電子書籍
2011.08.28 (Sun)

無事にAppleの審査を通りまして、キリが良い2011年9月1日をリリース日とさせて頂く事に致しました。

これまでBook+について開発に至る経緯から具体的な機能紹介まで色々と書かせて頂いてきましたが、1つのプロダクトについてこれだけ連投したのは、このブログでは初めての事かも知れませんね。

たまたま本ブログの執筆を本気で再開したタイミングが重なった事もありますが、振り返ってみると思い入れの大きさがそのままエントリ数になっているんだと改めて思います。(無論もう一つの自社プロダクト SYNCNEL についても思い入れは相当あって書きたい事は山程あります…が書けない事が結構多い orz)

 

弊社はBook+で電子書籍業界に参入します。

今、それぐらいの勢いで捉えています。もちろんコンテンツ供給側という事ではありません。ページの概念が必要な書籍を電子化するならPDF最強という持論を前提とした「読む」体験の更なる追求をツール側から攻めてみるアプローチです。まだまだ未開の世界であり、やるべき事も出来る事も沢山あると思ってます。

Book+のコンセプトは

The Future of Reading

と言っても良いでしょう。僕らは出版社でも作家でも印刷会社でもなく、単に読書が好きで開発が出来るITベンダーというポジションでしかありませんが、だからこそ+(プラス)したいモノをユーザ視点で試行錯誤する事が出来るという強みがあると思ってます。

電子化において考えるべきは、Bookの未来ではなくReadingの未来ではないでしょうか。そうすれば多分Bookの未来も勝手に見えてくるような気がするのです。今はBookの未来ばっかり議論し過ぎてる気がします。

電子によって本の世界に何をプラスするのか。

今ある書籍や雑誌の体を成すならば、少なくともプラスすべきは新しいフォーマットや新しい団体などでは決してなく、新しいユーザ体験と、それに基づく新しいビジネスモデルである筈です。僕らはそれを追求してみたい、そう思っています。


2011.08.26 (Fri)

開発中の新作アプリBook+の機能紹介シリーズ第4回目。これまでの3回でPDFの管理系機能という事で

  1. ファイルブラウザ
  2. INBOX機能
  3. 検索とスマートフォルダ

を紹介してきましたが、このように管理系の工夫をしてみる一方で、肝心のPDF閲覧についても僕らなりのこだわり機能を搭載しています。今日はその1つであるマルチページビューについてご紹介します。これもまた画面を見て貰った方が早いかも知れません。こんな感じ。

1つの画面に最大64ページ分の表示が可能です。64ページ表示以外には、32, 16, 9, 6, 4, 2, 1, 自動 という9種類の表示方法から選べるようになっています。縦持ちで単ページ表示、横持ちで見開き表示に勝手に切り替えてくれる「自動」表示切り替えも当然ながら搭載。

2ページより多い複数ページの表示は

デジタルなので単ページや見開き表示のみである必要はないかも

という発想で実装した機能で、出来る事はマルチページビューという名前の通りですね。ページめくりと言いますか、指の左右操作で次のセットに移る操作も出来るようになっており、例えば64ページ表示中なら64ページずつ読み進める事が出来ます。

9ページ表示以上になるとさすがにiPad でさえもテキストを視認できるレベルではなくなってしまいますが、写真集的な書籍やカタログ、あるいは雑誌系のPDFは、マルチに見れるだけでも全体が俯瞰出来るメリットがあります。

他にもこんな風に、線引きや書き込みをした資料をスキャンして後から参照する時には、再確認すべき場所が視認しやすくてGOODってな使い道もあります。(ちなみに上の図はiPadでの32ページ表示)

 

更に、読みたいページが見つかればトリプルタップで、

1ページずつ表示するモードになります(1枚目から2枚目)。もちろん、このまま普通のリーダの如くページをパラパラと送って読み進める事が出来ます(2枚目から3枚目。ページ送り中)。もう一度トリプルタップをすると複数表示の状態へ戻ります。

トリプルタップではなく、ダブルタップの場合は

ギュイーンとアニメーションしながら該当ページへズームイン。その後、直前まで表示していたページ分が並ぶ大きなキャンバスを指操作で自由に見れるようにもなってます。ピンチイン/アウトで任意の拡大率で複数ページ状態のキャンバスを部分部分眺めていく事もできます。

 

結局何がしたいかというと、なるべく普段の読書体験に近いような事を平面で実現したいという事なんですね。

  1. まず俯瞰して
  2. トリプルタップして
  3. 1ページずつ読み進めて、読み終わったら
  4. トリプルタップして
  5. また俯瞰して…、

という感じの拾い読みな感じ。雑誌の気になる記事だけを読んでいくような読書体験です。あるいは、とりあえず俯瞰しつつ全体を確認したいなぁという場合は、

  1. まず俯瞰して
  2. ダブルタップ や ピンチイン/アウトで拡大
  3. 指の操作でご近所ページも見つつ全体を見渡して
  4. ダブルタップして
  5. また俯瞰して…、

