(超々長文です)
本日、日経新聞に「富士ソフト、シンクネルを買収」という記事が掲載されました。
この度、子会社のSYNCNEL株式会社が提供していたクラウド型ファイル共有サービス「SYNCNEL(シンクネル)」を、富士ソフト株式会社(東証一部:9749)さんに事業売却することとなりました。
新聞記事の内容が若干事実と異なってまして、子会社のSYNCNEL株式会社を売却したのではなく、事業のみの売却となります。富士ソフトさんのプレスリリースが詳しいですので宜しければこちらをご覧下さい。子会社側でも一応プレスリリースを出しています。ネット媒体の Impress Watch などでも取り上げて頂いているようです。
SYNCNELをご利用頂いている御客様や、販売パートナー様におかれましては、事前に御説明・御案内をさせて頂いております通り、契約や条件が変わるとかサービスの名前やデザインが変わるとか、不利益になるような大きな変化はありませんので御安心下さい。サービスもそのまま継続してご利用頂けますし、後述しますが僕は引き続き現場に出続けてSYNCNELの窓口担当であり続けます。
事業売却の所感
振り返ってみますと、SYNCNELは2011年2月に事業開始したので丸っと5年が経ちました。事業を起こした当初は想像もしなかった事業売却という形で一つの節目を迎えることになります。立ち上げ期から紆余曲折ありましたが、本当に沢山のことを学ばせて貰いました。新しいビジネスの作り方、B2Bビジネスの展開手法、クラウドサービスの作り方、販売代理店制度のあるべき姿、日本のクラウド型B2Bが抱える大きな課題、事業を子会社化する意味…などなど。
学びの源は、次々とぶち当たっては挫けそうになる数々の困難であった訳ですが、B2Bビジネスを作って拡大する面白さを沢山味わえたという意味では、総じて貴重な経験で、「楽しかった」と胸を張って言えます。
上場企業やバックに大資本を持った中堅企業がひしめくMCM業界で、SYNCNELは市場シェア3位につけてたこともありました。そんな戦場で、約200社の御客様にご利用頂くまでに拡大できたのは、ひとえに、販売パートナーの皆様、御利用頂いているユーザ様など数えきれない沢山の方々に支えて頂いてきたからこそです。SYNCNELに関係して下さった皆様に改めて深く御礼申し上げます。本当に有難うございました。
また、細かく且つ無茶な条件を色々と付けさせて頂いたにも関わらず、事業譲渡の提案を快諾頂いた富士ソフトさんにも改めて御礼申し上げます。担当頂いている皆さんとは引き継ぎにあたり頻繁にコミュニケーションを取らせて頂き、一つのチームのように感じています。
併せて、富士ソフトさんとのご縁を頂くきっかけとなった、B2Bチャットサービス direct を提供されてさいる LisB さんにも御礼申し上げます。ビジネスはやはり人で繋がっていくのだな…と強く強く感じました。
発表の通り、SYNCNELという事業は2月1日以降、富士ソフトさんの事業として継続されることになります。富士ソフトさんは既に「moreNOTE」という同じカテゴリの商品をお持ちになっているので、合算するとMCM業界のNo.1企業になられます。
自分が作った事業をお譲りすることで、競合関係にある別会社様が業界No.1になるってのは何だか感慨深いものがありますね。ウチはお譲りする側ですけども、業界再編の当事者になったということですから。
実は別の競合会社である上場会社さんなど他の企業さんからも事業譲渡についてオファーを貰っていましたが、タイミングですとか、御客様や販売代理店様のメリットを僕なりに考えて富士ソフトさん一択で進めました。(わざわざ大阪まで来社いただいたH社長、すいません…)
今後は、ペーパレス会議に強い「moreNOTE」と、営業支援を強みとする「SYNCNEL」のシナジーも見込まれています。僕はというと、事業譲渡してハイさよならって訳にはさすがにいきませんし、そんな無責任なことはしたくないですので、フィードテイラーの大石としてSYNCNELに関わり続けます。moreNOTEにも関わらせて頂いて、恐らく、別エントリでご紹介したヴァル研究所様のお名刺を持たせて頂くような形で動くことになると思います。
