経営
2020.04.28 (Tue)

(所要時間 : 約1分)

フルリモートワークにしてから3ヶ月。幸いにして生産性の低下はなく、フルリモートに完全移行できたと言って良い状態になりました。

20200428_remotework.jpg

コロナ禍が過ぎても元に戻るつもりはなく、今後もフルリモートな会社でいく予定。ソフトウェア業界は今後もう「え?リアルに会うの?」と、リアルに会うことの心理的ハードルがグッと上がっていくと思うのです。それならもう振り切った方が良い、フルリモートを前提に全て考えるという判断です。

フルリモート完全移行にあたり幾つかの心がけが根付いたのが良かったなぁと感じるのですが、そのうちの2つをご紹介してみたいと思います。

  • チケットの時間粒度を高くする
  • ビデオ会議のハードルを下げ、チケットベースの議論をする

の2つです。なお、2018年からのリモート率を上げていく取り組み過程で書いた『チケット管理がリモートワークの不安を無くすという話』の内容が多分に前提となっておりますので、宜しければ併せてご覧下さい。

 

1. チケットの時間粒度を高くする

「時間粒度が高い」とは、チケット更新頻度が上がるということ。弊社ではRedmineを使っていて、以下チケットの例で少し長いキャプチャですが縮小して貼りますね。

20180507_redmineticket17218
(全部が全部こうではないが、ものによっては1つのタスクでも結構長くなる)

結構細かく作業の記録を書いてます。弊社はもともとチケットの時間粒度は高いほうなんですが、フルリモートにしてから粒度が少し上がりました。僕も意識して上げるようにしてます。

これが意外に良いのです。

仕事の見える化は推進され、フルリモート化で見えない不安が増すばかりか、逆に安心感が増していると感じます。仕事の動きがよく見えるからでしょうね。


(RSSリーダにチケット更新情報が集約され、誰が何をしているか把握できる)

会社にスナップショットがあるとしたら、解像度が上がった感じでしょうか。フルリモートになったからと報告を今まで以上に求める必要は別になく、ちゃんと進んでるかなという心配もありません。

またチケットだけでなく、Gitでソース管理もしていますのでリポジトリにコミット履歴が頻繁に残ることも安心材料になりますね。

20200428_sourcetree

フルリモートワークにおける見えない不安は、監視システムを入れるとかじゃなくて、スタッフの作業記録の時間粒度が上がるような体制作りをすることで解消するんじゃないかなと思います。

 

2. ビデオ会議のハードルを下げ、チケットベースの議論をする

オフィスで「○○さん、ちょっと5分だけいいすか?」ってよくあるじゃないですか。そこで少し会話・議論して仕事が先に進む的な。

これリモートだとチャットでやりがちなんですが、弊社では1,2回の会話往復で終わらず議論に発展しそうなら、ビデオ会議をすぐ繋げるようにしています。あるいは、最初からチケットを書いて、それを議題としてビデオ会議を呼びかけるようにしてます。

20200428_slack2videomtg.png
(チケットに予め要点を書いてからビデオ会議。議題の整理と提示ありきのビデオ会議は議論が収束し易い)

チャットやチケット上で議論をやらないってことですね。議論向きでないツールでの議論は生産性を落とすのでツールを使い分けています。

  • チャット : 通知・報告・確認・合意形成
  • チケット : 作業記録
  • Wiki : 情報整理
  • ビデオ会議 : 議論・相談

って感じ。

チャットがあるから、チャットには記録が残るからと、チャットに頼るのではなく、すぐにビデオに切り替える。ビデオのハードルをぐっと下げて、2,3分話をして決まったことをチケットに書く。

20200428_redminememo.png
(チケットにmtgでのメモを書いて議事録代わり)

フルリモートワークではこのやり方が生産的であることを実感しています。

 

以上2つ、心がけることでフルリモート化前と変わらず仕事できてるなと感じたことを書いてみました。今後もリモートワーク時代の最適な働き方・仕事の進め方をこれからも追求していきたいと思います。

 

リモートワーク関係の他のエントリ


2020.01.31 (Fri)

(所要時間 : 約1分)

リモートワークメインにしてから、月4回出社したら多いかなーぐらいになってましたが、昨日(1/30)をもって当面の出社を控えリモートオンリーとしました。

20200131_newvirus

例の新型肺炎の状況を受けての対応です。

報道の通りですが各社動き出していますね。普段からリモート体制が構築されている会社かどうか、また経営層の即断力が試されているような気がします。リモートの向き不向きもありますから、やれば良いってもんでもないでしょうけど。

