不思議なことに、仕事や事業作りの本質を忘れてしまうことがあります。
仕事も事業も原則は御客様の課題を解決して、-1を0に、0を1に、1を10にする活動です。時間軸で見れば御客様の未来は良くなってなきゃいけない筈なんですけど、どうしても技術とか流行り言葉に便乗したくなるのがヒトというもの。
やっかいなのは、当事者であればあるほどその罠に陥りやすいってことです。例えば最近だと
- AIやろう
- IoTをやろう
- FinTechをやろう
とかは目にすることが多いですね。それって手段ではないのか。
RSSという技術を喧伝していた時代
技術やアイディアを使うために、わざわざ課題や目標を無理やり捻り出す場合もあります。それを標榜する必然性はないのに。手段の目的化ってやつですね。
僕は創業時期にその罠に陥ってました。
立ち上げ当初の2,3年は特に酷いもんです。ご存知の方もおられるかもですが、RSSという技術で世界を変えるんだって真剣に言ってました。今思うと恥ずかしい… (RSSについてはこちら)
色んなものを作りましたね。『音マガ.com』『feed magazine』『Feed Suite』『IR Cast』『feed engine』…
全てうまく行きませんでした。そりゃそうです。御客様は技術が欲しいんじゃない、アイディア凄いですね!と感心したい訳じゃない。ただただ課題を解決したいだけなのですから。
僕は、RSSという技術を使うことや当時の流行に便乗することにフォーカスし過ぎてました。御客様の課題を解決する為にRSSという技術を使ってた訳ではないんですよね。RSSを使う為に何ができるか…ばかり考えてました。
御客様の課題が第一義にこない仕事や事業がうまくいく筈ないんです。
技術を前面に出さなければウケた
2009年、GNReader というニュースリーダアプリを出しました。社会・経済・国際などのニュースをカテゴリ毎に見ることができるiPhoneアプリです。
開発するにあたって継続的な情報配信に適した技術(フォーマット)としてRSSを採用してましたが、RSSって言葉はアプリの解説にも紹介時にも一切使ったことがありませんでした。そもそも使う必要もなかったですし。
『ニュースが見れます』
ただそれだけ。ニュースを毎日見たいというiPhoneユーザの課題に当時はベストマッチだったのです。結果、アプリはあれよあれよとランキングを駆け上がり、アッという間に無料総合ランキング1位を獲得しました。
この経験でようやく気が付いたのですよね。課題を解決するために技術を使うとはこういうことかと。技術や手段は表に出す必要はないよなと。
新技術を表す言葉やバズワードを使うのは楽です。でも「楽」なだけに、何か新しいことをしようとする時や何かを変えようとする時に陥り易い罠だと思います。でもそれは失敗の入口かも知れません。
掲げた言葉や喧伝するキーワード、それらは誰の課題を解決し、どのようなより良い未来を提供する為なのか?
何かをやろうとする時、常に自問自答するようにしています。それでも罠にハマりそうになるものなので、何度も何度も問うように心がけている昨今です。