僕は自分の会社を、就労環境の悪しき先入観をどれだけ打ち破り覆す事が出来るかを示す実験場であると説明する事があります。もちろん仕事ですから命がけで「労働」というものについて試行錯誤しているという意味なのですが。その為、普通はなかなか無い制度が沢山あったりします。

経営者である僕は、組織(内部)論的観点では「優秀な人財と最高の環境こそが冨の生産を最大化する」という持論をもっています。それを自らの組織で実験している感じ。100%成功しているとは言えませんが、

  • 4年間でiOSアプリ開発を全て内製で80個以上リリースした実績(エンジニアは4人)
  • 完全独立系の会社にしては珍しい多数の大手企業様との直接取引
  • 100社以上の企業様で業務インフラとして使用されているSYNCNELの実績

等々は生産効率が決して低くない事の証左であるという自負を持っています。

もちろん、デザイン面ではいつもお馴染みのメタ・グラマーさんにお世話になっていたり、SYNCNELの販売においては販売代理店様の御協力もあったりするのですが、そのようなパートナー企業様とガッツリ合う歯車に足る馬力を開発という面で持っているつもりで、どこにも負けない自信があります。

それが実現出来てるのは、開発という実務的な面では git + redmine で全てをチケットドリブンにしているからこそでもあるのですが、実のところ開発体制や開発環境だけではなく、待遇や制度といった就労環境面を「働きやすさ」という観点で綿密に整備しているからってのもある…と思ってます。

Empty © 2012 Irene Mei, Flickr

ライフ・ワークバランスを保つ為の休暇制度や残業禁止原則は、どんな労働も家族があってこそと考えているから。家族の状態は顕著に仕事に現れます。恒常化した残業は家庭の崩壊の兆しを生み、場合によっては実際に崩壊し、そんな中での労働は絶対にパフォーマンスが上がる訳がありません。有事の時に休み難い環境は家族や親族の軋轢を生むかも知れません。

そんな事では、何の為の家族か分からないし、何の為の仕事か分からない。家族を養う為に、生きていく為に、仕事をしているのに、それが原因で家族がおかしくなって、その結果仕事のパフォーマンスが落ちる。歴然とした負のスパイラル。社会全体としては間違い無く不幸せです。

1時間の通勤時間をかけてたとしても19時台には家に着き家族と一緒に食事が出来る。子供が急に熱を出した!休みたいでも休めない…ではなくTwitterのDMで一報入れるだけで休んで看病が出来る。そういう環境でなくてどうして集中できるんでしょう。母艦がふらついてては戦闘機も戦場で本領発揮出来ないように、家族に不安が蔓延れば仕事のパフォーマンスは絶対に下がります。僕の実家(とまた更に親の実家)は本当に色んな黒歴史があって、色んな事が家族を崩壊させる事を知っているから、その一つの原因たる仕事の在り方も考えて考えて考えて制度化しています。

副業推奨は新しい働き方を模索する土台は持っておいて貰いたいから。一生の生活給を保証してくれる訳ではない名ばかりの終身雇用制度に安寧する行き方は既に時代遅れで、自らが稼ぐ力を持って複数の収益源を得るのが当たり前になるのはサルでも想像がつく…そんな時代の流れに僕らは身を置いているからです。公務員ですら安泰ではありません。橋下市長のような人物が納税者から一定の評価を得て公務員にナタを振り下ろす様は公的身分である事が何の安心の担保にもならないという証左です。だから、副業が出来る環境かどうかは先々の複数収入源の可能性の有無となり、それが有であるのなら家族も安心、僕はそう思って推奨しています。

Farm table © 2011 Thomas Quine, Flickr

随分と前置きが長くなったので今日のエントリはここまでで良いんじゃないかという話もありますが(笑)、続けます。

前述の通り「優秀な人財と最高の環境こそが冨の生産を最大化する」という持論に則った実験は高パフォーマンスを弾き出している事からして各種の制度をもって成功していると言えなくもないのですが、創業当初からずっと考えていて挑戦してみたいと思ってたのが今日のタイトル「給料は毎月UP出来るのか」という問いかけ。

