2017.01.01 (Sun)

新年あけましておめでとう御座います。

正月はいつも通りの早朝起きで神社参拝。前日の大晦日はカウントダウンもせず就寝してましたので、いつも何も変わらない年越しとなりました。

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(いつもの明朝と違い、人が多い正月の大阪天満宮。年一じゃなくて参拝は毎日が良いよ〜と毎年思う)

新しい事業を育てる年

2016年の振り返り のエントリに書いた通りなのですが、昨年が新しい事を模索する年だったとすれば、今年はそれらを育てる年になります。Webサイトの静的化(WP Guard)やEnterprise iOS(MICSS)の話などですね。

その他にも、そういえば先日のエントリでは言及できてなかった、チャットボット(昨年春にLINE Botを作ってた)の話や、各種の講演や執筆活動とか。

前者についてはビジネスとしてお話を頂いてたり、後者については早速1つ講演も決まってたりと、それぞれ方向性が見えてきた気がするので併せて取り組んでいきます。

社会的課題への関心

あと事業とは直接関係ないですが、社会的課題についてもキャッチアップとアウトプットを続けていくつもりです。特に雇用問題と教育問題。

前者は特にそうですね。まぁ自分も雇用者として色々と経験してますし、LIFE SHIFTWORK SHIFT に描かれる将来の仕事像、昨年末に政府が副業容認を促すなど、諸々考え合わせるとそもそも雇用という概念に疑念を持ち始めてます。ハフィントンポストへの投稿も再開したいなと。

あと、昨年読んだ書籍子供の貧困が日本を滅ぼすは、貧困による子供の教育格差問題を自分の大きな関心事とするに十分でした。ウチは子供いませんが、何か自分にできることでアクション起こしていきたいと思うのです。

 

という訳で、総じてドタバタしそうなことは変わりなさそうですが、2017年も邁進してまいります。皆様にとっても良い1年になりますように。本年どうぞ宜しくお願い申し上げます。


2016.12.29 (Thu)

2016年も残すところあと3日。弊社は昨日が最終営業日でした。他社はどこも電気が消えている静かなフロアで、まったりとこの1年間を振り返っています。毎年何か大きな変化をしていますが、創業から丸10年となった今年は特に大きな節目でしたね。

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SYNCNELの事業譲渡

2016年2月1日に富士ソフト様に事業譲渡を発表しました。詳しい経緯は同日に書いたSYNCNELを事業売却し、開発部門を解散しますのエントリを御覧頂ければと思います。ホント大決断でした。

当初の予定通り今でもSYNCNELには関わり続けています。事業は富士ソフトさんによって継続されていますので、その御支援的な立ち位置ですね。譲渡後1年を節目に…なんてことも言われますが、離れる予定もなく今後も関わり続けさせて頂く予定です。

B2Bの自社商品を作って、名だたる企業様に御利用頂くまで成長させて、それを事業売却するという機会をくれた良い思い出のサービスです。B2B分野で自社商品を作りたい思いが今も無くならないのは、SYNCNELでB2Bビジネスの面白さを感じてしまったからですね、きっと。

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(Thanks! the photo on flickr by Thomas Mathie CC BY-NC-ND 2.0)

技術顧問や事業御支援

ヴァル研究所様ハートオーガナイゼーション様をはじめ、まだこのブログでは書けていなかったりしますが幾つかの会社様からお声掛けを頂きました。日頃お世話になっている皆々様に改めて御礼申し上げます。

関わり度合いは色々なのですが、モノ作りにガッツリ関与させて頂いたり、取引先をご紹介したり、アライアンスのお手伝いをしたり、エンジニアを御紹介したり、経営者の方の雑談役・相談役のような感じで第三者的意見をお伝えしたり、営業代行や顧客サポートをさせて頂いたり、プリセールスをさせて頂いたり、技術的知見をご提供したり、ヘッドハンティングしたり、….ホント色んなことをさせて頂きました。

決して何でも屋としてタスクを細切れに作業請けするという事ではなく、その会社の中の人であるかのような思考/視点で、会社や事業を前進させるにベストなことは何かを考え、敢えてタスクは限定せず成すべきを成す、そんな立ち位置でしょうか。名刺を持たせて頂く意味はそこにありますし、平気で「それは辞めたほうが良いです」とウチに金銭的プラスになる事であっても具申するのが弊社の個性だと思います。

そんな関わり方に楽しさを感じた1年でもありました。大変有り難いことに、また別の会社様からも打診を頂いておりまして、来年は今年以上に他社様の成長を経営と技術の観点で思考する機会が増えそうな気がします。

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新事業 : MICSS

今年から、iOSの業務活用をご支援する事業を始めました。クラウドサービスを選定して販売したり、デバイスの調達から、周辺機器の調達、メーカーとの調整や必要に応じて部分的な開発など、iOSにまつわる全ての御客様課題を解決する事業です。詳しくはオフィシャルサイトを御覧頂ければと思います。コンセプトは「なるべくアプリは作らない」です。

これもとても楽しいお仕事です。

経験に基づくエンタープライズiOSの知見や情報がアプリ開発のノウハウまで含んだ範囲で多くありますので、御客様がiOSデバイスを業務活用するにあたってのベストな導入・運用・サポートを御提案できるんですよね。

企業の情シス部門がiOS活用を促進する時の相談役みたいな役回りでやらせて貰ってます。相談役として動く人(僕や@t0shiya)が開発者でもあるというのが良いんです。Webアプリなりネイティブアプリなり、作れる知見は本当に強みになるなと。何ができて何が大変かを体感で分かる訳ですし、何を御提案するにも説得力ある説明ができる上に、常に論理的なベスト解を提示できるからです。

これは営業や企画サイドから入るコンサルではなかなか難しい所なので、そういった企業様とチームを組んで御客様をご支援する…なんてこともさせて頂いてます。いわゆる協業ですね。技術的知見に基づくアシストが訴求力や説得力に繋がる訳で、お互いにWin-Winなのです。