弊社では、直近の出社が1/21と10日前でした。リモート状態を続けながら各種情報をwatchしてましたが、奈良県のツアーバス運転手男性の発症報道直後、1/29(水)晩の速報で大阪市でも感染例が報じられたの受けて判断し、翌1/30(木)朝のmtgで当面出社なしとしました。

1/30(木)時点の厚労省の見解では

○ 新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。

国民の皆様におかれては、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様にお一人お一人の咳エチケットや手洗いなどの実施がとても重要です。感染症対策に努めていただくようお願いいたします。

ということですので、いまいまは 普段のインフルエンザ対策と同じで十分 の筈です。が、個人的には 対策の行動コストが低いなら やったほうが良いという考えです。弊社では幸いリモートメインに切り替えていたことが奏功し、朝のmtgで

「大阪でも出たし、しばらく出社控えましょう」

「そうっすね」

と一言二言会話するだけで、身構えることも生産性が落ちる心配もなく平常運転のまま切り替えることができました。(会社の規模が小さいってのはありますが)

冒頭の各社も、リモートへの切り替えコストが低かったからこそできたのでしょうね。野村HDさんのように非IT企業も即応してるのには時代を感じました。(JTさんとかも一部リモート切り替えたんだとか)

2018年の大阪府北部地震や台風21号の時も思いましたが、リモートワークは従業員の健康と会社の生産性を両立する有力な方法だと思います。有事の対応を最小コストで実行できるメリットは大きいです。リモートワークがもっと広がると良いなと改めて思いました。

今回の騒動、被害がこれ以上は広がることなく一刻も早く収束するのを祈るばかりです。


2019.12.28 (Sat)

(所要時間 : 約3分)

2019年も残すところあと4日となりました。毎年恒例の振り返りと来年の展望などを自分用メモとして記したいと思います。今年は4テーマ。

  1. iOS事業
  2. Web静的化事業
  3. 働き方
  4. お金

 

iOS事業

エンタープライズiOS案件で今年も色々お手伝いさせて頂きました。長期で関わらせて頂いているアプリは、ネットメディアに取り上げられたりしました。

ホテルにチェックインするとキー&リモコンとしてiPod touchが渡されるホテルなのですが、このアプリ部分で関わらせて頂いてます。MacFanの再編集ムック本 iOSビジネス年鑑 にも掲載されました。

ADEP / DEP / MDM / ABM / CustomApp などなど、おおよそAppStore向け一般公開アプリとは異なるエンタープライズ分野の技術はまだまだ知られていないなぁと今年も感じました。直接開発には関与せずアドバイスのみさせて頂くケースもありましたね。

エンタープライズiOSの発信は継続していて、今年も幾つかアウトプットしました。

来年は投稿記事数をもう少し増やしていきたいです。あと、MDMやDEPを前提とした自社アプリの開発も検討中です。(自社アプリ復活?)

 

Web静的化事業 espar

iOS事業以上に注力してる事業。今年一番大きかったのは、阪急OASISさんのサイトで espar を導入頂いたことです。

阪急OASIS

元々、静的化前提で作られたサイトだったようですが、サイト拡張で正しく静的化できないページが出てきて困った…とお声がけ頂いた案件。espar の静的化エンジンの品質と高速性をご評価頂きました。

この手のケースが増えてきてる気がします。今年は他に何件かありました。他のツール(StaticPressとか)で静的化したけど無理だった…とか、静的化が要件に入ってる自治体/大学/メディアサイトの案件とかとか。

3月には問い合わせフォーム用のツール espar formも発表しました。静的化を促進するためにも、関連の周辺サービスは増やしていく予定です。

espar form
(静的化したページ上で問い合わせフォームが動作するツール)

また弊社は、espar 事業で AWS Technology Partner (AWSのパートナー) にならせて貰ってるのですが、今年も更新することができました。AWSとのお付き合いも深めていきたいところです。

AWS Partner

ちなみに、今年からパートナー要件に「AWS認定資格を取得したエンジニアが在籍していること」が加わったので、これに併せて弊社エンジニアの @t0shiya にAWS認定資格を取得して貰いました。

来年も静的化の恩恵を色んなサイトにお届けしたいと思います。

 

働き方

リモートワークをメインにするようになって1年9ヶ月。今月は遂に、20営業日中の出社日が4日とリモート率8割を達成です。それでいて何ら生産性に影響がないので来年も続けます。

リモートワークで良いな〜と思うことや、ウチでやってる工夫とかも発信していきたいですね。

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(Thanks! the photo on flickr by Ryan Morse / CC BY 2.0)