これも今、実験していますが、最近、実は可能であるという事が分かってきました。

裁量労働制や成果報酬型といった労務用語は得てして労働力を搾取する口実に使われる事が多く、実際に自分もそういう環境に身を置いていた事があるからでもありますが、本当の成果報酬って一体なんやねんと考える訳ですよね、騙し騙され…ばかりだと。考えに考えた結果行き着いたのは、「人事評価という抽象的な評価が数値的な給料を定める」制度ではなく、「プロジェクト単位の数値的な指標が数値的な給与を定める」という制度でないと本当の成果報酬にはならないという事。

労使関係で数値化している例って余り聞かないんですが、要は「粗利の○%が給与に上乗せされる」という制度です。ウチはこれを採用してますが、最近面白い事が起こり始めてます。単発の受託案件は報酬も単発です。しかし、SYNCNELのような継続的なストック型ビジネスの場合、報酬もまた継続的なんですよね。例えばサービスで毎月100万の利益が出れば仮に1%なら1万円の報酬が持続するんです。御客様が解約されない限り。

そして弊社サービスの一つである SYNCNEL は一度導入して頂くとその利便性からずっと使って頂ける傾向にありますので、スマートデバイスにおけるファイル共有という市場が拡大する限りに置いては利益は積み上がるばかりなのです。だから掛け算した結果の報酬も積み上がるばかり。その結果、毎月、昇給するという現象が実際に起きています。もちろん毎月何万も昇給という事にはなってません(そこまでさすがに稼いでいません(笑))が、SYNCNELのユーザが増加傾向を顕著に示しているこの半年間、毎月昇給していると同義な状態なのは事実です。

その結果、何が起こるか。

開発のモチベーションは上がり、製品は更に進化して、もっともっと売れていき、会社の利益は積み上がり、担当者の給与もまたドンドン上がっていく….事になるでしょう。非常に良いスパイラル。まだまだ僕が期待する程までにそのスパイラルの上昇具合は至っていませんが、その傾向が見られていて、実験が決して失敗ではなかったと言える状況にまでなりつつあります。

お金は力です。

資本主義社会である以上、どんなに綺麗事を並べても「全てにおいて例外なくよりbetterな人生の選択肢をもたらす」という事実がある。これを論破出来る人は皆無でしょう。だから、僕はスタッフ然りパートナー会社様然り、関わって頂いた方々に金銭的プラスが継続してもたらされる事にもこだわりたいと思っています。(SYNCNELは販売代理店様にも継続的にマージンが入る仕掛けになっていて、一度販売して頂くと次々と追加ライセンスの申込が発生し易いようになっていたりもします)

真の成果報酬制度と収益を見込めるストック型ビジネスがあれば、毎月昇給する会社は作れます。

t e e t i m e © 2012 Rich Shallcross, Flickr

冨とは何か。

それは人それぞれだと思いますが、1000人にそれを問うてみても、その本質を突き詰めて言葉を抽象化して上位概念を辿っていけば、普遍的な家族(仲間)とお金に辿り着く。その両方がプラスのスパイラルで底支えされている時、人は冨を得ていると感じるに違いない。これが持論。そして、それをより高い次元で具現化し続ける事が出来るのか…..、まだまだ完成形には至っていませんし、思い通りに行かない事もあるし、腑に落ちず怒りに満ちる事もあるけど、そんな実験をフィードテイラーという会社で僕はやってます。

僕がスタッフと同じように会社の仕事と接する事が出来るようになった時、僕の作品の一つでもあるフィードテイラーという会社は節目を迎えます。それまでの間はしわ寄せが社長である僕に押し寄せて、結果ウチの奥さんにも押し寄せるという構図が続くのでしょう。完成形を迎えるのが先か、しわ寄せが限界に至るのが先か、ある意味、僕は持論の実証実験を家族より優先しているかに見えたりもする昨今ですが何が何でも完成形の到達を先に手にする気概でいます。

どエラく長いエントリになりましたが、日々そんな事を考えながら制度作りや経営をやってますという事で。そんな会社と僕ですが、今後とも宜しくお願い致します。