世界には無かったソフトウェアDVDプレイヤーの開発プロジェクトでサブピクチャ(字幕)のデコーダ開発をしてましたかね。懐かしい。

そこから職を転々として、縁あって再び同じ会社に戻って(いわゆる出戻り)から暫くして iMac G5 を個人で買いました。2004年のこと。僕の中ではここが自分的なWin→Macのスイッチの瞬間で、それ以降は基本Macユーザで今10年目。その意味で、自分的な My First Mac は、仕事で使ったiMac G3 ではなくやっぱり iMac G5 です。

で、当時コテコテのWindowsユーザでMacを買うとは思いもしてなかった僕がMacを買おうと思った理由は、(1)iPod miniを使っていてApple製品の魅力に惹かれ始めていた頃だった事と、(2)出戻りした会社で同じプロジェクトになった同僚に「何か一緒にMacでフリーソフト作りませんか」的なお誘いを受けたからだったように記憶してます。

2人で Pyxis っていう開発ユニットを結成してですね、そのユニットの最初にして最後の作品であるOSX用RSSリーダ「Ensemble」というフリーソフトを一緒に開発、世界に向けて公開しました。慣れない Objective-C で僕は TinyXML をラップしてRSSのパース部分を担当。アイコンも描きましたね。

…と何気に思ってググったら今もページが残ってました。

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MacFanに掲載されたりもしましたねぇ、懐かしい。で、サイトのAboutを見て貰うと分かるんですが、このユニットを組んでいた相手がお馴染み弊社の @itok_twit なのです。まぁ後半はほぼほぼ僕は転職したり本業忙しくなったりでそれどころじゃなくなって開発から手を引いちゃいましたが。

で、転職市場を彷徨って行き着いた果てで、汚れきった己の履歴書を振り返って求職する気にもなれず、(株)フィードテイラーを創り、ただずっとMac使いではあったのでMacしか使わない会社にしようってよく分からないルールを自分1人会社に課して、iMacを買い換え、iBookも買い、Macと共にどこにでもありそうなWebシステム会社を受託メインでほそぼそやってました。

そして2008年にiPhone登場。その翌年2009年早々に @itok_twit がJOINします。(弊社に新しい仲間が加わりました) ほぼ同時にWebシステム会社の看板を下げ、iOSアプリ専門会社という見せ方を前面に出すようにした大転換期です。

ウチはiOS専門です!

当時は関西でまだそんな事を言ってる会社はどこにもなくて、iPhoneが盛り上がると共に、大阪でiPhoneなら…って切り口でそれなりに目立ってたと思います。だからこそ色んな所からお仕事を頂くことができました。iPhoneがまだ何かよく分からない時代にお声がけを頂いた御客様に本当に感謝感謝です。

ついでながらもう時効だと思うので書いちゃいますが、大阪でiOSなら…で必ず名前のあがるフェンリルさんから Sliepnir のiPhone版開発について相談を受けたりもしたんですよね。まだブラウザアプリがrejectされていた時代です。懐かしい。あの打合せで社長の柏木さんといつか飲みに行きましょうって話をしていたのですが結局実現せず。柏木さん、元気かな。

って何の話かよく分からなくなって来ましたが、お世話になった会社に出戻りして Mac にスイッチしていなければ、(株)フィードテイラーという会社は存在しなかったし、天気予報アプリのそら案内もここまで拡がらなかったし、B2Bのファイル共有サービスSYNCNELも生まれなかった事は確かです。富豪ブックも、8bitter、TwitterニヤリライフサポートのNyatterもまた同じですね。

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創業当初の3坪のオフィス。iMac G5はメインマシンだった。

歴史を語るに欠かせない「モノ」って必ずあると思うんですが、ウチの会社にとって iMac G5 はその一つなんです。これからもきっと僕は、今の自分や会社の原点であるMacをずっと使い続ける事でしょう。Mac30周年、お目出度う御座います。