余談ながら、ホント最近思うのは、エンジニアは将来のキャリアを考えるなら、「御客様の課題を解決する、または、御客様の課題を解決する人の課題を解決する」ってことを開発視点でできるようになるべきじゃないかなということ。もしフィードテイラーをまた大きくしていくなら、そういったエンジニアが育っていく環境にしてみたいなと思ったりしますね。エンジニアが顧客目線・パートナー目線で的確な提案をできるようになったらホント最強なんです。

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(Thanks! the photo on flickr by [Jon Gosier(https://www.flickr.com/photos/ww4f/) CC BY-NC-ND 2.0)

新事業 WP Guard & espar

全然違う分野ですね。今年から、まさかのWebで新規事業を始めました。

11月に WordPress サイトを静的化するサービスWP Guardを始めました。同時にesparというWebサイト静的化エンジンのライセンス販売も開始しています。詳しくはオフィシャルサイトや発表時のブログエントリを御覧下さい。

つい先日もPHPMailerの脆弱性が見つかりWeb関係者が震撼したところですが、こういうリスクは今後もどんどん増えていく筈です。インシデントが増えていくスピードと、いざ被害にあった時に失うモノの大規模化と、各種案件でのセキュリティ要件の要請気運が、Webサイトを抜本的に安全にする静的化に向かわせるのは間違いないと思ってます。

そんな半歩先の未来に一石を投じるべく、WP Guard と espar を基軸に、来年は Web静的化 も1つのキーワードとして活動していきたいと思ってます。

とこんな感じで、振り返ってみると色々とありましたが、御客様やパートナー様や弊社メンバーなど色んな方々の支え合っての1年でした。1年間ありがとうございました。

本ブログのエントリは本日で最後となります。年賀状は数年前に作るのを辞めてしまいましたので、年始の2017年初エントリをもって御挨拶とさせて頂く予定です。あしからずご了承ください。

来年は本ブログを含めてもっともっとアウトプットしていくつもりです。来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。


2016.12.26 (Mon)

今年は沢山の本を読みましたが、中でも2016年マイベスト本となった LIFE SHIFT には考えさせられました。結構話題にもなってた本ですね。良い本だったので、ちょっとご紹介したいと思います。

正直、辛い内容ではあります。特に、60歳や65歳まで仕事して後は引退するつもりでいる方には、悲壮感と焦燥感しか湧かない本と言えるかも知れません。厳しい現実を突きつけてきて、人生の再設計を促してくる本です。でも敢えてそういう方こそ読むと良いんじゃないかなと感じました。

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(Thanks! the photo on flickr by Taichiro Ueki CC BY-ND 2.0)

寿命が伸びて老後資金が足りなくなる

老後に必要な資金は3000万円とか、1500万円とか、色々諸説あります。家族構成もライフスタイルも人それぞれだし、老後に求めるQoL(Quority of Life : 生活の質)によっても違うので異なって当たり前ですが、本書は その老後資金計画で、そもそも足りますか? という問題提起をしています。

引用されてる「Human Mortality Database」によると、2007年に生まれた日本の子供の平均寿命は107歳になるそうです。日本はただでさえ平均寿命が世界トップクラスで男性80歳、女性86歳なのに、まだまだ平均寿命が伸びるというのです。

当然、今30代や40代の人でも100歳まで生きる確率は徐々に高まっていきます。人生は50年でも60年でも80年でもなく、100年になると。そうすると、

ほとんどの人は、長い引退生活を送るために十分な資金を確保できないのだ。この問題を解決しようと思えば、働く年数を長くするか、少ない老後資金で妥協するかのどちらかだ。(序章 p.20)

ということにならざるを得ません。通常、少ない老後資金で妥協する(生活水準を落とす)のは難しいので、働く年数を長くするという選択しかないでしょう。それができずに苦労されているのが、昨今社会問題視されている老後貧困や老後破綻ですね。

年金も退職金もこれから更に頼れなくなります。所得代替率は低下していくし(年金、年取るほど目減り 現役所得比で40%台に 厚労省が試算)、退職金制度のない企業も増えて退職金額も引き下げられる傾向にありますから。

老後の収益は、(1)公的年金+(2)退職金+(3)自助努力 の3本柱とされるそうですが、長寿命化して老後資金が不足しがちだから(1)(2)で補填してくれる…とは考えにくく、もう(3)しかない訳です。

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(Thanks! the photo on flickr by Duane Storey CC BY-NC-ND 2.0)

働く期間が長くなるなら…..

せいぜい仕事するのは40年間程度と考えていたのが、60年間とか70年間に渡って仕事をすることになります。

好きでもない仕事を60年間続けなくちゃいけないのは苦行でしょうし、逆に、それだけの長期間に渡ると1つのキャリアを貫く仕事人生ではいられない確率も高くなります。時代の変化はますます激しくなって、現役中に幾つもの職業が失われたり新しく生まれたりする…。

だからこそ、自分が本当にやりたいことをよく考えなさいというのが本書の勧め。

その為に、自分をよく知るよう努めること、キャリアチェンジを恐れないこと、その為の勉強の時間を惜しまないこと、新しいスキルを身につけ、積極的に新たな経験を受容すること、評判を確立してそれを巧くアピールし、健康でい続けるようにし、仲間を作ること等々、これらの努力で得られる 無形の資産 もお金と同様に必要であると説き、その重要性を語るのに膨大なページを割いています。

仮想の人物の仮想の人生も描かれているので、未来を想像する助けになると思います。

結局、人生のシフト(LIFE SHIFT)と言っても、仕事のシフト(WORK SHIFT)なんですよね。僕は LIFE SHIFT をそう読み取りました。著者の前著である WORK SHIFT も併せて読むと良いと思います。

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(Thanks! the photo on flickr by Sharada Prasad CS CC BY-NC-ND 2.0)

