Book+
2011.08.30 (Tue)

Book+の機能を紹介するシリーズ。6回目の今回はPDF閲覧周りでの細々(こまごま)とした機能を幾つか御紹介させて頂きます。これまでの5回はBook+独特の特徴的な機能について御紹介してきましたが、今回は他のリーダと同様の機能も搭載しておりますよー的な。

 

■ PDFでのテキスト検索

自炊したものをOCRにかけて取り込むのはよくやる事でして、やっぱりPDFは検索できた方が良いですよね。という事で、こんな感じになってます。以下は、検索ボタンをタップした後の検索文字列入力ダイアログ。

「ランク順」というタブが見えますが、これは独自のロジックでスコアリングしてマッチ率の高いページ順に表示するという仕組みです。スコアリングするのは少し変わった所かも知れませんね。

「ページ順」ってのは言葉通りです。あと、当然ながら検索履歴も保持(青い本のようなアイコン)しますので一度検索したものは何度でも再利用可能です。

結果の一覧から一つを選択してタップすると、

こんな感じでだいたいの場所を表示してくれます。表示の瞬間はウニョーっとアニメーションします。

 

■ PDFのインデックス表示

こだわりの自炊派の方はOCRにとどまらず、自分でインデックス情報(目次)を付与したりもしますので、こちらも対応しています。表示しているPDFにインデックス情報が内包されている場合は、

こんな風に表示されるようになっています(項目をタップすると当該ページにジャンプ)。階層構造をもったインデックスでも見易くインデント表示されているのがお分かり頂けるかと思います。

 

■ PDFのトリム対応(切り取りBOX/メディアBOX)

更に更にこだわる自炊家の方はこちらのサイトで紹介されているような、Adobe Acrobatを使ってソフト的なトリム(余白部分を除いた領域のみを表示領域に設定すること)をされる場合もありますので、これも対応しています。

例えば、もともと見開き表示で

こんな感じだった自炊PDFに、Acrobatで余白部分を明示的に指定してPDF再出力の上でBook+に読み込ませると

こんな風に余白が無くなって読み易くなります。Acrobatで予め設定をして頂く必要はありますが、トリム情報が含まれる場合は自動的にトリムした状態(「切り取りボックス」モードと言います)で表示するようになっています。もちろんBook+内で、ソフト的なトリムを一時的に解除するってな切り替えも可能です。(ちなみに上の2つの画像はあえてぼかしています。実際の表示はクッキリハッキリです)

 

…と3つ書いた所で文章量が結構なボリュームになっているのに気が付きました。まだ書きたい事があるのですが、改めてまた御紹介させて頂きたいと思います。

第5回までのエントリのように、見た目的に分かり易い機能も搭載しつつ、今回のような細かな機能についても結構作り込みがなされています。快適な読書環境の為ならばどんなハードルにも挑戦してみよう…、そんな開発方針で追求を続けたいと思っています。

 

これまでのBook+に関する投稿


2011.08.30 (Tue)

発売を目前に控えたBook+ですが、オフィシャルサイトをオープン致しました。

機能一覧、動画、問い合わせ先など、まずは最初という事でそれぞれ非常にシンプルではありますが、日英共に用意致しまして(英語版は言語設定を英語にするとご覧になれます)、今後のバージョンアップなど最新情報を含めてoutputしてきたいなと思っています。

しかし今のご時世、アプリリリースに伴うTODOがホント沢山ありますね。今回の準備で改めて強く感じました。アプリの開発そのものや申請はもちろんですが、同時にTwitterアカウントの開設やFacebook連携の準備、ブログ(弊社の場合はこのブログで代用)の執筆、そしてプレスリリースの作成などなど。

一応 Book+ でもひと通りの事は手がけまして、

オフィシャルサイト http://bookplus.feedtailor.jp/
Twitterアカウント @book_plus
Facebookページ http://www.facebook.com/pages/Book-JP/174049469333594