働き方でいうと、espar 事業で新たに 営業の方にジョインして頂いた のも今年のトピックでした。ジョインと言っても月に◯日はウチの仕事して下さい的に委託する形式です。個人で一人会社をやっていて複数社の営業マンとして「複業」をされてる方に。

営業の世界では昔から結構あるスタイルですが、今後はエンジニア等の技術職でもこういう働き方が広がっていくでしょう。一社に属するのではなく、複数の契約を掛け持つような感じ。副業(複業)を促進するマッチングプラットフォームも増えてますから。

「副業系サービスカオスマップ2019年版」が公開 (TechCrunch)

雇う・雇われるっていずれ古い働き方になるのかも知れません。完全に無くなることはないでしょうけど。ただ、終身雇用が崩壊した今、「自動更新する業務委託契約」と「期間を定めない雇用契約」と、その違いってどこにあるんでしょうね?

前述の営業の方が、月の数日はフィードテイラー営業マンとして外向きには見えているのと同じように、例えば名刺を持って貰って、週1フィードテイラーエンジニア…ってな形式があっても良いんじゃないでしょうか。来年はそんな新しい働き方にも取り組んでみたいです。

 

お金

今年は今までで一番お金の勉強をしました。税金、財務、社会保障、資産形成、保険…etc。

books
(今年読んだ(聞いた)44冊の本のうち24冊がお金関係。)

2000万円問題が話題となり資産形成に誰もが無縁でいられなくなった以上、経営者も資産形成や法律や税金のことなどお金の知識を持ってないと自社の働き方改革もへったくれもないかもなーと思うに至ったのです。

例えば社内制度一つとっても、雇用保険のことを考えたら給与はボーナス制じゃないほうが良いとか、従業員の資産形成の為に良質な投資信託を扱ってる金融機関で企業型DCをやろうとか、知識があるとそういう判断ができるわけです。社員のお金の課題によりプラスになる雇用形態を作れると。

お金にからんで特に今年影響を受けた本をあげるとすればこの2冊。

実践した効果あってか会社として利益率が向上し、エンジニア給与に還元で来期もベースアップ(昇給)します。会社の為に働いてくれる以上はインフレ率より高い昇給は死守し続けたい、そんな捉え方ができるようになりました。

働き方を突き詰めればお金に繋がり、お金を勉強すれば働き方・雇い方に繋がる。

経営者こそお金の勉強をすると良いなぁと実感しています。従業員に給与明細や源泉徴収票の見方をきちんと説明できるでしょうか?お金の知識があるからできる経営判断が沢山ある気がするんですよね。僕はまだまだ知識が足りないので、来年も今年同様にお金の勉強をしていきたいと思います。

 

ということで2019年、せわしなく過ぎていきました。色々ありましたが総じて楽しい一年でした。来年もどうぞ宜しくお願いします。


2019.07.07 (Sun)

早いもので創業から丸13年が経ちました。14年目に突入です。いつも弊社を支えて下さっている、お客様・パートナーの皆さん、そしてスタッフに御礼申し上げます。ありがとうございます。

20190708182424_chirukoro
(ここ数年、創業日に必ず行くお店 チルコロ の激ウマ名物コーンかき揚げ)

創業の日や年末など節目の時は毎度、「来年の今頃はどうしてるだろう?」とふと考えます。予想外な展開が1つや2つはあるもので、だからこそ面白いのですが、ウチにとっての13年目予想外トピックは事務所の引っ越しでした。

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(オフィスDISYで床はOAフロアにして、壁紙は市販のものを貼った)

リモートワーク主体に切り替えてみたら「事務所いらなくね?」となって即断即決。趣味のDIYで床をOAフロアにしたのは楽しかったです。OAフロアの作り方をいつかブログに書きたいですね。

引っ越しのきっかけとなったリモートの日は増えるばかりで、今や出社して貰う日は月に5,6回程度です。打合せもビデオ会議メイン、来社頂いても近くのカフェかレンタル会議室。オンラインとシェアリングのフル活用で、13年目は働き方が随分変わりました。

生産性も下がっておらず、固定費は下がって、その分で昇給もできて、更に従業員のプライベートな時間も増える。良いこと尽くしな状態です。

 

20190708182904_espararchitecture

一方、事業的な変化は特にありません。

相変わらず WordPressサイトの静的化サービスespar に注力しています。最近ではコンセプトに共感頂ける方が増えているのか、Web業界で認知度が少しずつ広がっている気がしますね。

そんな状況を追い風にして、14年目はセールス面を強化しようかと。

また、いよいよエンジニアリング体制の強化も図ろうと考えてます。事業の手応えは日増しに感じてまして、中長期的には人手が足りなくなるのは明白な感じなんですよね。

今のウチの技術的キーワードは、AWS, Ansible, OpenResty, LUA, DevOps, ChatOps, Golang, JS, Scraping, PerfomanceTuning, WordPress とかとかですが、、この界隈の個人事業主の方や一人株式会社のエンジニアさんとか、御興味ありましたら一度お話しましょう。

