最近、僕の追求・模索してるテーマは「人生」じゃないかと思うようになってきました。

自分の会社を「新しい企業像や労使関係の社会的実験場」と公言&実践していたり、ワークライフバランスや人の幸福感について思いを巡らしてみたり、「資本主義だからこそお金が全てなのだ」と言ってみたり、家族とは何か・自己を律するとは何か考えてみたり、「生が幸せ死は不幸せ」という従来の死生観に疑問を持ってみたりと、これらをまとめたら人生について考察してるって事と同義だよねと。

経営経験を積むと滅茶苦茶考え過ぎる時期がくるよ…とある経営者に言われた事がありますが、まさに今がその時かも知れません。別にそれに抗う必要はないと思ってて、最近、考えをもっと整理したり更に深めたりする為の知識を得るべく本を読みあさってます。買うペースは増えるにまかせて本と対峙する時間を増やしてるのですが、最近「これは何度も読み返したいな!」と思った本を御紹介します。

何か前置きが長いですが、人生で大きなウェイトを占める「仕事」の未来に目を向けた書籍。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン 池村 千秋
by G-Tools

端的に言うと 働き方の未来予想 をまとめた本。2025年に僕らはどんな働き方をしているんだろう?という問いに、著者独自の調査や過去の公開資料等を元に一つの解を提示するものです。あくまで予想というていで書かれてますが、読んでみた感想としては、多分こうなるよね…とほぼ全てにおいて同意できる内容でした。多分、書いてる事は 解で、この本は未来予想じゃなくて未来予定と言っても良いかも知れない。だからすべての人に読んで欲しいと思いました。

導入部で非常に印象的だった一文。

これまで漫然といただいていた常識の多くを問い直す必要があるだろう。変化に目を閉ざすのは無謀で危険だし、過去にうまくいったやり方が未来に通用すると決めつけるのも楽天的すぎる。それは、自分と大切な人たちの未来を危険にさらす態度と言わざるをえない。

半ばの章では、もっと端的に

あなたとあなたの友達とあなたの子どもたちにとって、漫然と未来を迎えるという選択肢はもはやありえない

と述べています。「漫然と」という言葉は本書で警鐘的に多用されるキーワードで、読中や読後に募る危機感は、以前に読んだ「大震災の後で人生について語るということ」の読後感とほぼ被ります(その時の書評はこちら)。日本だけでなく世界中の先進国の人々が同じ感覚でいるのでしょうね。自分の親世代と同様に未来が普通にやってくると思い込んでる。

しかし本書は、未来が過去の延長線上にはもはや無いと主張します。その根拠は何で、だからどう変わるべきか。その「変わるべき」をこの本では「シフト」と読んでいて、具体的に3つの指針を提示しています。何となくこのままじゃヤバイよな…感がある人にとっては、そのモヤモヤ感を明快に言語化してくれているので読後に爽快感と危機感が同時に募ること間違いありません。

本書が言う「シフト」とは以下の3つ

  1. 知的資本の増強
  2. 人的ネットワークの増強
  3. ライフワークバランスの覚悟

この3つを意識した働き方に自らを変えていかないとsurviveできないのだそうで。

確かにそうでしょうね、テクノロジーの進化や長寿化、グローバル化と社会変化の勢いが加速度的に増す中で変化に対応出来ない人(つまり漫然と将来を迎える人)が取り残されるのは仕方のない事です。ダーウィンが言ったように、変化の時代に生き残れるのは強者でも賢者でもなく変化できる者だから。

(1)自分の専門分野を作り徹底的に伸ばす事、分野を固定せず広く深く追求すること。(2)人的繋がりを資本と見なし良い協力関係の構築の土台とすること。(3)自分にとって本当に大切なものは何かを考察し場合によっては犠牲を払う覚悟を厭わないこと。

いずれも「漫然さ」とは真逆で「能動的な選択」が必要になると説いています。しかも、いずれかだけで十分なのではなく全てが必要になると。大手に勤めているから大丈夫…は論外。What’s your speciality ? に明快な答えが必要で肩書きはもはや将来を保証しません。加えて Speciality があるだけでもダメ。どんなに専門と高い技術力があったとしてもその人と仕事したいと思える魅力を備えてないと関係は継続しない。そんな事を言っています。

何となくこの平穏な日々は続くのだろうと考えている人には気が重い本ですが、何故今行動を起こさねばならないかの根拠、漫然と迎える未来に何が待ち受けるかの論述は、surviveする為の決して間違っていない重要な行動指針となりますので、労働とは無縁だという人以外の全ての人にお勧めしたい書籍です。

すべての労働者・経営者に「働き方」を考えなおすキッカケを与えてくれる良書。★5つ。