死ぬまで仕事するしかない時代へ

少し LIFE SHIFT から脱線しますが、実はとある書籍との出会いで、LIFE SHIFT の寿命に関する考察は甘いのではないかと思い至りました。そのことを最後に少し書いてみようと思います。たまたま手に取ったこちらの書籍。

読んでみて驚いたのですが、分子生物学が今、もの凄いことになっているらしいのです。100歳寿命なんてまだ可愛いもんで、500歳まで生きるなんて話まで出てきてます。

デザイナーベビー(遺伝子操作された赤ちゃん。生まれる前から病気を治せる)の誕生や、骨を折れにくくしたり肥満体質を改善する遺伝子操作、容姿や身長を遺伝操作しうる可能性の示唆、がん・ダウン症・パーキンソン病といった困難な病を遺伝子操作で改善する話などなど。

人の寿命が今まで以上のスピードで伸びるようになるであろう技術が紹介されています。クリスパーというそうで、テキストエディタで編集するように遺伝子操作できるとは著者の表現ですが、もはやSFがもうSFじゃなくなってしまう勢い。期待というより怖さを感じます。

人は神の域に近づこうとしているなと。

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(Thanks! the photo on flickr by MIKI Yoshihito CC BY 2.0)

倫理の問題、法の問題、色々あるけど、寿命は凄い勢いで伸び続けるに違いなくて、もう 老後に備えてどれだけ貯めておくべきかの議論なんて意味をなさなくなるのでは とこの本を読んで感じました。

寿命を推定し、引退年齢を(科学の急速な進化を無視して)決めて、その先は現金資産を切り崩して生きていく人生設計をしていても、いざその歳になった頃に平均寿命が更に10年伸びてました…となっていたら目も当てられませんから。

引退とか老後の安心は、限られた人の特権になっていくのでしょう。僕らは働くのをやめない時代に突入しようとしてるんだと思います。個人的には仕事好きなので、元々そのつもりではあるのですが。

一方で、いつまで生きるか生きてみないと分からない、だから老後の計画が実質立てれない、ということならいつまで生きるか先に決めてしまおう…と、いつ死ぬかを決めてから逆算の人生設計をする時代になる可能性だってあるかもとも思いました。

随分長々と書いてしまいましたが、LIFE SHIFT、自分の人生について再考するきっかけになる良い本です。併せて、更に考え込むことになる ゲノム編集とは何か も是非。いずれもコレという打開策が提示されてる訳じゃないのですけど。でも、旧来型人生設計では破綻する未来を恐れず直視して、今のうちに色々考える機会を沢山持って早めの行動を起こすほうが遥かに良い、と意識を新たにさせてくれる本でした。


2016.12.12 (Mon)

最近本を読みまくってますが、たまにはアウトプットしないとねということで久しぶりのレビュー。

本屋巡りをしていてたまたま見つけた本です。買う気も無かったし、そもそも存在すら知らなかったんですが、ふと目に入って目次を見たところ何となく今読むべし!と感じて購入。いぁこれはホントに良書でした。こういうことがあるので本屋をぶらつくのが好きなんですよね〜。

企業の最重要KPI

本書が問いかけるのは「企業が最も重視すべきKPIは?」ってこと。もしこの問いに対する解に「市場シェア」「売上」「販売数量」「契約数」が来る方は、この本から沢山の発見と気付きが得られるのではないかと。(僕もそんな一人)

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(Thanks! the photo on flickr by Bart Bernardes CC BY-NC-ND 2.0)

著者は、一貫して企業は何よりもまず利益重視であるべき と主張しています。利益は他の企業目標を超越した指標であって、

年度末に「あるといいもの」や「嬉しい驚き」として利益を扱っている場合ではないのだ

と手厳しい。なぜなら、

利益は生き残りの条件であり(中略)ビジネスを続けるためのコストである

から。当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。利益が大事なのは皆頭ではわかってますから。

ただ、多くの企業で実際のところは営業や経営者が「利益」を軸に考えれてないと指摘しています。優劣を売上規模で判断する風潮は依然としてあって、事業計画や実績評価を売上や販売数や市場シェアを指標にしがちだと。

だから、「20%の値引きをした商品で元と同じ利益水準を保つ為に必要な販売数増は?」なんて基本的な問題にも、「20%増です」という間違った解答をする人が多いのだそうで。そんな訳ねーよ、利益のこと考えてるのか?分かってねーなと著者。ま、そんな乱暴な言い方ではないですが。

利益を第一義におくとはどういうことか。

利益は売上とコストの双方を同時に考えられる唯一の指標であり、従って プライシング こそが最も重要であるというのが著者の主張。売上を上げるのも重要だし、原価下げるのも重要だけど、価格の付け方次第で利益を今まで以上に確保できるんですが著者のスタンスです。

価格付け以外になにもしていないのに利益が上がったという事例はマジックのよう。著者にしてみればマジックじゃないのでしょうが。だから、もっと考えろ、と言わんばかりにページをめくれどめくれど価格、価格、価格の話。目次を見るだけで著者の情熱を感じることができます。

  • 第1章 痛烈な洗礼を受けた私の価格体験
  • 第2章 価格を中心にすべてはまわる
  • 第3章 プライシングの心理学
  • 第4章 価格ポジショニング
  • 第5章 価格は重要な利益ドライバーである
  • 第6章 価格決定における見当ポイント
  • 第7章 価格差異化という高度なアート
  • 第8章 プライシングのイノベーション
  • 第9章 経済危機への対応と価格競争
  • 第10章 プライシングはCEOが取り組むべき仕事である

…ホントに最初から最後まで価格のことしか書いてない(笑) 文字通り価格に始まり価格に終わります。価格をテーマにこんなに文章が書けるのかという驚きからくる興味が本書を購入した最大の動機ですが、読んでみて腑に落ちました。

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(Thanks! the photo on flickr by saaby CC BY-SA 2.0)