こんな感じになっています。Facebookは初めての取り組みですが以下のような感じに。

Facebookは、アプリケーションのファンページ、サポートページ、情報発信ページと、使い方によっては色んなページにもなり得るコミュニティ形成スペースとして活用していきたいなと思っています。要望をお聞きしたり、レビューをシェアしたり、キャンペーンを開催してみたり…色々出来るんじゃないかなと。

もちろんTwitterも情報発信の窓口として、またユーザの皆様との対話の窓口として機能させられたらと思っています。

Twitterのフォローや、Facebookページの「いいね!」や、オフィシャルサイトにも「いいね!」ボタンを用意していますのでクリックを頂けたら大変嬉しいです :-)Book+がマーケットでどのように受け入れられるのか僕らもドキドキしておりますが、ソーシャル全盛な今だからこそ、ユーザの皆さんと一緒に新しい読書体験の世界を作り上げて行ければと思っています。

どうぞよろしくお願いします。


2011.08.28 (Sun)

新作PDFビュワーのBook+を紹介するシリーズ。

第5回目の今回は、スマートフォーカスと名付けられた少し変わった(?)機能についてご紹介します。これもまたBook+の基本思想である読み易さへのこだわりが生んだモノで、僕の知る限りこれに類する機能を搭載しているリーダは今まで見た事がありません。

弁理士さんには、これは今の時代だからこその発明だと有難い言葉を頂いたのですが(せっかくなので押さえる所は押さえるべく動いてますが)、特に雑誌を始めとする段組コンテンツの自炊読書で威力を発揮する機能です。また、僕が「リフロー目的のEPUBはいらない。PDFで読み易さを追求する方が良い」という主張に揺るぎ無い自信を持っている根拠でもあります。

 

スマートフォーカスとは、読みたい領域を指定すれば自動的に読みやすいように拡大表示してくれる機能。以下、Book+のアプリ内に予め内蔵している解説図です。

何が起こるかもう少し分かり易くする為に動画も作ってみました。段組コンテンツを読もうとしているシーンで、ある簡単な操作で当該箇所が読み易く表示されるのが見て頂けると思います。

(コンテンツは青空文庫から芥川龍之介の羅生門)

経験がおありの方には共感して頂けると思うのですが、自炊読書していると「ココ」を拡大して読みたいっていうシーンが必ずあります。段組のコンテンツでは特に多いですね。iPhoneだと更に言えるんですが、何もページ全体を常に見たい訳じゃなくて、段組された特定領域だけを読み進めていきたい訳です。

従来のリーダでは、2本指やダブルタップで拡大縮小して、適当なサイズ&位置調整を手動でやる必要がありました。でもこれが凄く使いづらいんです。またダブルタップでの拡大は、意図した通りの拡大になかなかなってくれないんですよね。

僕はこれがiPhoneで自炊読書をやりにくい最大の理由だと思ってました。そこで、この解決を試みるべく弊社独自に考案/開発/実装したのがスマートフォーカスです。使い方は至って簡単でして、

  • ダブルタップしながら指を離さずスワイプで領域指定します
  • 始点から終点の方向がコンテンツの方向と一緒になるように指定します

ってな感じで読みたい範囲を指定するだけです。宜しければ、この2点を意識しながら1つ目の動画を再度見てみて下さいませ。擬音語で表現するなら、「トトン、ヒュー」って感じでしょうか :-)

通常、拡大する時はダブルタップしますよね?その操作の最後に、指を画面から離さずに領域指定の操作をするだけです。方向は、左開きの書籍ならコンテンツの方向が基本的に左上から右下ですから左から右へ、右開きの書籍なら逆に右から左にスワイプします。

以下は縦書きコンテンツでの様子です(あえて横持ちをしていません。無論、横持ちで見る事も可能)。

(コンテンツはシャーロック・ホームズの帰還 – 空家の冒険)

横書きか縦書きかによって、読み易い拡大率や位置ってのが異なるのですが、それを自動で算出して、ある程度読み易いであろうと思われるように拡大率と位置を調整してくれる機能です。

読み手がやるのは、ダブルタップ&スワイプの操作で領域と方向を教えてやるだけ。縦書きテキストに横書きが混在しているような雑誌もありますが、そんな場合も全く問題ありません。領域と方向をアプリに教えてあげて下さい。後はアプリ側が自動的に計算してくれて、

読みたいのはここですよね?

