経団連の中西会長が、終身雇用は守れないと思ってると明言したことが話題になっていますね。

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(4/22(月)によりよい雇用のあり方について説明するのだそう)

そもそも終身雇用なんて幻影だったので素直にそれを認めたのは潔いです。ただこれ、相当インパクトありそうです。企業はもう従業員を守れないと思う…って経済界の代表が白状したのですから。

これまで漠然と、企業は被雇用者を守ってくれる・そして守るべきであるという期待感や暗黙の了解みたいなものがあったと思うんですが、それをスパーンと「無理っすわ!」と言っちゃった。

まぁ、もちろん無理だよねーと皆分かってましたが今回のは会長の公式発言です。意味が全く違う。

影響ははかり知れず、大企業や中堅企業に「もう守れない」を前提とした組織や制度に変化していく力学が生まれるのは避けられません。組合側とはバトルになるんでしょうが、経団連会長が「もう守らなくてもいいよ」と免罪符を出した意味は大きいです。後ろ盾を得たと思ってる経営者もいるんじゃないでしょうか。

 

企業も、国も、守ってくれない

一方、ここんとこ国も「もう守れない」と言い続けてます。さすがに明言こそしてませんが、

  • iDeCoや積立NISAなど資産運用を促す制度の喧伝
  • 年金受給開始の繰り下げ等の年金制度再考
  • リカレント教育だとか人生再設計世代だとかの雇用支援策

等々は明らかに国からの「もう守れない」というメッセージを伝えるものです。

そんな不安も漂いつつある中での今回の終身雇用終焉宣言ですからね。さすがに多くの人が、国も企業ももう守ってくれないんだと認識して、自分の将来は自分で守ろうする意識が今よりもっと広がるのではないでしょうか。

ただ、もう責任持たなくて良いんだ〜と免罪符を得たことでのんきに構えている企業は、早晩採用の苦境に立たされることになります、きっと。

なぜなら終身雇用の問題って結局は従業員に支払うお金の問題に帰着する訳で、終身雇用が終わった今、その象徴たる「生活給と退職金」に代わる何かを従業員に提示しなくちゃいけないからです。

では何があるでしょうか。

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終身雇用の代わりに企業が提示できるもの

一つには「将来キャッシュフローの形成支援」があります。

平たく言えば、従業員にこの会社に勤めたら自分でお金を稼げる・残せるような未来が作れると思って貰える契約関係や待遇のことですね。従業員の未来のお金づくりを会社が支援するのです。

従業員が自分の事業を作る/育てる支援をしてくれる(副業推奨や残業なしとかはその一環)とか、会社で作った事業を譲渡してくれるとか、フルコミットでなくなった後も事業からの分配金を得られる仕組みがあるとか、プライベートな資産運用や節税を支援/補助してくれるとか…

珍しいですが実際やってる企業はあります。

従業員の副業支援だとサイボウズさんとか有名ですし、資産運用支援では企業型DCを導入してる企業はそうでしょう。共通してるのは、従業員の将来に目を向けているということ。多分、今後はそんな姿勢を発信して制度や取り組みにも表れている企業が選ばれるようになっていくでしょう。

逆に従業員の将来を真剣に考えてない企業は選ばれなくなるでしょう。だって、従業員にしてみれば将来の自分や家族を守る準備ができないってことを意味しますから。

 

高度経済成長期が生んだ終身雇用という幻影が、平成の最後にかき消されました。その意味で経団連会長の発言は僕はとても良かったと思います。むしろ遅かったぐらい。

自分らは逃げ切り世代のくせに…と非難する向きもありますが、逃げ切れてない・逃げ切れそうにない団塊世代が非常に多いことを最近飛び交ってる「老後破産」という言葉が示してますよね。

誰が悪いではなく、労使が共に意識を変える必要があると思います。これからは、被雇用者は自らを守る意識を持ち、企業はそれを支える意識を持つ。そんな関係が理想的な労使関係になっていくのだと思います。

令和という時代が、労使抗争ではなく労使共創の時代になると良いですね。