価格学

「学」というと言い過ぎかも知れませんが、価格をテーマにありとあらゆることが書かれている印象です。価格を付ける根拠に何を持ってくるのかのパターンや事例(第5章)、価格体系をどう定めるべきかそのパターンや事例(第7章)、価格の付け方にもイノベーションがあること(第8章)、などなど。

イノベーションを取り上げた第8章は特に興味深いです。航空機のエンジンを売るGE社がもはやエンジンに値付けをしていない事例は、プライシングが時代と共に進化することを感じさせます。GE社が何に価格付けをしているかは是非本書で見てみて下さい。クラウド系ビジネスの人なら慣れてる思考ですが、ビックリしますよ。B2Bでももうそんな時代なんだ…と。

第7章で価格付けのことをアートと表現しているのも、本書中の数ある事例から納得できます。価格が1種類じゃないことと利益最大化の関係の論理的な説明は、なるほどなと。価格付けとは何と奥深いのでしょうか。

本書を読み終えたから適正価格が分かる訳ではありません。「掟」を手にしたところで、それが今自分が直面している価格付けの課題にピッタリな答えを示してくれる訳でもないでしょう。事例や市場によって事情は異なりますから。ゆえに価格は本当に難しく、本書がただ悩む要素を増やすだけという可能性はあります。僕も実際、価格付けが怖くなりました。

が、価格について思考する・試行するのに役立つ気づきや発見が何かしらある本です。なんせ、10章全部、約300ページに渡って価格のことしか書いてないんですから。いみじくも今日、大塚家具が苦境に立たされていることがニュースになってました。

大塚家具の業績はなぜこれほどまでに落ち込んだのか。大きな理由は二つある。一つは中途半端な価格戦略だ。

価格の設定を誤った例ですね。現預金の減り方が半端ない。価格が大事というのはこういうことなのでしょう。久美子社長も本書を読んでたら多分こうはならなかったかも知れないなぁと感じました。

という訳で、価格コンサルティング会社CEOが記した書籍、価格の掟。事業に責任を持つベンチャー企業の社長にも、新しく事業を起こすマネージャの方にとっても示唆に富む一書のご紹介でした。


2016.12.10 (Sat)

11月の記録です。

スマホ見るなら本を読め が最近の己の行動指針。スマホでの読書は?という話もあるのですが僕は紙の本派です。KindleとかiBooksとかも使うんですが電子は原則マンガのみ。スマホやタブレットだと他のアプリを触ってしまうんですよね〜。弱いんです、誘惑に(苦笑)

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(Thanks! the photo on flickr by Sam Greenhalgh CC BY 2.0)

ここ5ヶ月の履歴は

  • 2016年6月 : 6冊
  • 2016年7月 : 10冊
  • 2016年8月 : 13冊 + 1冊(AudioBook)
  • 2016年9月 : 7冊 + 1冊(AudioBook)
  • 2016年10月 : 7冊

こんな感じでした。やっぱ根っからの本好きなのですよねぇ。さて、そんなこんなで今月読んだ本は…

 

ビジネス書

 

小説

9冊とAudioBook1冊で10冊。

まとめ買いしていた、高田郁さんの「みをつくし料理帖」を読みだしたら止まらなくなりました。とってもいい作品。ビジネス視点の気付きもところどころあるのでこれは改めてレビュー書こうと思います。

今月一番印象に残ったのは子どもの貧困の実情が記されたこの本ですね。

読了後の感想を一言で書くなら「まじかよ」です。どこか他人事のように捉えられがちな貧困問題。中でも子供の貧困が如何に将来の日本を蝕んでいくのか、貧困対策とは回収の容易な未来への投資であるという視点で書かれた衝撃的なレポートです。

ご多分にもれず自分も、身近に触れる機会がないことを理由に他人事のように捉えていたことを反省しました。個人としても法人としても、何か行動を起こしたいと強く思った次第です。毎年NPO団体に寄付するとか、普通にできそうなこと。読了後はもちろん今も時々「子供 貧困 NPO」でググってますが、惜しむらくは情報が少ない(ように見える)ことです。

米国のように、寄付の節税効果が高くなる税制なら良いのになと思います。NPOの情報発信密度が高ければ寄付も集まり易くなる筈だし、自然とNPOが解決を図る社会問題の露出度も高まると思うんですよね。ま、無いものねだりでは何も行動できないので、できることからやっていきます。

11月も良い本や作家さんに巡り会えたことに感謝。


2016.12.02 (Fri)

12月に10月のことを書くという…(苦笑)、何だか2ヶ月遅れになってますが自分メモ的に。

さて、スマホ見るなら本を読め と、すきま時間に何かと本を手にとることが多い昨今です。あと毎日朝に10分は読書時間を確保。この2つを徹底するだけで仮に忙しい日々であっても結構読書できるもんだなと改めて思っとります。

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(Thanks! the photo on flickr by Pietro Zuco CC BY-SA 2.0)

すきま読書習慣を6月からはじめてますが、

  • 2016年6月 : 6冊
  • 2016年7月 : 10冊
  • 2016年8月 : 13冊 + 1冊(AudioBook)
  • 2016年9月 : 7冊 ; 1冊(AudioBook)

と読書量はこんな感じで推移。まぁ冊数がどうこうって余り意味ないのかもですが。どちらかというと読んだ上でアウトプットした量のほうが大事だろう、と思いながらも全然アウトプットできてません(T_T) 今後の課題です。

さて、10月はこんな感じになりました。主にシリーズものでまとまりました。

 

ビジネス書

 

小説

 

10月も7冊でした。

村上海賊の娘は単行本で出た時に気になっていたのですが、ようやく文庫化されたということでまとめ買い。噂通りの面白さでいっきに読み切ってしまいました。

現場のリアルな人間模様を知ることが如何に大切か。生き残る為にも、人の成長の為にも。それは昔も現代も一緒なのだなと読後に思いました。舞台の一つである瀬戸内因島に一度行ってみたいですね。

