ここ数日、LINE BOT の話題でネット界隈が大変盛り上がっています(LINE社のプレスリリース)。“line bot”でググると山のようにブログ等々が出てきますね。
ネット界隈にこれだけの熱量が溢れるのは結構久しぶりかも知れません。
2016年はbot元年だと捉えるむきもあったり、その一方でこの盛り上がりを冷ややかに見る眼もあるようですが、とりあえず体験してみなくちゃ何も分からないだろうということで作ってみました。ででん。
書籍の13桁ISBN番号を送ると書籍情報とレビュー掲載URLが送り返されてくる というBOTです。送られてきたメッセージが13桁ISBNでなければ、そのままオウム返しをする機能つき。
iPhoneアプリ市場に参入した2008年に初アプリとしてリリースしたBookReviewの LINE BOT 版です。当時も今もそうですが、僕はよく、本屋で手にとった書籍のレビューをすぐ見たい!となる場合があるので、それを LINE 上でやってみた次第です。LINE 起動して ISBN 打つ、返事の URL をタップする
…と内蔵ブラウザでレビューが見れると。普段使い慣れたLINEで完結するってのは便利っちゃ便利かも知れませんが、Amazonアプリで同じことができますし、ISBNバーコードリーダもついてるのでアプリのほうが便利だなと思いました(笑)
作ってみての感想
このBOTを作るのにサーバの構築から完成まで数時間しかかかってません。開発現場から離れて久しい僕みたいなのでもこんなもんですから、開発を普段からガッツリやってるエンジニアなら作るモノによっては1時間とかで試作できちゃうでしょう。LINE BOT の仕様は非常に分かり易くシンプル且つ自由度が高いので、無限の可能性が広がってますね。
2016年はBOTが来る! ってのも分からなくはないです。…が、手放しに盛り上がれない自分もいます。以下に感じたことを4つほど。
感想1 : LINE BOT が氾濫しそう
自由度が高いってのはプラットフォームにとっては両刃の剣で、今回僕が作ったようなものも含めてbotが量産されまくる事態に陥るのは時間の問題だと思います。作るのが簡単なだけに。また「これからは line BOT ですよ!」と広告代理店の皆さんや企画屋さんが企業を煽るのも必至でしょうから、企業BOTも溢れるでしょうね。
LINE BOT キュレータ的なサイトが現れるのかも知れません。新作 LINE BOT をひたすら教えてくれる LINE BOT も出てくるでしょう。そこに載っけてもらうのに BOT ベンダーはお金を払うのでしょうね。
感想2 : LINE BOT にすべきかどうかは考えたほうが良さそう
GUIとして テキスト入力を前提 という制約があるので(動画/画像/位置情報も送れるけど)、使い勝手を考えると LINE BOT にするべかはきちんと考えた方が良さそうです。UXとして常にベスト…とは言い切れないと思います。
UXという観点からは、ECを変えるという見解にもちょっと疑問を感じてます。
「検索キーワードにマッチする商品は(1)◯◯◯(2)□□□(3)△△△です。どれを購入されますか?1-3の数字で返信して下さい」
「◯◯◯が2つで宜しいですか?合計で1800円になります。問題なければ “はい”、変更する場合は “いいえ” と返信して下さい」
とかやるのですかね。UX的に明らかに使いにくいです。はいといいえの2択なんて、何でボタンちゃうねん、と突っ込みたくなります。自然言語の解析を組み合わせれば多少の入力ミスとかゆらぎは解釈してくれるのでしょうけど、そもそも不適切なUXを他の技術で何とか回避するのはモノの作り方として間違ってますから。
感想3 : LINE BOT は既存の自動応答システムが存在する若年層ターゲットのものに良いかも
企業やサービス・商品のサポートセンター業務の新たな入り口としての LINE BOT は大いにアリだと思います。コミュニケーションに余り電話を使わない若年層をターゲットとしてる場合は特に。「◯の場合は1を、△の場合は2を、□の場合は3を…」なんて電話で喋らせてインタラクションさせるより、BOT のほうがずっと便利ですから。
既存の自動応答システムもプログラムという意味では BOT なので、そのシステムの口をLINE上にも持ってくることで顧客利便性UPになると思います。まさにヤマトさんが年始に発表した「これからはLINEで宅急便」が好例ですね。
感想4 : LINE BOT との会話は1往復、あとはWebに逃がすべきかも
今回作ってみて思ったことですが、ユーザには簡単な入力を1回して貰う程度(あるいはヤマトさんの例のように入力もさせない)で、後はWebに誘導して内蔵ブラウザのWebアプリとして処理するのが良さそうな気はします。Webアプリにユーザを誘導するツールとして割り切るという考え方でも良いかも知れません。
Webアプリはインストール(登録)して貰うのがとにかく難しいのです(最近はアプリすらも同様ですが)。LINE BOT はインストールが楽なWebアプリへの誘導線とすることができるかも知れません。LINEでQRコード読むだけですしね。PUSHを切られてしまう恐れも無いですし(友達単位で切られるとOUTだけど)。
BOT市場はまだ道半ばではないか
既に知られている通り、今回の発表の前から企業の公式BOTは存在していて、お金を払った法人なら LINE BUSINESS CONNECT という仕掛けで実現できていたことです。
だから今回のAPI公開の意味は、誰もが自由に作れるようになったことで、色んな LINE BOT が世にあふれることにより「BOTを使えばLINEが色々便利になる」という体験をユーザにより多くさせることにあると思います。
触ってみると分かりますがトライアルでは、LINEアカウント1つにつき1BOTしか作れず、しかも友達50人しか持てないってのもあるし、LINE BUSINESS CONNECT と比べると余りにも機能が貧弱なんですよね。
(LINE Developers より)
ここは LINE のビジネス戦略上、どこまで盛り込むのか悩ましい所なのでしょうけども、正式リリースされた時には様子がちょっと変わってくるのかも知れません。
チャットというものが当たり前になった今、それが、人とサービスまたは人と企業/組織のコミュニケーションインフラになっていくのは時代の必然でしょうね。メールがそうであったように。だから facebook 側でも動きが噂されてるのだと思います。多分、この動きは止まらないでしょう。FinTechやIoT等のバズワードに比べるとお金も沢山動くでしょうし。
ただ入力インターフェースはもうちょっと工夫が必要じゃないかなと思ったりはします。facebook 側が一枚上手なものを用意してくるんじゃないかと近々予定されている発表を密かに楽しみにしている次第です。ってもう明後日ですね。