新作PDFビュワーのBook+を紹介するシリーズ。
第5回目の今回は、スマートフォーカスと名付けられた少し変わった(?)機能についてご紹介します。これもまたBook+の基本思想である読み易さへのこだわりが生んだモノで、僕の知る限りこれに類する機能を搭載しているリーダは今まで見た事がありません。
弁理士さんには、これは今の時代だからこその発明だと有難い言葉を頂いたのですが(せっかくなので押さえる所は押さえるべく動いてますが)、特に雑誌を始めとする段組コンテンツの自炊読書で威力を発揮する機能です。また、僕が「リフロー目的のEPUBはいらない。PDFで読み易さを追求する方が良い」という主張に揺るぎ無い自信を持っている根拠でもあります。
スマートフォーカスとは、読みたい領域を指定すれば自動的に読みやすいように拡大表示してくれる機能。以下、Book+のアプリ内に予め内蔵している解説図です。
何が起こるかもう少し分かり易くする為に動画も作ってみました。段組コンテンツを読もうとしているシーンで、ある簡単な操作で当該箇所が読み易く表示されるのが見て頂けると思います。
(コンテンツは青空文庫から芥川龍之介の羅生門)
経験がおありの方には共感して頂けると思うのですが、自炊読書していると「ココ」を拡大して読みたいっていうシーンが必ずあります。段組のコンテンツでは特に多いですね。iPhoneだと更に言えるんですが、何もページ全体を常に見たい訳じゃなくて、段組された特定領域だけを読み進めていきたい訳です。
従来のリーダでは、2本指やダブルタップで拡大縮小して、適当なサイズ&位置調整を手動でやる必要がありました。でもこれが凄く使いづらいんです。またダブルタップでの拡大は、意図した通りの拡大になかなかなってくれないんですよね。
僕はこれがiPhoneで自炊読書をやりにくい最大の理由だと思ってました。そこで、この解決を試みるべく弊社独自に考案/開発/実装したのがスマートフォーカスです。使い方は至って簡単でして、
- ダブルタップしながら指を離さずスワイプで領域指定します
- 始点から終点の方向がコンテンツの方向と一緒になるように指定します
ってな感じで読みたい範囲を指定するだけです。宜しければ、この2点を意識しながら1つ目の動画を再度見てみて下さいませ。擬音語で表現するなら、「トトン、ヒュー」って感じでしょうか
通常、拡大する時はダブルタップしますよね?その操作の最後に、指を画面から離さずに領域指定の操作をするだけです。方向は、左開きの書籍ならコンテンツの方向が基本的に左上から右下ですから左から右へ、右開きの書籍なら逆に右から左にスワイプします。
以下は縦書きコンテンツでの様子です(あえて横持ちをしていません。無論、横持ちで見る事も可能)。
(コンテンツはシャーロック・ホームズの帰還 – 空家の冒険)
横書きか縦書きかによって、読み易い拡大率や位置ってのが異なるのですが、それを自動で算出して、ある程度読み易いであろうと思われるように拡大率と位置を調整してくれる機能です。
読み手がやるのは、ダブルタップ&スワイプの操作で領域と方向を教えてやるだけ。縦書きテキストに横書きが混在しているような雑誌もありますが、そんな場合も全く問題ありません。領域と方向をアプリに教えてあげて下さい。後はアプリ側が自動的に計算してくれて、
読みたいのはここですよね?
的な振る舞いをしてくれます。もちろん判定には限界がありますので完璧とはいきませんが、従前のスタイルに比べると圧倒的に便利にはなります。
僕は、Book+のスマートフォーカスが実装されてから、たとえ他の機能が未実装であったとしてもBook+を手放せなくなってしまっていました。特にiPhoneでの威力は絶大で、ちょっと自分で言うのも変ですがそれぐらいインパクトのある機能です。
2段組が基本の論文は劇的に読み易くなりますし、新聞系のPDFも同様です。あとは、漫画の特定コマを大きく表示したい時も使えます。仕事で使うPDFなら、資料内のある図を拡大表示したい時にも使えます。PDFをiPad/iPhoneで閲覧する頻度が多ければ多い方ほど、ご活用頂ける機能かと思います。
スマートフォーカスについては本当に思い入れがあって、どうやったら「自炊で良いやん」「PDFで良いやん」という発想になれるかばかりを考えて思い付いた仕組みです。
PDFとは別に段組情報を別途配布して(例えばXMLとかでね)段組みを識別したり…ってなアプローチもありますが、これでは絶対に汎用的なリーダにはなりません。じゃぁ画像処理で段組構造を自動検出してやるのか?っていうとそれも精度や速度に無理があって、そもそもほぼ100%が無理な中途半端な自動化ならやらん方がマシです。
人間からヒントを貰って機械は出来る限りの事をやる。人と機械の歩み寄りです。スマートフォーカスは、僕がマン・マシンインターフェース論の根源であれと考える哲学を一つの形にした機能であり、これを是非多くの人にBook+を通して体験して頂けたら嬉しいなと勝手ながら思っています。