ビジネス書で一番印象に残ったのは、やはりLIFE SHIFTです。これは必読書かと。仕事や家庭、人生設計が大きく変わろうとしている厳しい現実を分かり易く突きつけてくれました。この本を読んだ・読んでないで人生観が本当に変わると思います。冗談抜きで。

何となく先送りにしがちな老後を悪い想像通りの陰鬱な日々にしてしまうか、長寿を楽しむ人生を作り出すのか。後者を勇気を持って選択する指針となる名著です。ぶっちぎりの2016年マイベスト本。特にお子さんのいる方には、自分の人生というよりもお子さんの将来の為に読んで欲しいと思います。

って色んな人にお勧めしてたら、大阪・東京の勉強会WSx2 の板羽さんの琴線に触れたのか、読書会というか勉強会というかを企画しようということになりました。大阪と東京とどちらでも開催かな?僕も参加予定ですが、読了されてるかたも読みはじめの方も是非に。

 

という訳で10月も良い本に巡り会えたことに感謝したのでした。もちろん、11月も良い本に出会えてますよ。作家の皆さん、編集の方、出版社や書籍流通や本屋さんに多謝。本っていいなぁ。では11月分はまた改めて。


2016.12.01 (Thu)

10月に発表しました、WordPressサイトへの第三者攻撃を無効化するというセキュリティ強化サービス WP Guard でトライアル環境の提供を始めます。

僕らは、WordPressをはじめとする動的CMSを使ったサイト構築に一石を投じたいと思っています。

その一石とは、サイト公開の在り方。公開用サーバを別途用意して、CMS部分(プログラムやDB)をオープンなネットの世界から隔離。CMS側で静的化したページ群を公開サーバに都度転送するという考え方のこと。

大半を占める情報発信系サイトにおいては、このアーキテクチャに勝るセキュリティ施策はありません。(超)高額な法人向けソリューションに同様のものがありますが、小中規模のサイトでも同じことができたほうがいいに決まってます。

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WP Guard の仕組みは絵として描くとこんな感じで、前述のコンセプトをWordPress環境で手軽に実現できるようになっています。

そんなWP Guardですが、発表当初にはオフィシャルサイトを立ち上げただけで、サイト記載の内容が御客様にお伝えするモノの全てでした。ただ、やはり…

 

自由に触って頂く環境があったほうがいい

静的化という行為や、公開サーバが分離されているという仕掛け、いずれもなかなか想像しにくいのが正直なところです。

そこで少しでも WP Guard の世界観を体験して頂くべく、WordPressサーバと公開サーバのセットをトライアル環境としてご提供を開始することにしました。(上図参照)

WP Guardサイトの専用フォームから申し込んで頂いた皆様にトライアル環境をご用意致します。トライアル環境の有効期間は、申し込み日の翌月末実まで。(例えば12月5日にお申込み頂くと翌1月末まで)

勿論、WordPressサーバには、WP Guard のプラグインをインストール済みで、公開サーバとの連携も設定済みの環境になってます。

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(トライアル環境のWordPress画面。トライアル環境の使い方エントリも予め投稿されている)

WordPressは最新版のv4.6.1(随時追随予定)。管理アカウントもご提供しますので、記事や固定ページを追加したり、テーマを変更したり、プラグインをインストールしたりと管理画面から自由に操作して頂ける、申込者様ごとの個別環境となります。

仕組み的にはもう、WordPressのホスティングサービス始めました…に近いかもですね :-)

という感じで2台のサーバをご用意。この例で言うとURLの demo001 の部分の文字列をお申込時に指定して頂きます。

この2台のサーバで、後者のWordPress側をどれだけ触っても前者が全く影響しないこと、さらに後者の管理画面から「反映」ボタンを押してはじめて 静的化公開サーバへの反映 が行われること、この一連の動きを見て頂けます。

また、申込時に御要望として書いて頂ければ、WordPressサーバ側に認証をかけて、固定IPからしかアクセスできないようにすることも可能です。

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(Thanks! the photo on flickr by John Seb Barber CC BY-SA 2.0)

公開サーバを別にするメリット

実は、公開サーバを別立てにすると、安全度が高まる以外にもメリットがあります。

公開サーバが別なので、CMS側をどれだけ適当にいじっても、そして万が一壊れるようなことがあったとしても、公開サイトには全く影響がないのです。これは、 サイト閲覧不可時間をほぼゼロにできる ことを意味します。

WordPress本体のアップデートや、テーマ変更とかプラグイン更新とか、変更する時って普通は相当怖いですよね。いきなりサイトが見れなくなったりしますから。でも、公開用サーバ分離型の構成ならそういう心配はありません。公開サーバに静的化されたページ群が存在していますから。安心してWordPress側をいじることができるというわけです。

よくよく考えてみれば、ECサイトや会員サイトでない限り、情報発信用サイトの為にCMSをそのままインターネットに晒す理由は余りないのですよね。

弊社では、早晩、静的化を前提とするWeb構築が普通になるとみています。前述の通り、既に高価格帯の企業向けCMSではその兆候が随分前からありますし。でも高額過ぎてとても手が届かない層があります。

技術的な核心は凄まじく、静的化技術の進歩やインフラ低価格化の進行は、中堅・小規模サイトでも公開サーバ分離型構築を当たり前のものとする推進力になるのかも知れません。

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仮想化の最新テクノロジを駆使

最後にちょっと技術的な話を。

今回のトライアル環境基盤の構築にあたり、今トレンドのDockerコンテナと、それを管理するAWS ECSを使っています。

トライアル環境を作ろうと思うと、サーバ立てて、WordPress環境を作って、初期設定して、プラグインも入れて、公開サーバも立てて設定して、2台のサーバの連携も設定して…と一連の作業が必要ですが、これを全部手作業でやっていたら日が暮れてしまいます。

この一連の作業をワンステップで高速実行できるようにし、しかも有期限で当該サーバをカンタンに(言葉は悪いですが)捨てられるという軽さも欲しい、そんな動機でDockerコンテナ技術を採用しました。

