2006年7月に創業してからもうすぐ1年が経とうとしています。創業時に頂いた「あきない・え〜ど」賞に始まり、色んなメディアに露出させて頂いたり府からの事業認定を頂いたりプレゼンの機会を頂戴したりという事が積もり積もった結果なのか、これまで10数社のベンチャーキャピタルさんとお会いしてきました。

JAFCOさん、JAICさん、オリックスキャピタルさん、池銀キャピタルさん、エンゼルキャピタルさん、ネットエイジキャピタルパートナーさん、OGIさん、エヌ・アイ・エフさん、MUハンズオンさん、みなとキャピタルさん、りそなキャピタルさん、中小企業投資育成さん…上げればキリが無いですね、ホントに。まだまだいらっしゃいます。

ちょっとオーラが違ってホントに気に掛けてくれている感のある投資育成さん、恐らくその設立の経緯と積み上げてこられた歴史が他のキャピタルさんとの性質や雰囲気を異ならせているのだと思うのですが(Yさん、いつも有り難う御座います m(__)m )、その投資育成さんを除いては、ベンチャーキャピタルという存在は何だかなぁという感じなんですね、正直なところ。こんな事を経営者が自ら書いて良いのかという話もありますが、何社ものVCさんとお会いして持つ事となった経営者の考えなので敢えて書きます。(以降の話は投資育成さん以外のキャピタルさんについて僕が感じてる事です)

「非常に面白い事をされていますね。将来性ありますよね。」

それが大概のきっかけです。当初はこちらもこの世界を理解していなかった事もありますが、お会いする訳です。やっぱり自分の事業に興味を持って貰えるのって嬉しい事じゃないですか。新しい技術に対する思い入れ(ウチの場合はRSSやそれを取り巻くネット事情ですが)が強ければ強いほど嬉しい訳です。

で、話をする。どういうものか御覧頂く。ビジネスモデルの話をして、どれぐらいの引き合いがあるのかをお話しする。どんな将来像を描いているかお話をする。自分のかけてる情熱をひたすらぶつけます。自分が持ってるベンチャー精神に共感して貰える事を期待して。

でもね、そんな事はどうでも良いんですね。

ビジネスについての話はコネクションを作る為の口実に過ぎません。数字です、数字。堅調であるかどうかを示す実績。何年後にどれぐらいの売上げがあがって、何億円のリターンがあるか。それだけです。面白さや斬新さよりどれだけ儲かるか。数字がすべて。中身はなんだって良いんです。情熱?ベンチャースピリッツ?世界初?新製品?…何それ。お金は上がってくるの?収益性は?売上げは?利益は?…円・ドル・ユーロ・ポンド…金、マネーを表す数字こそが重要でしょ。

…とまぁそう考えておられるんだろうなぁと推察するに十分すぎる根拠をお話の中で見せて下さる訳なんですね。「応援したい、支援したい」という事でいらっしゃっても、蓋を開けたてみたらこちらから最新技術の懇切丁寧な説明をするだけさせて貰って評価は数字のみ。

正直、精神的に辛くなりますよ。ベンチャーという形態で挑戦している以上、数字が上がりにくいハンデを抱えていて、このままじゃいけないと思っていて、お金さえあればホントに動き出すのに…という状況下でもどかしい思いをしながら、お金が無いと始まらないという事実は経営者が一番良く分かっていますから。でも、

「まだ、一期を終えておられませんよね」とか「実際にそのモデルで実績は無いですよね」とか「今期の予定は幾らで今の売上げは?」とか…

そういう言葉が平気で出てくる訳です。だったら、「応援」とか「支援」とかいう言葉を使うのはどうかと思ったりします。それだったら、「御社のIPOに便乗してキャピタルゲインを得たいので、直近の実績と5年後までの事業計画書を見せて下さい」と言って貰えた方がよっぽど分かりやすい訳です。

ここは日本です。米国とは違います。
ビジネスモデルや人柄や情熱や面白さや斬新さに投資するって事は有り得ない。数字だけに投資する。

これが十数社のキャピタルさんや、エンジェルと言われる人にお会いして得た僕なりの結論です。今のビジネス世界の社長さんから言わせれば「今更気が付いたのか…」と言われてしまいそうなのですが、ちょっと学習に時間が掛かり過ぎましたね。

ですから最近は、本業も少々忙しいという事もあって色々とご連絡は頂くのですがベンチャーキャピタルさんとは余りお会いしない事にしています。15分程度お会いさせて頂いたとしても、ビジネスモデルとか自分の情熱をお話する事はほとんどありません。「投資対象たる数値的根拠をまだ持っていない会社ですよ」とお伝えするのみです。

というのが僕の最近の考え方なので、今日のCNETのともに歩もうとする決意促すのは、「志」の高さと柔軟性というベンチャーキャピタルの方との対談記事は何だか有り得ないんですけど。

シード段階からきちんと投資をして、日本ならミクシィとか、アメリカならGoogleやYouTubeのような、爆発的に成功する事例を出して…

というサイバーエージェント・インベストメントの西条氏の言葉は、申し訳ないですがにわかに信じがたいモノがあります。シード段階からの投資っていう選択が果たして日本であり得るのかと。

Googleがどう資金繰りをしたのかという話は色んな所で書かれているので敢えて書きませんが、AdWordsとAdSenseの相乗効果で有り得ないぐらいの広告収入を得る仕組みを作れたのはホント最近の事ですよ。彼らがシード段階であった時に彼らの検索エンジンが当時のウェブの世界の問題を解決している事を評価して、10万ドルの小切手を切ったベクトルシェイムになれるのか。

ベクトルシェイムはさっそく小切手を切ろうと提案した。そうすれば、ブリンとペイジはコンピュータの組み立てに取りかかれるし、自分も次に会うまでに準備が出来るから、と言った。交渉無し。株の話もなければ、査定もなかった。ベクトルシェイムはブリンとペイジがまだ会社を正式に立ち上げていないことすら知らなかった。しかし、そんな細かいことはベクトルシェイムにはどうでもよかった。
Google誕生 —ガレージで生まれたサーチ・モンスター Google誕生 —ガレージで生まれたサーチ・モンスター
デビッド ヴァイス マーク マルシード 田村 理香
by G-Tools

ベクトルシェイムになれますか?…つまりはそういう事だと思います。

僕はなれないんじゃないかなと。だから日本ではGoogleはうまれないしYouTubeも決して表れない。「キャピタルもビジネスなのでしょうがない、ファンドを組めば出資元にもリターンを提供する必要があるから」…という事情も分かるには分かります。でも、「ベンチャー」の言葉に相応しい気概は少なくとも必要なんじゃないかと思うんですね。

先日、色々と相談に載っていただいているD証券の方とお話をしてました。「個人的な見解だが、最近のベンチャーキャピタルはベンチャー(冒険)してないですよ。そんな数値的に手堅い所にしか結局投資しないのねって思う事が多いです」というお言葉が物凄く印象的でした。

単なる僕の思いこみではなく実際にそういう事なんだと思います。現実は非常に厳しいですし、お金以外の物は用意できているという数多のベンチャーの一つとしても寂しい思いがするのはするのですが、言ってるだけでは何も始まりませんからウチに出来るのはとにかく数字を残す事。自分の思い描くビジネスで実績を残す事。これに尽きる訳です。

自分を支えてくれる仲間と自分の力を信じて頑張るしかありません。血吐くまで働きますよ!!