冒頭に記事について言及した通りですが、今回の譲渡は会社の売却ではないので、厳密にはM&Aでもバイアウト(売却側からするとセルアウトですね)でもありません。ちょっと不思議な感じですが、SYNCNEL株式会社は残ります。ただ、商標もお譲りする関係でSYNCNEL社を名乗り続けることはできないので、追って社名変更する予定。いずれ親会社のフィードテイラーが吸収合併することも考えられます。いずれにしても、フィードテイラーは存続しますし、僕が代表であることは変わりません。
…が、フィードテイラーに在籍のエンジニアはどうなるか、その話も少し書いておかなくてはならないと思います。
開発部門の解散
結論を先に書くと、フィードテイラーの開発部門は解散します。というか、しました。
事業譲渡って人がゴッソリ一緒に移籍することが多いと思いますが今回はそうではありません。弊社サイドから見ると、「事業」は売る、「会社」は残る、「ヒト」は別れる、そんな感じです。業界の流れや内部事情、外的要因等々を考慮して経営判断しました。
随分前に天気予報アプリのそら案内事業を、@itok_twit が独立創業したそらかぜ社に無償譲渡したことを書きましたが、今回の事業売却の文脈にある出来事の一つで、フィードテイラーの開発者は同時期に全員退職しています。
譲渡するから解散するのか、解散するから譲渡するのか。語りだすと10万文字は軽く超えてしまいそうなので割愛させて頂きますが、「人に優しい働きやすい会社」を標榜し実践してきた開発会社が、「人」にまつわる事で大胆な決断を行わざるを得なかったのは皮肉な話かも知れません。
以下は弊社で実践してきたことの全て。2年ほど前の資料ですね。
真剣に開発者のパラダイスを作りたいと身を粉にして頑張ってきたつもりだったのですが、実現できませんでした。というか、それが経営として妥当でないという判断を下すに至りました。僕が経営者として未熟な面があったということです。結果的には事業売却と解散という大工事にはなってしまったものの、御客様や販売パートナー様への影響は最小限にできたので良かったと思っています。
かつての仲間とは余り連絡を取っていませんが、各所で活躍していると伝え聞いています。
@itok_twit は(株)そらかぜを設立。そら案内と関連アプリをフィードテイラーから全て無償譲渡済みです(そら用心除く)。元々そら案内は個人のアプリだったものを持ち込んで貰ったものだったので、それを返した感じですかね。何か拘束条件があるとか上納金(?)を求めるような関係性も全くありません。縛りがあると本人も事業が好きに出来ませんし。商標権も含めて一切合切譲渡しました。そら案内シリーズ以外で本人が弊社で担当してくれていたアプリ資産も全て同様に無償譲渡してます。主だった取引先も繋がせて貰いました。新版そら案内もリリースされてとても順調なようです。
@kumatch は新たな挑戦をしているそうです。とても稀有なエンジニアだと思いますので次でも頑張って欲しいですね。
@sumihiro は技術顧問として他の会社に参画しながら個人で開発も続けてるとか。弊社で担当して貰っていたアプリは全て無償譲渡しました。Nyatterとかそら用心とか。他にも昨年夏にフィードテイラーとしてリリース予定だった新事業も丸っと無償譲渡していますので、いずれ本人から発表があるかもです。ハード寄りのことを会社でして貰う機会を提供できなかったのは残念だったかもですね。将来IoT絡みで何か面白いこと仕掛けてくれるんじゃないかなぁと期待しています。
@nakiwo と @ankou1060 は大阪でiOS開発会社と言えばこの会社というフェンリルさんに行きました。あ、そうそう。何とフェンリルさんの会社説明会を弊社内で開催して貰ったんですよ、去年の9月だったでしょうか。
これはその時の写真。同業種でガチで競合している企業の会議室で「ウチに転職しません?」っていう説明会が開催されるって普通なかなかありません。当時、フェンリルの役員さんと話をさせて貰って実現しました。役員さん自らが「フィードテイラーさんで仕事されていた方ならどなたでも弊社に来て頂きたい。いつまでも待ちますよ。待遇はそのままでお約束します。」と仰っていたのが印象的でした。
ちょっと横道に逸れましたね。結局2人がフェンリルさんに行きました。尚、@nakiwo には @itok_twit や @sumihiro と同様に担当アプリの全てを無償譲渡してます。(譲渡処理は近々完了)