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この構築に少し時間がかかり、トライアル環境のご提供がリリース時から少しずれました。ただ、時間かけて作ったおかげで、上記のトライアル環境の構築は社内でボタンを1つポンッと押すだけでできるようになってます。(ビジネス的な面から2営業日頂くことにしてますが)

担当した @t0shiya はすっかり Docker の魅力に魅せられたようです。で、サーバ維持費が気になる経営者としても、ECSはよくできてると感じますね。コンテナ基盤のエンジンとしてEC2を増強していくだけでいいというのが何とも素敵。個別にEC2でサーバを立てていくよりもリソースの無駄遣いが発生しにくいと思います。

 

という訳で、WordPressサイトを静的化する WP Guard のトライアル環境ご提供開始のお知らせでした。法人様じゃなくても全然結構です。ブロガーさんはじめ個人の方でもお気軽にお申込み頂ければと思います。

トライアルお申込みのページからお気軽にどうぞっ!

また、WordPressに限らずWebサイトの静的化に興味がおありでしたらお気軽にお問い合わせ下さい。


2016.11.29 (Tue)

9月のことを11月に書くという…(苦笑)

完全に自分メモなのですが9月に読んだ本もちゃんと書いておこうと。今まで以上に本を読むようになった6月から、

  • 2016年6月 : 6冊
  • 2016年7月 : 10冊
  • 2016年8月 : 13冊 + 1冊(AudioBook)

こんな感じで読書量が推移してきてます。

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(Thanks! the photo on flickr by Hernán Piñera CC BY-SA 2.0)

9月も変わらず、移動中などの隙間時間では「スマフォ持つより本を読め」を行動指針にしてきました。そんなこんなで2ヶ月前ですが読んだ本。

 

ビジネス書

 

小説

 

9月は7冊+1冊。池上さんの新書がAudioBook1冊を含めて8冊。10冊以上が2ヶ月続いていたことを思うと7冊は少ないなぁと思いますね。昔に比べると多くはなっている訳ですが。ビジネス書は少なめでした。

ビジネス書で一番良かったのは、一流の育て方。いわゆる子育て本なのですが、経営における従業員への接し方というか人のマネジメントにも役立つだろうということで購入したもの。全部が全部ではないですが、従業員を抱えることと子供を持つことは似てるという持論の裏付けが讃えられました。つまり、子育てにおけるtipsは従業員に成長して貰う為のtipsにも通ずるということ。まぁ子供いないし作るつもりもないので僕が言っても説得力ないですが。

この本は、もうすぐ2歳になる女の子がいてるご夫婦にお貸ししたところ「凄い本を貸して貰った!」と大絶賛だったので、「育てる」という使命を背負った方々には良書なのだと思います。子育てには無縁な自分視点でも、子供が生まれる前の両親に税金使って配布したら良いと思うと感じる程でした。

小説は、あきない世傳金と銀が今月のベスト。というか、高田郁さんという作家を知れたのが何より良かったです。本屋でぶらっとしている時に見つけた本ですが、新し本や作家との縁が得られるのも本屋徘徊の面白いところです。


2016.11.03 (Thu)

働き方改革の議論が盛んです。

新聞の社説に言及があったり、ネットの媒体やブログで規制が訴えられていたり、署名運動も行われていたりするようです。政府もかつてなく積極的に取り組む姿勢を見せていて、規制強化に動きそうな気配もあります。

…が、創業から10年ひたすら「働き易い企業とは何か、従業員の幸せとは何か」を自社を実験場にして様々な取り組みをやってきた自分的には、例え長時間労働規制が強化されたとしても実効性ゼロだろうなぁと思わざるを得ないのです。(ウチが7,8年前からやってる独自の働き方改革については、こちらをどうぞ)

規制なんて意味ないと思う理由は2つ。

  1. 労働基準法の違反行為を正当化する「解釈」や「曲解」が横行していること
  2. 長時間労働と無縁な就労環境を作った自分の動機は法規制にはなかったこと

長時間労働問題は「臭いものにはフタをしろ!」的な発想では解決できない、もっと根が深い問題だと思いますがどうでしょうか。色々と思うところありますが、上記2点の理由を含めて以下、長時間労働規制に意味が無いと思える理由について書いてみようと思います。

 

過労死白書にみる長時間労働と自殺者数の相関

法規制で長時間労働が無くなるなら、どうして罰則付きの労働基準法(以下、労基法)がこれまで守られず、労働者が自ら命を絶つ事件が何年も何年も続いているのでしょうか。法規制でどうにかなるなら、過労自殺なんてとっくに無くなってる筈です。

今年、過労死白書が出ましたが、「1. 労働時間等の状況」の節にある第1-6図を見ると、長時間労働者の割合が減少傾向にあることが分かります。

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(平成28年版 過労死等防止対策白書 から引用)

また、「4.自殺の状況」の節にある第4-2図を見ると全体の自殺者数が減少傾向にあるのも分かります。

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(平成28年版 過労死等防止対策白書 第4-2図を引用)

つまり、長時間労働をしている人の割合が減るのにあわせて自殺者数も減っていってる ように確かに見える。減ったら減る、増えたら増える。そんな正の相関があるのだから、長時間労働を規制したら過労自殺も減るんだよ!というのは分かり易い発想です。が、果たしてそうでしょうか。

数値化された情報だけを材料に過労問題を論じたり政策を決めるのは危険ではないか。なぜなら、自殺者数統計とは違って労働時間の統計には「虚偽」があるからです。今回の電通の例でも過少申告の疑いが持たれていますし。

会社が偽る、もとい、労働者に偽らせる事がまかり通っている現場に、労働時間上限の強化を通達したところで、一体何の意味があるのでしょうか。

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法規制は長時間労働を防いでこれなかった

労基法は制定された頃から労働者を守る為の法律でした。すなわち雇用者たる会社が厳守すべき規制集であり、その本質は労働者の長時間労働回避にあった筈です。でも、実のところ実効性ゼロなんです…ということを今回の事件も改めて証明したと言っても過言ではないでしょう。