的な振る舞いをしてくれます。もちろん判定には限界がありますので完璧とはいきませんが、従前のスタイルに比べると圧倒的に便利にはなります。

僕は、Book+のスマートフォーカスが実装されてから、たとえ他の機能が未実装であったとしてもBook+を手放せなくなってしまっていました。特にiPhoneでの威力は絶大で、ちょっと自分で言うのも変ですがそれぐらいインパクトのある機能です。

2段組が基本の論文は劇的に読み易くなりますし、新聞系のPDFも同様です。あとは、漫画の特定コマを大きく表示したい時も使えます。仕事で使うPDFなら、資料内のある図を拡大表示したい時にも使えます。PDFをiPad/iPhoneで閲覧する頻度が多ければ多い方ほど、ご活用頂ける機能かと思います。

 

スマートフォーカスについては本当に思い入れがあって、どうやったら「自炊で良いやん」「PDFで良いやん」という発想になれるかばかりを考えて思い付いた仕組みです。

PDFとは別に段組情報を別途配布して(例えばXMLとかでね)段組みを識別したり…ってなアプローチもありますが、これでは絶対に汎用的なリーダにはなりません。じゃぁ画像処理で段組構造を自動検出してやるのか?っていうとそれも精度や速度に無理があって、そもそもほぼ100%が無理な中途半端な自動化ならやらん方がマシです。

人間からヒントを貰って機械は出来る限りの事をやる。人と機械の歩み寄りです。スマートフォーカスは、僕がマン・マシンインターフェース論の根源であれと考える哲学を一つの形にした機能であり、これを是非多くの人にBook+を通して体験して頂けたら嬉しいなと勝手ながら思っています。


2011.08.28 (Sun)

無事にAppleの審査を通りまして、キリが良い2011年9月1日をリリース日とさせて頂く事に致しました。

これまでBook+について開発に至る経緯から具体的な機能紹介まで色々と書かせて頂いてきましたが、1つのプロダクトについてこれだけ連投したのは、このブログでは初めての事かも知れませんね。

たまたま本ブログの執筆を本気で再開したタイミングが重なった事もありますが、振り返ってみると思い入れの大きさがそのままエントリ数になっているんだと改めて思います。(無論もう一つの自社プロダクト SYNCNEL についても思い入れは相当あって書きたい事は山程あります…が書けない事が結構多い orz)

 

弊社はBook+で電子書籍業界に参入します。

今、それぐらいの勢いで捉えています。もちろんコンテンツ供給側という事ではありません。ページの概念が必要な書籍を電子化するならPDF最強という持論を前提とした「読む」体験の更なる追求をツール側から攻めてみるアプローチです。まだまだ未開の世界であり、やるべき事も出来る事も沢山あると思ってます。

Book+のコンセプトは

The Future of Reading

と言っても良いでしょう。僕らは出版社でも作家でも印刷会社でもなく、単に読書が好きで開発が出来るITベンダーというポジションでしかありませんが、だからこそ+(プラス)したいモノをユーザ視点で試行錯誤する事が出来るという強みがあると思ってます。

電子化において考えるべきは、Bookの未来ではなくReadingの未来ではないでしょうか。そうすれば多分Bookの未来も勝手に見えてくるような気がするのです。今はBookの未来ばっかり議論し過ぎてる気がします。

電子によって本の世界に何をプラスするのか。

今ある書籍や雑誌の体を成すならば、少なくともプラスすべきは新しいフォーマットや新しい団体などでは決してなく、新しいユーザ体験と、それに基づく新しいビジネスモデルである筈です。僕らはそれを追求してみたい、そう思っています。


