iOSデバイスはもはやビジネスデバイスとして認識されていますが、その導入方法/プロセスについては実はまだまだ知られていない模様でして色んな導入検討企業様やSIer企業様から質問される事が多いです。…のでボチボチ書いてみたいと思います。
■ iOS Developer Enterprise Program (iDEP)
まず基本中の基本から。iOSアプリのインストールというとAppStoreがすぐ連想されてしまいますが、業務用アプリの場合は不特定多数に公開されてしまうと困りますね。なので従来は
- 開発途中のモノをUSBケーブルを介して限定的(100台まで)にインストール出来るAdHoc版という仕組みを使って配布
- AppStoreに公開はするが認証の仕組みを入れる事で不特定多数からの使用を回避
といった方法を採る事が多かったのです。
…が、前者だと、デバイス追加の度にアプリを作り直し(ビルドし直し)しなくちゃいけない煩わしさや100台までという制限が問題になったり、後者だと更新がすぐに出来なくて運用開始後が大変という問題を抱えていました。アプリの配布(distribution)のやり易さは、企業インフラを成すシステムの成否を決めるので、その意味で上記の従来型なスタイルは会社規模が大きければ大きいほど全然ダメです。
この問題を解決するのが、iOS Developer Enterprise Program というライセンスの形態で、Appleと締結するライセンスの一種です。Enterprise以外にはお馴染みStandardとか、大学向きのUniversityとかがありますね。
(企業向けiOSアプリについて解説したセミナーのスライドから。)
iOS Developer Enterprise Program は業界では通称 iDEP (アイデップ)と呼ばれており、
AppStoreを介さずにデバイス無制限に配布出来るアプリが作れる
という超強力な特徴を特徴を持っています。その名の通り企業向けの為のライセンスでして、
運用開始後にデバイスが増えたから…といって何か特別な事をする必要は全くない
(冒頭のAdHoc版による運用だとデバイス追加の度にリビルドが必要)
AppStoreを介さないので任意のタイミングで最新版を配布出来る
というメリットを享受できます。そんな良い事づくしなアプリケーションをInHouse版アプリとかInHouse版バイナリとかって呼んだりしますが、何故、それを使わずに冒頭のようなAdHoc版を使ったり認証付きアプリとしてAppStoreに公開するなどの周りくどい事をやっていたかというと、理由はただひとつ。iDEPは500人の従業員を抱える企業しか取得できないライセンスだったからです。それが2010年夏に解禁になりました。極端な話、1人でやっている会社でも取れるようになったのです。これを使わない手はありません。
iDEPによるInHouse版バイナリは使い出すとホント手放せなくて、(また改めて御紹介しますが)OTAという技術と組み合わせて使うと社内にオレオレAppStoreが作れてしまうという、これまた超強力な特徴を持ってます。例えば、
- iOSデバイスを追加購入
- 当該デバイスでSafari起動
- あるURLを入力
- はい!社内専用アプリのインストール完了!
みたいな事ができてしまします。AppleIDの登録/設定も不要だし、UDIDを調べる必要もない。リビルド不要のデバイス制限皆無って訳ですから、まさにフリーダム。
自由にハンドリングしたい企業内の情シス担当者にとっては理想形、iDEPはそんな企業の為のライセンスです。が、ただ自由には義務や責任が伴うもので、iDEP締結に至るにも、iDEPの契約を維持するにも、必要な事や守らなくちゃいけない事が沢山あります。
- もしiOS Developer Standard Program を既に契約していれば、それとは別のAppleIDが必要
- 申込時は企業の実在を証明するDUNSナンバーと登記簿謄本が必要
- InHouse版アプリが不用意に関係者以外にインストールされないように厳重に管理する事
- InHouse版アプリを使用出来るのは、契約主体法人の従業員やスタッフなど「中の人」に限る事
取得手続きはそんなに難しくありません。所要時間だけが気がかりで今なら2,3週間~2ヶ月程度でしょうか。弊社が自社分を契約した時は5日程度でいけたのですけどね。あの頃は良かった…(遠い目) まま、いずれにしても、業務用の専用iOSアプリを考える企業様は早め早めにiDEP申請を進めた方が良いかも知れません。
ちなみに、年額ランニングコストがかかります。上に表を載せた通りですが、円高の影響を受けてか元々年間¥33,800だったのが何と¥24,800という驚きの価格になっていますので、今が買い時!?かも知れません。まぁ当面高くなる事は無いと思いますけど。
■ DUNSナンバー
iDEPの申込に必ず必要になります。DUNSナンバーは東京商工リサーチさんが(国内では)管轄している、企業の実在を証明するコードの事です。これも必須となりますのでご注意を。
このページの「DUNSナンバー検索」から自社名を入力してみましょう。240万の企業が登録されているらしいので、ほとんどの企業は検索ヒットする筈です。じゃぁお金はいらないのか?というとそこは巧く出来ていて、DUNSナンバーだけ確認する事が出来ないようになっています。んで、それを教えてぇ〜とお金を払うという仕組み。
単に番号だけで良いのか、証明書的なモノをセットにして欲しいのか、スピード発行して欲しいのか…によって料金は違いますが全然高くありません。手続きも登記簿謄本のFAX送付が必要になったりするものの超簡単。無事に発行されると、こんなものが送られてきます。
ご丁寧に日英2通です。しかも当該のデータが入ったCDもセットにしてくれてるという。至れり尽くせりな感じです。途中問い合わせでTELしたりしましたが担当の方も親切で余り心配する事はありません。
ちなみに上場企業さんだったりすると既に取得されている可能性がありますので、まずは総務部とか、該当しそうな部署に確認される事をお勧めします。
という事で、iDEPとDUNSナンバーについて御紹介をしました。エンタープライズ系は書けそうな事が沢山あって、InHouseバイナリでやってはいけない事、規約上実現不可能なビジネスモデル、InHouseバイナリとiPhone構成ユーティリティを組み合わせたアプリ絡みの安心運用スタイル、InHouseバイナリとOTAで実現するオレオレAppStore、MDM、InHouseバイナリで業務アプリを作るにあたっての注意点…などなど。
こんなコンテンツ需要ありますかね。どうだろ。
まぁノウハウはシェアしようが僕の基本スタンスなので需要なくても順次勝手に書いていきます(笑) もちろん、AppleとのNDAに抵触しない程度にですが。
あ、ちなみにエンタープライズiOSアプリの導入コンサル的な事もスポットでやっています(継続料金が発生しないコンサルティング)。実績もありますので御安心を。
iDEPにまつわるノウハウって余り出回っていないのですが、きちんと体系立てた説明があると社内展開も戦略的に進めますので時間の節約にはなると思います。導入検討企業様やSIerさんで御入用の方がいらっしゃいましたらお声がけ下さい。宜しければこちらからどうぞ。