@fuku518 は少し早めで2015年の3月には退職してました。他の職場で活躍しているようです。
@t0shiya はフェンリルさんからも熱いオファーがあったようですが、唯一僕の次の挑戦に付き合ってくれることになりました。前述のSYNCNELに絡む業務も継続して貰いながら(富士ソフトさんのSYNCNEL事業/moreNOTE事業を僕と二人で御支援させて頂く事になります)、あと新しい事業作りにも一緒に取り組んで貰うことになってます。
とこんな感じです。色んな意味で尖ったエンジニアのみんなと一緒に仕事できて良かったです。お疲れ様でした。
既存の御客様のアプリ開発案件については、既に先行して一部御案内差し上げてましたが御迷惑が大きくかからないように調整済みです。御客様に於かれましては御安心頂きたく、万が一ご不明な点はお気軽にお問い合わせ を頂けましたら幸いです。
フィードテイラーのこれから
2015年12月で第10期が終わりました。おかげさまで、増収/増益かつ過去最高の売上と利益を、親子会社両社ともに記録することになりそうです。譲渡や解散とは無関係に過去最高になるのは2015年夏頃には見えていました。利益については想定外ですけども。
フィードテイラーでは歴史上一番現金に余裕がある時期でもあったので、なんでこの時期にその判断なん?もったいないわ!…それが最終判断を報告させて貰った方のリアクションでした。
でも、色んなパラメタを見て中長期的に吟味した際に、御客様や販売パートナー、譲渡先企業や業界全体、従業員やその家族、自分の家族…あらゆる利害関係者の幸せの総合計を最大化するには今しかないと判断して行動した次第です。
悩んで眠れないってのはこういう時なのかと感じました。
自分の判断は正しかったのか。その問いに自信を持ってYES!と今言えますが、僕以外の全ての人にそう言って貰えるようにするのが今後の僕の責任かなと思ってます。ですので、僕はこれからもSYNCNELに関わり続けます。そうさせて貰えるようにお願いをしました。SYNCNELやmoreNOTEを通して、MCM業界の活性化に引き続き貢献できればと思っています。
一方、内部に目を向けると、開発部門は解散して2人(パートの奥さん入れて3人)になったし、アプリや事業も全部譲渡/売却した(する)ので、文字通りスッカラカンです。何にも残ってません。もはやiPhoneアプリ開発のフィードテイラーも、理想の就労環境追求のフィードテイラーも過去のモノです。iOS開発専業をうたうとか、同じことを繰り返すつもりはありません。
幸いにして多様な経験を評価頂けているのか、アドバイザー的な立ち位置を期待して頂くことが増えてきていますので、それを新たなビジネスの一つにしようとは思っています。IT全般をおさえていて、モバイル系やB2Bビジネスの経験もあり、実際に開発もできる経営者・マネージャという掛け算のところにいるのが珍しいのかも知れません。
IoTしかり、FinTechしかり、トレンドを自社内でやるのもとても面白いのですが、他社様のリソースに自分も加わって一緒にやる方が面白く合理的である場合もあります。開発/営業/企画/マネジメントの経験を活かして他社様の事業をブーストする一助となる、そんな御支援スペシャリストの集団になれたら良いなと考えています。
また、これまで僕が経験してきたことや、ウチの知見をシェアすることにも注力していきます。ブログとか執筆とか講演とか勉強会とか、OUTPUTをもっと増やしていきたいなと。(書籍は昨年7月に宣言したのにまだ出せてませんけども…) 先日エントリした静的Webサイト勉強会 はOUTPUTの一例です。他にも、創業から開発体制づくりに事業売却まで経験してきたことをOUTPUTして、これからの起業家の皆さんが少しでも僕と同じ失敗にはまらないように出来たら良いなと思ったりもしています。そんなOUTPUTの過程で生まれる事業もあったりするかも知れません。
インサイダーのこともあり話せないモヤモヤ感の半年間でした。新聞記事やプレスを軽く引用してサラッと御報告しようと思っていましたが、やはり事業や会社に思い入れも多くあったので、かつてない長文になってしまいました。すみません。読んで頂き有難うございます。
そんなこんなで、またスタート地点です。初心に返り謙虚に誠意を持ちながら邁進したいと思います。今後ともフィードテイラーを宜しくお願い致します。