2011.08.26 (Fri)

開発中の新作アプリBook+の機能紹介シリーズ第4回目。これまでの3回でPDFの管理系機能という事で

  1. ファイルブラウザ
  2. INBOX機能
  3. 検索とスマートフォルダ

を紹介してきましたが、このように管理系の工夫をしてみる一方で、肝心のPDF閲覧についても僕らなりのこだわり機能を搭載しています。今日はその1つであるマルチページビューについてご紹介します。これもまた画面を見て貰った方が早いかも知れません。こんな感じ。

1つの画面に最大64ページ分の表示が可能です。64ページ表示以外には、32, 16, 9, 6, 4, 2, 1, 自動 という9種類の表示方法から選べるようになっています。縦持ちで単ページ表示、横持ちで見開き表示に勝手に切り替えてくれる「自動」表示切り替えも当然ながら搭載。

2ページより多い複数ページの表示は

デジタルなので単ページや見開き表示のみである必要はないかも

という発想で実装した機能で、出来る事はマルチページビューという名前の通りですね。ページめくりと言いますか、指の左右操作で次のセットに移る操作も出来るようになっており、例えば64ページ表示中なら64ページずつ読み進める事が出来ます。

9ページ表示以上になるとさすがにiPad でさえもテキストを視認できるレベルではなくなってしまいますが、写真集的な書籍やカタログ、あるいは雑誌系のPDFは、マルチに見れるだけでも全体が俯瞰出来るメリットがあります。

他にもこんな風に、線引きや書き込みをした資料をスキャンして後から参照する時には、再確認すべき場所が視認しやすくてGOODってな使い道もあります。(ちなみに上の図はiPadでの32ページ表示)

 

更に、読みたいページが見つかればトリプルタップで、

1ページずつ表示するモードになります(1枚目から2枚目)。もちろん、このまま普通のリーダの如くページをパラパラと送って読み進める事が出来ます(2枚目から3枚目。ページ送り中)。もう一度トリプルタップをすると複数表示の状態へ戻ります。

トリプルタップではなく、ダブルタップの場合は

ギュイーンとアニメーションしながら該当ページへズームイン。その後、直前まで表示していたページ分が並ぶ大きなキャンバスを指操作で自由に見れるようにもなってます。ピンチイン/アウトで任意の拡大率で複数ページ状態のキャンバスを部分部分眺めていく事もできます。

 

結局何がしたいかというと、なるべく普段の読書体験に近いような事を平面で実現したいという事なんですね。

  1. まず俯瞰して
  2. トリプルタップして
  3. 1ページずつ読み進めて、読み終わったら
  4. トリプルタップして
  5. また俯瞰して…、

という感じの拾い読みな感じ。雑誌の気になる記事だけを読んでいくような読書体験です。あるいは、とりあえず俯瞰しつつ全体を確認したいなぁという場合は、

  1. まず俯瞰して
  2. ダブルタップ や ピンチイン/アウトで拡大
  3. 指の操作でご近所ページも見つつ全体を見渡して
  4. ダブルタップして
  5. また俯瞰して…、

という感じになるでしょうか。これを煩雑な操作なく行ったり来たり出来れば…という考えで実装してみた次第です。

 

(また繰り返しますが)EPUBだXMDFだという新しいフォーマットで「如何に紙の書籍をデータとして再現するか」を追求するんじゃなくて、こんな風に、PDFという優れたフォーマットを使って「如何に紙の書籍の読書体験をデジタルでプラスアルファするか」という考え方で電子書籍に取り組んだ方が絶対合理的だと思うんですよね。フォーマット問題はもはやFilanAnswerが出ているので、目指すべきは読書体験の+αの追求かと。電子にする意味ってそこにある筈で、車輪を再発明する経済的合理性はありません。

また議論をぶり返しそうなのでこのへんにしておきましょう。

今回のマルチページビューの他に、閲覧におけるちょっと変わった(?)機能もありまして、それはまた別のエントリでご紹介させて頂きます。