事件を起こした電通は、1991年にも全く同じことをやらかしてます。いわゆる電通事件。今回の女性の悲しい事件がビックリするぐらい類似していますね。トレース台を用意して上からなぞったかのよう。同じ企業が全く同じように、学習もせずまた人を殺してしまったのです。なぜ同じ過ちを繰り返してしまうのか。

それは、法規制が緩かったから…ではないですよね。

規制の厳しさが足りないことが問題なのではなく、悪意ある雇用者が都合よく「解釈」することを防いでない ということが一番の問題じゃないですかね。人を雇用する重責に対する意識の低さを許容しちゃってるというか。だから、ルールがあっても守れない。好き勝手に解釈する。飲酒運転をする人間はその怖さと悪を認識できない意識の低い人だってのと一緒だと思うんですよ。

電通の例しかりですが、僕らは労働現場で都合のいい労基法の「解釈」がはびこっている実態を幾つも知っている筈です。労基法は長時間労働の抑止力という意味では機能していると言い難い。

第36条が守られず36協定が形骸化している例は枚挙にいとまが無く言うまでもありません。今回の事件もそう。無論、電通だけじゃなくて、つい先日のBuzzFeedが報じている「朝日新聞社、上司が部下の「労働時間」を短く改ざん 基準内に収めるため」という記事は、それをよく表しています。まぁ、こういうことが平然と行われているところもある訳です。

第41条(労働時間等に関する規程の適用除外)は曲解され、実態は管理監督者でもないのに役職があてがわれて残業代が出ないとか。厚労省が労働基準法における 管理監督者の範囲の適正化のためになんて文書を出してる通り、勝手な解釈が横行してるのです。

第38条の2に定められている裁量労働制は、時間外手当を出さない口実に使われるという例も。僕もかつて在籍した某IT系上場企業で、裁量が全く無い裁量労働制という驚きの環境を経験したことがあります。

他には、定時にタイムカードを押してから残業が始まるサービス残業とか。家に持ち帰って仕事の続きをしているという実態を見て見ぬふりして放置してるとか。

あと、ホワイトカラー・エグゼンプションが非難されたのはなぜだったのでしょうか。それは、「解釈」の余地があることで事実上サービス残業が合法化されうるという懸念があったからです。

つまり何が言いたいかというと、幾ら法律を定めても規制を作っても、悪意のある or 意識の低い企業側の都合のいい「解釈」でいかようにでも長時間労働をさせられるのだ ということです。長時間労働の発生に対するペナルティが軽視されてるんだと思います。

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(Thanks! the photo on flickr by Shrinivas Sankaran CC BY-NC-ND 2.0)

厳罰化と監視と処罰

解釈の余地を無くせば良い…それも一つでしょう。

ただ長時間労働の法規制が強化されることを経済界が黙っている筈ありませんから、結局のところ玉虫色の名ばかり規制になって「解釈」の余地は残るのではありませんか。悪意ある民間企業は都合のいい「解釈」を続け、結局何も変わらない…と。

36協定の特別条項を廃止するとか、インターバル制度を定めるという話もあるそうです。しかし、残念ながらそれらも無意味じゃないですかね。規制が機能しない「解釈」がはびこる現場には。

実効性の低い法規制という着地点で下手に落ち着いてしまうと、政府には「法規制で頑張ったから、後は民間の皆さん徹底よろしく」と労働問題をこれ以上深掘りしない免罪符を与えてしまいかねません。この働き方改革の気運を、改革ごっこ で終わらせてしまって良いのか。

長時間労働を本気で考えるなら、厳罰化と監視・処罰を徹底する仕組みづくり をちゃんとやるしかないと思います。労働関連法案を整備するだけの範疇にとどまらない大工事。

道交法の実効性が警察官の存在によって担保されているように、全ての事業所に厚労省管轄の監視員「過労Gメン」を配備するとか(労働基準監督署は役立たず。有事で動くのでは遅い)、労働時間の申告はITを駆使して会社を通さず厚労省が国民から直接吸い上げるようにして会社申告分と突合するとか、何度か違反した企業は最終違反の事業年度末をもって強制廃業にさせるとか、そもそも雇用という行為を免許制にしてしまうとか…。

まぁツッコミどころ満載な極論ですけども。

飲酒運転も駐車違反も、減ったのは規制と監視と処罰の徹底があったからだと思います。悪事がはびこるに至ってしまった社会を変えるには、その3つが必要じゃないでしょうかね。情けないことですけども。そこまでしないと変わらないだろうなぁと思える程に、一部の企業においては就労環境意識が腐ってしまってると感じます。生ぬるい状態を放置してていい訳がない。

聞き分けの悪い子供に親は最終兵器を発動させる訳ですよ。ファミコンは1時間まで!と決められてるのに何度言っても守れない子供には、ファミコンを破壊するという厳罰で処するのが筋でしょう(いつの時代の話や)。明日からファミコンは1日45分制限にするからね!と言っても無駄なのです。

メディアもこぞって規制強化を煽るのも良いと思うんですが、飲酒運転が激減していった道交法を参考に、過労から労働者を守る体制作りを根っこから作り直すことを訴えるぐらいのほうが良いと思います。根っこから作り直す、それをしてこそ改革じゃないですかね。このまま規制強化に着地したら本当に 改革ごっこ で終わってしまうんじゃないでしょうか。

 

結局は雇用者側の意識の問題に帰着する

そもそもちゃんと考えてる経営者は法規制なんかなくても長時間労働なんてやらせてません。

立場上、経営者の方とお話することが多いですが、多くの経営者の方が従業員のことを本当に真剣に考えてます。毎日毎晩考えてますよ。働き易くしたい、給料を上げてあげたい、幸せになってほしい。世の中、経営者=悪という固定観念が前面にでがちですが、それを主張する人は恐らく経営者と直接話した経験なんてほとんど無い筈です。