14年目は積極的に人に会うとか技術的な発信とか、体制づくりの為の布石を打っていく所存です。

 

という訳で、14年目も宜しくお願い致します。1年後には、きっとまた予想外なことが1つ2つ起こってるでしょうね。変化を楽しみながら邁進してまいります。


2019.04.21 (Sun)

経団連の中西会長が、終身雇用は守れないと思ってると明言したことが話題になっていますね。

20190421103126_keidanren
(4/22(月)によりよい雇用のあり方について説明するのだそう)

そもそも終身雇用なんて幻影だったので素直にそれを認めたのは潔いです。ただこれ、相当インパクトありそうです。企業はもう従業員を守れないと思う…って経済界の代表が白状したのですから。

これまで漠然と、企業は被雇用者を守ってくれる・そして守るべきであるという期待感や暗黙の了解みたいなものがあったと思うんですが、それをスパーンと「無理っすわ!」と言っちゃった。

まぁ、もちろん無理だよねーと皆分かってましたが今回のは会長の公式発言です。意味が全く違う。

影響ははかり知れず、大企業や中堅企業に「もう守れない」を前提とした組織や制度に変化していく力学が生まれるのは避けられません。組合側とはバトルになるんでしょうが、経団連会長が「もう守らなくてもいいよ」と免罪符を出した意味は大きいです。後ろ盾を得たと思ってる経営者もいるんじゃないでしょうか。

 

企業も、国も、守ってくれない

一方、ここんとこ国も「もう守れない」と言い続けてます。さすがに明言こそしてませんが、

  • iDeCoや積立NISAなど資産運用を促す制度の喧伝
  • 年金受給開始の繰り下げ等の年金制度再考
  • リカレント教育だとか人生再設計世代だとかの雇用支援策

等々は明らかに国からの「もう守れない」というメッセージを伝えるものです。

そんな不安も漂いつつある中での今回の終身雇用終焉宣言ですからね。さすがに多くの人が、国も企業ももう守ってくれないんだと認識して、自分の将来は自分で守ろうする意識が今よりもっと広がるのではないでしょうか。

ただ、もう責任持たなくて良いんだ〜と免罪符を得たことでのんきに構えている企業は、早晩採用の苦境に立たされることになります、きっと。

なぜなら終身雇用の問題って結局は従業員に支払うお金の問題に帰着する訳で、終身雇用が終わった今、その象徴たる「生活給と退職金」に代わる何かを従業員に提示しなくちゃいけないからです。

では何があるでしょうか。

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終身雇用の代わりに企業が提示できるもの

一つには「将来キャッシュフローの形成支援」があります。

平たく言えば、従業員にこの会社に勤めたら自分でお金を稼げる・残せるような未来が作れると思って貰える契約関係や待遇のことですね。従業員の未来のお金づくりを会社が支援するのです。

従業員が自分の事業を作る/育てる支援をしてくれる(副業推奨や残業なしとかはその一環)とか、会社で作った事業を譲渡してくれるとか、フルコミットでなくなった後も事業からの分配金を得られる仕組みがあるとか、プライベートな資産運用や節税を支援/補助してくれるとか…

珍しいですが実際やってる企業はあります。

従業員の副業支援だとサイボウズさんとか有名ですし、資産運用支援では企業型DCを導入してる企業はそうでしょう。共通してるのは、従業員の将来に目を向けているということ。多分、今後はそんな姿勢を発信して制度や取り組みにも表れている企業が選ばれるようになっていくでしょう。

逆に従業員の将来を真剣に考えてない企業は選ばれなくなるでしょう。だって、従業員にしてみれば将来の自分や家族を守る準備ができないってことを意味しますから。

 

高度経済成長期が生んだ終身雇用という幻影が、平成の最後にかき消されました。その意味で経団連会長の発言は僕はとても良かったと思います。むしろ遅かったぐらい。

自分らは逃げ切り世代のくせに…と非難する向きもありますが、逃げ切れてない・逃げ切れそうにない団塊世代が非常に多いことを最近飛び交ってる「老後破産」という言葉が示してますよね。

誰が悪いではなく、労使が共に意識を変える必要があると思います。これからは、被雇用者は自らを守る意識を持ち、企業はそれを支える意識を持つ。そんな関係が理想的な労使関係になっていくのだと思います。

令和という時代が、労使抗争ではなく労使共創の時代になると良いですね。