弊社は iOS アプリ開発専門という事で看板を上げさせて頂いているのですが、時々ITコンサルティング的な事をさせて頂く事もあります。これまで、
- 企業内のiOSデバイス運用御支援
- エンタープライズ向けiOSアプリ開発プロジェクト御支援
など、iOS切り口で行うコンサルティングもあれば、
- 上場会社様のウェブサイトリニューアルコンペの審査やその後の構築支援
- システム開発における要件定義のお手伝い
などiOSが出てこない案件でお手伝いさせて頂いた事もあります。かつて自分がエンジニアとして広く浅く色々経験してきた事が奏功していると言いますか、何にせよどこかの瞬間で誰かのお役に立てているのは大変有り難い事ですね
さて。
中でも2012,2013年とおおよそ2年に渡って関わらせて頂いたプロジェクト e-casebook.com は医療の世界に新たな一石を投じる挑戦的なプロジェクトです。医療の世界は技術進化はめざましく、高度化した医療のノウハウを医師の間で共有あるいは承継する必要に迫られていると聞きます。特に手術に関するノウハウはそう。
「これこれこういう理由でこんな風に施術したんですよ」
「あの〇〇はこんなケースで役にたつんですね」
「あと、ここも結構難しかったかな、ここが△△な状態になってるので危険なのが分かる」
「なるほど、そういう見方ですか」
的な。この種の小さな知見の共有と蓄積がライトに素早くなされると確実に技術って進化するのですが、これが医療事情ゆえかなかなか難しく、必要なんだけど進まないらしい。
ソフトウェア開発の世界でいうと、優秀なエンジニアの知見は「ソースコード」というOUTPUTがネットを通して共有される事で、ノウハウが集積しブラッシュアップされ英知が集まり、より良いプロダクトになっていく仕組みがあって、オープンソースなんてのはその典型例です。
知見が形になったOUTPUTと、ネットを介した「共有」があってこそ成り立つもので、更に昨今ではGitHubのような仕組みが介在する事で、開発者間の「ソースコード」を介したコミュニケーションも実現し、ソフトウェア開発の知見は10年前には考えられないスピードで世界に共有されています。
ところが医療の世界はそうはいかない。
手術のOUTPUTって、そもそも究極の個人情報(患者本人の身体、写真・動画等を含む医療データ)です。データは、DICOMという医療用に特化した亜種がごまんとあるコンテナフォーマットで保存されるんですが、データを「見る」ぶんにはスタンドアロン型のアプリケーションで行う事が前提になっているという歴史があって、「共有」という概念にそぐわないんですね。そもそもデータが巨大だし(動画の世界で言えば巨大なコンテナフォーマットと化したAViみたいなもんです)、氏名/性別/年齢などを含めて個人情報天こ盛りだし。
患者の情報を共有しようという取り組みは昔からありました。XMLを使った地域医療連携ってやつですね。でもそれは患者情報を病院間で共有しようって話でそもそも医療技術・ノウハウの共有じゃない。しかも、大概はSIerの意向に縛られて拡がらない訳ですよ。標準だけど標準じゃないみたいな。
中には、億単位の国の予算前提で構築するのは良いけど、次年度以降予算がつかなければ運営不可っていう事態に陥って、結局大手SIerさんが予算を吸い込むだけのプロジェクトでしたぁ〜的なネタでしかない状態になり下がったりもする。全然、医療の進化や患者のことって度外視されてる訳です。
でも、ネット世代のいわゆる若手医師には、施術の知見を共有出来れば医学の向上に繋がるし、結果患者様の為にもなるんだ〜って強く思っている方々が沢山いるらしくて、草の根的に、施術のOUTPUTたるデータを、個人情報の問題に抵触しない程度に加工してクローズドなネット空間で共有・議論する事を既に始めてるのだそう。Google画像検索で DICOM って検索すると沢山出てきますが、こういう医療画像の断片をネット経由で共有して、それに基づいて議論するだけで知見って拡散できると。
そんな草の根のトレンドを嗅ぎ付けて、OUTPUTの共有を通して医療技術の共有と議論のプラットフォームを法的問題無く作りたいと考えられたのが(株)ハートオーガナイゼーションさんという会社様で、僕は2012年から「じゃぁそんなプラットフォームをどう実現するのか」の議論に技術的視点で参画させて頂いています。
- プロプライエタリ(特定ベンダー固有)な技術の排除
- 「標準」のみで実現する為の仕組み
- 法的に問題無い「共有」の実現
等について考察して要件も定義して、結局ウチが開発を担当させて頂きまして、紆余曲折ありながら初期バージョンを完成させたのが昨年秋。DICOMから個人情報を除去して、クローズドな仮想会議室上に配備、限られた医師がそれを元に議論する器を Web 標準な技術のみでAWS上に構築したものです。
実際に、医療系のよく知られた国際的イベント CCT2013 という展示会にも出展され、上述の若手医師等からの反応は上々だったようです。また、海外から来ていた医療関連企業の役員も面白いと仰っていたとか。
この写真は実際に展示されていた時の様子ですが、画面左半分が、いわゆる循環器系のカテーテル治療のDICOMデータ(個人情報は除去して問題無い状態になったもの)です。造影剤が血管の動きを表してドクンドクン動いてるような画像ってTV等でも見られた事があると思います。右半分がそれについて議論するタイムラインですね。ここで「この瞬間、ステントが拡がってますよね」的なdiscussionをすると。
iOSとは全然かけ離れているのですが、こういう事もさせて頂いてます。
さて、今回御紹介した e-casebook.com ですが、この度、今後の事業拡大を画して開発体制強化をお考えです。日本政策投資銀行のビジネスプランコンテストで最終選考にも残った実績もお持ちで、目の付け所が素晴らしく、なるはやで理想形に近づけるべく開発スピードUPという事のようです。開発においてスピードは常に正義ですから。
今改めて、内部で開発体制を組み、アジャイルな開発で現場の声をほぼリアルタイムにすくい上げ反映させ進化させていくサイクルを高頻度に回していく、事業的性質を考えてもそうなった方が絶対に良いとアドバイスさせて頂いた事もあり、現在 Find Job! にて求人されてます。
新しいサービスを世界に発信する新規事業開発チームのスタートアップメンバー募集!
医師の知見を共有し医療技術の世界的向上を目指すという非常に革新的なプロジェクト。そもそも画面は全部英語だし、最初から World Wide な展開を視野に入れられてます。今回、ひとまずWindowsエンジニアとサーバサイドのエンジニアの2人をお考えの様子。医療の世界ってまだまだITの活用可能性が多くて面白い分野だと思いますし、給与も悪くない筈ですので、ご興味ある方は是非エントリしてみて下さいませ。上述のように僕は技術コンサルという立ち位置で関わっていますので一部面談もさせて頂く事になると思います^^
と、IT関連プロジェクトの技術的な御支援もやってますよー…という御紹介でした。ITを使った何かシステムを作りたい、でもどこからどう交通整理をして進めたら良いか分からないという方がおられましたら宜しければお声がけ下さい。