上場企業の社長さんともお話する機会を持たせて頂きますが、時間外労働を「監視」というぐらい徹底して見る姿勢の企業さんもあったりして驚く訳です。そこまで目を光らせますかみたいな。かたや、同じ上場企業なのに、電通のように同じ失敗を2回も繰り返す残念な企業もある。この違いって一体なにか。

もう結局、経営者の意識の問題です。

雇用の重責をきちんと意識していれば、過労状態の常態化なんて起こる筈がないのです。仮に繁忙期でどうしても避けられない時は、皆一緒になって乗り越えて、その後の休息をしっかり取れるように気を配る。仕事のやり方や体制を変えていく。そうやって正しい36協定の使い方をしています。

随分前から働き方改革をしているウチの場合は、僕の執念が原動力でした。規制があったからではないんです。企業が人によって成るという意識を持っていれば、仕事のやり方、仕事の取り方、仕事の接し方も変わってきますもん。長時間労働なんて、させようとも思わないし、しなければならない状態にもなりません。原因を分析し、その解決と生産性を最大化する努力を何より優先しますから。

これは3年程前のあるイベントで、ウチの就労環境を紹介した資料です。

有給は取り易くて消化率も高く、給与は業界水準以上で、毎年全員基本給が数万円上がっていき、毎月の報酬給も上がり、副業推奨までしてた….けど残業時間は1年平均で1人あたり1.5分という時間外労働ほぼゼロ環境でした。

その分、経営者 兼 管理者である僕が身を削ってましたよ(笑) でも、それを自己に納得させるだけの裁量(社長だから当たり前)と報酬というインセンティブが僕にはありました。残業のない環境作りは本当に辛く大変で、必ず皺寄せがあります。その皺寄せに見合う裁量と報酬のインセンティブで社内バランスを取る。そんな構図は絶対必要ですけどね。いずれにせよ。

ちょっとエントリが長くなり過ぎたので、なぜ働き易さに執拗にこだわり続けたかのかとか、事業を売却して開発部門も解散した理由とかの言及はここではやめときます。

色々やってきた一経営者として主張したいのは、長時間労働と無縁な環境を作る力になったのは、長時間労働規制ではなく、人を雇用する重責を意識することだったということです。後者があればそもそも労基法なんていらないですよ。誤解を恐れずに言えば。

 

というわけで長時間労働規制には意味ないと思える理由を長々と書いてみました。解釈や曲解が横行してることと、そもそも会社側の意識の問題だという2点。ゆえに、意識を変えて貰う為に厳罰化と監視・処罰の徹底が必要じゃないかなと。

僕は、働き方改革の本質は、意識の改革だと思います。労使双方の。

本当に過労死で人を死なせたくないなら、経営者側に、そして実は労働者側にも覚悟が必要だと思います。今回の悲劇は「なぜ電通は彼女のパワハラ上司を解雇できなかったのか」という問題も炙り出していて、その問題分析は労働者側の覚悟が求められるところに行き着くと思ってます。今回のエントリは会社側・経営者側に対する視線でしたけど、また機会あれば労働者側・消費者側を向いた持論も書いてみようと思います。

う〜ん、過去最高の長さになってしまったかも…。ざっくり7000字。長文におつきあい頂き感謝です m(__)m 電通の事件で改めてフォーカスが当たっている労働問題についてはまだまだ持論がありまして、また別のエントリで書いてみたいと思います。


2016.10.13 (Thu)

11月1日にお馴染みメビック扇町の企画クリエティブサロンという企画で講演させて頂く事になりました。お呼ばれしたゲストが話したことをベースに参加者皆で議論する感じの企画です。

今まで著名な方も含めて色んなクリエイティブ系の方々がお話されたようで、恐れ多くもその第118回目に御招待頂きました。

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以下、詳細ページに掲載されている紹介文です。

お金も経験もコネも実績も何もない状態からソフトウェア開発会社を立ち上げて約10年。まさにゼロスタートから、受託開発依存で食いつなぎ、オリジナルのサービスを立ち上げ、自社の収益基盤に成長させた後、上場企業に事業売却するという激動の年月を過ごしました。 無い無い尽くしで創業した自分が、なぜここまで生き残ってこれたのか。様々な失敗と経験を振り返ってみて得ることのできた気付きを共有させて頂きたいと思います。

創業から10年間の…と、何度かこんな解説を書いてきたような気がしますね。今年は色んなところでお話させて貰ってます。そう言えば、来年も大学で講演させて頂くことも決まりました。

事業づくりのノウハウを宣うほどに経験豊富ではありませんが、今回も、ゼロからB2B事業を作ってある程度まで育てた経験と、自分の中で大切にしてきた考え方をお話できればなと思ってます。

ぶっちゃけ、僕は運が良かったのです。

iOSアプリ開発事業も、自社のクラウドサービスも、巡り合わせがミラクル過ぎました。大成功とは全然言えないですけどね。でも、ゼロ出発の会社でここまでこれたからこそ言えることがあります。運や縁が引き寄せられる自分や組織なのかどうか…が、事業ではとても重要な要素なのではないかということ。

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(最近よくスライドに出す図。自分が散々失敗して気がついたこと)

ここ暫く「創業から10年…」という文脈で話させて貰ってるのはそんな話で、自分の経験をベースに運や縁というものをある程度論理的にまとめてみたものです。結局は当たり前の事やんと自己ツッコミしちゃう程なんですけども。ただ以前の講演で、思ってたことが文章化されて良かったなんて感想も仰って頂いたりもしたので、当たり前のことが話し手の経験に基いて明文化されることにも価値はあるのだと思います。

お役に立てたら幸い。自分の人生にも意味あるな〜なんて思います。当日はディスカッションタイムもあるそうなので講演というよりも座談会的雰囲気が近いかもですね。という訳で11月1日、夜遅い時間ではありますが宜しければお越し下さいませ。