という感じになるでしょうか。これを煩雑な操作なく行ったり来たり出来れば…という考えで実装してみた次第です。

 

(また繰り返しますが)EPUBだXMDFだという新しいフォーマットで「如何に紙の書籍をデータとして再現するか」を追求するんじゃなくて、こんな風に、PDFという優れたフォーマットを使って「如何に紙の書籍の読書体験をデジタルでプラスアルファするか」という考え方で電子書籍に取り組んだ方が絶対合理的だと思うんですよね。フォーマット問題はもはやFilanAnswerが出ているので、目指すべきは読書体験の+αの追求かと。電子にする意味ってそこにある筈で、車輪を再発明する経済的合理性はありません。

また議論をぶり返しそうなのでこのへんにしておきましょう。

今回のマルチページビューの他に、閲覧におけるちょっと変わった(?)機能もありまして、それはまた別のエントリでご紹介させて頂きます。


2011.08.23 (Tue)

開発中のBook+の特徴をご説明するシリーズの第3回目。今回はスマートフォルダ機能についてご紹介したいと思います。

自炊をやっていて困ること、あるいはPDFビュワーを仕事での資料閲覧に使っていて困ること

その一つに大量のファイルが入ってる場合に目的のファイルが探しにくいことがあるという点があります。ファイラ系アプリでもビュワー系アプリでも共通していると感じるのですが、ファイルが増えてくると探す行為の頻度が増えてくるような気がします。

Filing © 2011 Anna, Flickr

 

そもそも探す手間を省けるよう全体を俯瞰できるファイルブラウザ(第1回目でご紹介)を搭載しているのですが、いざ検索したいっ!となった場合にはなるべく探し易いように…という事で、多様な検索機能スマートフォルダ機能を搭載しました。

スマートフォルダの解説に入る前に、Book+のファイル検索機能をまず見て頂きたいと思います。どどーんと。

結構色んな切り口で検索が可能です。文字列を使って部分検索をするのは普通に在る機能ですね。Book+では更に以下のような検索が出来ます

  • 更新日(「あのファイル確か2,3日前に入れていた筈なんだけどなぁ?」といった時に使います)
  • 最後に開いた日(「一昨日読みかけで放置していたPDFの続きを読むぞ」といった時に使います)
  • フォルダ検索(フォルダだけで検索したい時に使います)

組み合わせも自由自在です。上記の画面キャプチャの例では

「日経という言葉がファイル名に含まれて、且つ1週間以内に登録したファイルで、しかもここ3日間の間に開いたファイル」

を最大20個探そうとしている様子です。検索ボタンを押すと、マッチしたファイルが表示されますので、そのまま閲覧する事も、移動や削除も可能です。

Folder © 2010 Jonas Merian, Flickr

 

さて、ここからがようやくスマートフォルダ機能の話。

端的に言うと、検索条件を記憶させたフォルダを作れる機能です。検索結果を「保存」をすると、検索条件を覚えたフォルダ(これをスマートフォルダと呼びます)が作成されます。以下は検索結果表示中の様子。

検索結果を覚えるのではなく、検索条件を覚える

というのがポイント。記憶した検索条件に応じて中身が動的に変化するフォルダと言っても良いでしょう。スマートフォルダを開くと、毎回検索条件にマッチしたファイルを一覧してくれる訳ですので、これで同じ条件の検索を繰り返す必要は無くなります。スマートフォルダは何個でも作る事がことが可能。以下は2つ作成している例です。

INBOXのすぐ下は「日経」の文字が含まれるという条件にマッチするもの、一番下は「最後に開いた日が2日以内」という条件にマッチするもので、自分で「最近開いたファイル」という名称を付けています(スマートフォルダには好きな名前を付けられます)。

スマートフォルダは並び替えることも可能ですし、不要になれば削除も出来ます。ちなみにスマートフォルダを削除した場合は中のファイルそのものは消えませんので心配ご無用です。あくまで検索条件へのショートカットが無くなるイメージですね。

 

Book+ではこのように、横断的な検索とその再利用が出来る仕掛けを用意しています。自炊派の方で多数のPDFファイルをお持ちである方や、自炊派でなくともお仕事で大量のPDFを閲覧されるような方にこそ活用頂ける機能ではないかなと思います。

 


2011.08.22 (Mon)

開発中のBook+についてご紹介するシリーズ2回目です。1回目ではBook+のファイルブラウザと題して、ファイルシステムのようにPDFを管理するような思想を持っている事をご紹介させて頂きました。

まさにディスクドライブのようなモノで、そこを基点にしてフォルダを自由に作成してPDFを配置/管理する…と。これを Book+ホーム と呼んでいます。では、その中にどうやってPDFを入れていくのでしょうか。

 

方法は他のアプリと余り変わりません。アプリ連携(Open-In)で他のアプリから持ってくるか、iTunesを経由したUSB転送ですね。Book+に取り込まれたPDFは、受け取り専用として用意された INBOX と呼ばれるフォルダに入ります。

Book+ホームに受信箱が予め備わっている感じでしょうか。

以前のエントリでメールの受信箱を基点にした僕のタスク管理方法をご紹介させて頂きましたが、まさにそれと同じ。Book+に直接取り込まれたファイルは、とにもかくにも INBOX に入ります。未読…というか、未整理状態ですね。買ってきた本をとりあえず机の上に重ねて放置している状態に似ているかも知れません。

整理する機構をファイルシステムのようにこだわって作ったからこその機能と言いましょうか。やっぱり、整理する場所と入れ物とは分けた方が良いんじゃないかと。

このINBOX機能によりBook+に新たなPDFを入れたとしても、既に整理された構造の中にフラットに並んでしまって、グチャグチャになるという事はありません。(個人的にGoodReaderを使ってて辛いのはココなんですよね。整理しててもすぐ散らかった感じになっちゃう)

もちろん、INBOXに入ったままPDF閲覧をするというスタイルでも構いません。整理しないという割り切りですね。何個でも入れたままに出来ますので、そこは整理のスタイルという事で。

INBOXに今、3つのファイルが入っています。(先ほどの写真では2つでしたが、撮影したシーンが異なります)

移動したいものを選んで、移動ボタン。そして移動先指定を促されますので移動させたい箇所を指定します。

こんな感じのインターフェース。階層構造をインデント付きで表現しているので分かり易いですね。タップ後、ファイルは移動してそのフォルダを自動的ファイルブラウザで表示します。…ので、整理した後にすぐ読み進める事も出来ます。(もちろん移動元であるINBOXからは無くなります)

 

ちなみに僕的感覚ではINBOXは常にゼロになってるのが理想。何のために入れたファイルなのかを整理する事で明示する….という仕組みとしてINBOX機能が働いてくれている感じです。

一時的にBook+で見たいだけなんだというファイルはINBOX内で直接閲覧。不要になれば Book+ホーム配下に移動させる事なく削除するというテンポラリな使い方も出来ます。そんな使い分けが出来るのも INBOX 機能の特徴です。

整理する機能はやめてGoogleDocsのようにタグ付けする仕組みも考えたのですが、やっぱりフォルダ階層がある方が直感的という事でこの実装にしました。一方で、タグとは異なる、フォルダ階層には関係の無い横断検索的な機能も搭載しています。案外、iPad/iPhone 系でファイルを扱うアプリには備わっていなくて不思議に思っていたのですが、その機能についてはまた次のエントリでご紹介させて頂きます。


2011.08.18 (Thu)

昨日のエントリBook+ というPDFビュワーを開発中である事を書かせて頂きましたが、公開までの間に開発中の画面や機能について幾つかご紹介出来ればと思っています。まずは管理系から行ってみましょう。画面を見て頂いた方が早いと思いますので、どどーんと。

色んなファイル管理インターフェースを「探しやすさ」という点で検討してみた結果の落ち着きどころなのですが、決して是非を言ってるのではなく、僕らが良かれと感じたインターフェースの試みと思って頂けたら嬉しいです。

本棚的なインターフェースではなく敢えてファイラ的にしてみました。

フォルダの中へ階層構造を次々と潜っていける仕掛けで、階層は幾つでも作る事が出来ます。深い階層では場所に迷わないようにパンくずリスト的な表示もするようになっていて、任意階層にいつでも戻れるようになっています。

探す行為でフリック操作をするのは上下方向に限定した方が分かり易いんじゃないかという議論の末、この形に落ち着きました。

また、フォルダが賑やかな事から推察頂けると思いますが、6色から色を選択出来るようにしてみました。

こんな風にフォルダの設定から指定出来ます。

階層構造を自由に作る事が出来て、尚且つ、PDFをまとめる器として機能するフォルダを色分け出来るようにする事で、柔軟な整理と全体を俯瞰する事が可能になり、どこに何があるか分り易くなるんじゃないかと思います。

あと、整理と言えば忘れてならないのはロック。机の引き出しに鍵がかかっているように、特定のコンテンツは自分しか見れない箱に入れておきたくなるものですよね。これもまた整理のいっかん。なので、任意のフォルダで自由にパスワードロックが出来るようにしてみました。

中を見ようとするとパスワードを聞かれます。見られちゃマズイ系のコンテンツもきっとこれで大丈夫 :-)ロックが掛かったフォルダの中にまた別のロック付きフォルダを作ったりする事も可能です。やり過ぎると確実に使いにくくなりますが(苦笑)

とまぁここまで見て頂くとお分かり頂ける通りパッと見はMacOSXのファイルシステム的なのですが、自分らで使ってみている感想としては結構分かり良くて整理し易いインターフェースになってるんじゃないかなぁと思っています。

 

ところで、このBook+の素敵なデザインは、お馴染みメタ・グラマーさんに全面的にお願いしました。おかげさまで、シンプルで常用に耐えうるテイストながらアクセントが所々あるという絶妙な雰囲気に仕上がっております。いつも有難う御座います m(__)m

という訳で、まずはファイル管理系のご紹介でした。他にも管理し易さを追求してみた機能があったりしますので、また改めてご紹介させて頂きたいと思います。